9月28日、お笑いコンビ・チュートリアルの福田充徳さんが道路交通法違反で摘発されたことで、にわかに脚光を浴びた「後輪にブレーキの付いていないロードバイク」。この違法自転車の正体を、交通問題に詳しいフリーライター植村祐介氏が、こう解説する。
「それは“ノーブレーキピスト”と呼ばれる自転車です。ピストとは、競輪で使われる競技用自転車のように変速機がなく、ペダルと後輪がいわば直結状態にある自転車のこと。ノーブレーキピストはそのピストから前後どちらか、または両方のブレーキを取り外した自転車のことです」
最近よく目にする、自転車レースさながらのスタイルで道路を走っているロードバイカーたち。その一部が、「シンプルでオシャレ」という理由でブレーキを取り外しているのだ。もちろん、自分好みに改造したいというマニアの気持ちは、理解できなくもない。だが問題は、彼らの多くがノーブレーキ自転車は違法であると認識していない点だろう。
「自転車には、法令で定める基準に適合した制動装置(ブレーキ)の装着が義務づけられています。そして道交法施行規則では、制動装置の基準を『前車輪及び後車輪を制動すること』『乾燥した平たんな舗装路面において、制動初速度が10キロメートル毎時のとき、制動装置の操作を開始した場所から3メートル以内の距離で円滑に自転車を停止させる性能を有すること』と定めています」(警察庁広報室)
分かりやすく言うと、自転車には前後車輪ともにブレーキが必須。そして、乾いた路面を10キロで走っていた時、3メートル以内に止まれる性能が必要だということだ。厳密に言えば、効きの弱いブレーキも違法といえるので、ノーブレーキに至っては論外である。前出の植村氏がノーブレーキピストの危険性を、こう指摘する。
「ノーブレーキピストのユーザーは『足を止めればブレーキになる』と主張しますが、歩くようなスピードならともかく、普通に走っていてはとても止まれるものではありません。それが歩行者のいる歩道を走ったりしているのですから、危険性は言うまでもないでしょう」
仮に足で止められたとしても、「制動装置を有しないと考えられる」(警察広報室)ため、やはり違法であることには変わりない。
福田さんが摘発されたのは、まさに秋の交通安全週間(9月21日~30日)の真っ只中。いつもより厳しく取り締まっていたとはいえ、反則切符は5万円以下の罰金。自動車の整備不良の反則金9000円(制動装置等)より高くつくこともある。自転車を愛すればこそ、法律を順守し、マナーを守りたいところだ。
(写真/村上庄吾)
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