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花王は、1953年にグリセリン脂肪酸エステルを販売して以来、特長ある各種食品用乳化剤をとりそろえ、食品産業の発展に貢献してまいりました。
本年(2008年)4月、厚生労働省は新規に食品添加物を認可しました。その中のひとつがポリソルベート(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)です。
このポリソルベートの認可を受け花王では、新製品として「エマゾール S-120V」「エマゾール O-120V」「エマゾール L-120V」のポリソルベート3製品を上市しました。ポリソルベートは1937年に米国のアトラスパウダー社で合成され、いまでは世界中で食品添加物として広く使用されています。日本では、医薬品や化粧品用途などの工業用としてこれまでも認可されており、花王もレオドールのブランドで販売しています。ポリソルベートは、食品添加物として人の口に入るので、食品衛生法できびしい規格が設けられていますが、エマゾール 120Vシリーズではさらに風味をよくするため精製工程を工夫しています。
「エマゾール S-120V」はポリソルベート60、「エマゾール O-120V」はポリソルベート80、「エマゾール L-120V」はポリソルベート20の花王製品名です。例えば「エマゾール S-120V」はソルビタンモノステアレートにオキシエチレン基が約20分子結合した構造を持ちます。親水基が分子全体の8割を占めるため親水性が高くなります(図1)。なお原料として使用している脂肪酸は植物由来です。
花王の食品用乳化剤は、これまで親油性のグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどW/O乳化に向いた低HLB※のものでしたが、高HLBのエマゾール 120Vシリーズが加わり、O/W乳化まで幅広い用途で食品産業に貢献することができるようになりました(図2)。
エマゾール 120Vシリーズは水に溶けやすく、油に溶けにくい性質を持っています。水に対して25℃で10%濃度まで溶解し、エタノールに可溶です。特に「エマゾール L-120V」(ポリソルベート20)は水と任意の割合で混合することができます。一方、油脂に対する溶解性はあまりよくないのですが、0.5%程度であれば溶かすことができます。同じ親水性の乳化剤であるショ糖エステル、ポリグリセリンエステルが水または油脂に溶解しにくいことを考えると、エマゾール 120Vシリーズはとても使い易い乳化剤といえます。エマゾール 120VシリーズはO/W系で優れた乳化力を示します。酸や塩の存在下では乳化は一般に不安定となりますが、エマゾール 120Vシリーズを用いると比較的良好な乳化状態を保つことができます。また、オレンジ油などの精油を可溶化する際には「エマゾール L-120V」が効果的です。精油や香料を可溶化すると食品への添加工程が容易になります。
花王のポリソルベート製品の特徴・機能と主な用途を、表1で紹介いたします。
| 製品名 | 特徴・機能 | 主な用途 |
|---|---|---|
| エマゾール L-120V |
親油性成分の可溶性、乳化 (香料、色素、健康食品素材等) |
香料、色素 健康食品 |
| エマゾール S-120V |
O/W型難乳化食品の乳化・安定 (低pH、高塩分、 乳化不安定化成分を含む乳化系) |
デザート類、ホイップクリーム、 アイスクリーム、調味食品、 ショートニング、乳脂肪代替食品、 洋菓子、焼菓子 |
| エマゾール O-120V |
O/W乳化物の解乳化調整併用 乳化剤の溶解、分散、液晶化 |
ホイップクリーム、 アイスクリーム |
日本では、これまでポリソルベートを食品に使用できなかったので、応用例については諸外国の例が参考になります。使用経験の長い米国の Code of federal regulations title 21(21CFR)の使用基準に関する記載を見ますと、いくつかの用途でソルビタンモノステアレートとの併用が示されています。グリセリンエステルまたはソルビタンエステルと併用した方が、ポリソルベートを単独で使う場合に比べて、効果が上がるのもエマゾール 120Vシリーズを使用する上でのポイントになります。
一例としてホイップクリームに使用した場合の起泡性について紹介します。ホイップクリームの乳化剤は、複数の乳化剤を組み合わせて使うことが一般的です。この例では、コントロールとしてレシチン、ショ糖エステル、グリセリンエステルを組み合わせています。この系に「エマゾール S-120V」を添加した場合、オーバーランの数値を高める効果が見られます(図3-1)。クリームのオーバーランは乳化液が空気を抱き込んで容積が大きくなることです。注目すべき現象として、「エマゾール S-120V」を加えたときに起泡速度は変わらないのでホイップ時間が長くなりましたが、「エマゾール S-120V」とソルビタンエステル(エマゾール S-10V)の添加量を合せて加えたときは、最大オーバーラン値がさらに大きくなるのにもかかわらず、ホイップにかかる時間は変わりません。起泡速度もアップしているのです(図3-2)。
このようなエマゾール 120Vシリーズと種類の異なる乳化剤を併用したときのメカニズムは、油と水の界面で分子の会合が形成され、安定化するためであるといわれています。エマゾール 120Vシリーズとソルビタンエステルを組み合わせた時、乳化状態が最も安定になるのは、乳化剤を配合したときのHLBが一定の範囲にある場合と考えられます。また、不飽和脂肪酸を持つソルビタンエステルを用いると良好な乳化状態にはならないので、構成脂肪酸の影響もあるようです。
エマゾール 120Vシリーズを使用した場合、食品への表示については「乳化剤」の一括名表示、またはポリソルベート20(L-120V)、ポリソルベート60(S-120V)、ポリソルベート80(O-120V)の物質名表示が必要です。乳化剤の一括表示は従来の乳化剤と同様ですが、物質名表示をする場合は注意が必要です。食品添加物公定書でいうグリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリド、ポリグリセリンエステル、コハク酸モノグリなどを包括していますが、ポリソルベートはそれぞれが一品目となっています。
あと一つ注意が必要なのは、ポリソルベートに使用基準が設けられていることです。ポリソルベート以外の食品用乳化剤には使用基準がありませんので、戸惑うことが予想されます。エマゾール 120Vシリーズを使用しようとする食品の種類により基準値が定められています(表2)。この際、基準値はポリソルベート80がベースとなるので、使用するポリソルベートの基準値はポリソルベート80に換算して判断します。換算は、対象ポリソルベートのオキシエチレン基含量をポリソルベート80のオキシエチレン基含量と比較して算出することになります。オキシエチレン基含量が大きくなるに従い、使用基準量は低く設定されます。ポリソルベート20のオキシエチレン基含量は約72%ですので、ポリソルベート80のオキシエチレン基含量(約67%)から換算して、使用基準量はポリソルベート80の約93%となります。例えばショートニングでの使用基準は、ポリソルベート80では5.0g/kgですが、ポリソルベート20ではその93%の4.6g/kg(5.0g/kg×0.93)となります(表3)。
またエマゾール 120Vシリーズの内2種類以上を使用するときは、その合計が基準値以下であることも必要条件です。使用基準に関して判断がつかない場合は、食品を製造する工場の所轄保健所に確認されるとよいでしょう。
花王では、ポリソルベート「エマゾール 120Vシリーズ」をお使いいただく上で、さまざまな技術的知見を持っています。またこのほかにも「エキセル」「エマゾール」「ステップ SS」をはじめとして、各種食品乳化剤を取りそろえていますので、是非ご相談をお寄せいただきたいと思います。
| 食品 | 使用基準 |
|---|---|
|
25.0g/kg |
|
5.0g/kg |
|
3.0g/kg |
|
1.0g/kg |
|
0.50g/kg |
|
0.080g/kg |
|
0.030g/kg |
|
0.020g/kg |
| エマゾール L-120V (ポリソルベート20) |
エマゾール S-120V (ポリソルベート60) |
エマゾール O-120V (ポリソルベート80) |
|
|---|---|---|---|
| 標準分子量 | 1227.72 | 1311.90 | 1309.68 |
| 脂肪酸 | ラウリン酸 | ステアリン酸 | オレイン酸 |
| 分子量比 | 0.94 | 1.00 | 1 |
| オキシエチレン基 (=44.05)含量 |
70.0-74.0% | 65.0-69.5% | 65.0-69.5% |
| ポリソルベート80への換算量 | 93 | 100 | 100 |
| 例) ショートニングへの使用基準量 |
4.6g/kg | 5.0g/kg | 5.0g/kg |