国の原子力政策の基本方針となる「原子力政策大綱」の改定作業が半年ぶりに再開したことを受け、日本原燃(六ケ所村)の川井吉彦社長は28日の定例会見で、「エネルギー資源がほぼない我が国で原子力は一定の役割を果たすべきだ」と強調。「現実を踏まえた冷静な議論を願いたい」と核燃料サイクル政策の必要性を改めて訴えた。【山本佳孝】
改定作業は27日から国の原子力委員会の有識者会議で再開。メンバーの一部が差し替えられ、脱原発の著書がある大学教授らが新たに加わった。席上、委員会に東日本大震災以降寄せられた意見約1万件のうち、98%が原発廃止を求めたとする結果が報告された。
大綱改定はほぼ5年おきに行われ、現在の大綱は05年10月に閣議決定した。原発を「基幹電源」と位置づけ、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の実現や高速増殖炉の2050年の商用化を目指す内容。今回の改定は、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)のトラブルや原発輸出に向けた競争力強化に対応するため、10年12月に着手されたが、東京電力福島第1原発事故を受け中断していた。
川井社長は大綱改定について、「今回策定されるエネルギー政策はまさしく今後の日本の将来を左右する重要なもの」と説明。「世界では貪欲(どんよく)なまでの資源獲得競争時代に入っている」とし、エネルギー小国日本における原発の役割を訴えた。
その上で「再処理を中止した場合、原子力発電の使用済み核燃料をどうするのか、原発内に今ある使用済み核燃料をどうするのかをしっかりと認識してほしい」と再処理事業の重要性を強調。「資源確保や環境保護の面からも再処理する意義は変わらない」と話した。
一方で、再処理工場は08年の相次ぐトラブルで試運転が中断したまま。来年10月予定の完工時期について、川井社長は「スケジュール的には相当厳しいが、現段階で目標を変えるつもりはない」と、あくまで予定通り稼働させる意向を示した。国の安全評価(ストレステスト)の扱いも焦点となるが「いまだに国からの指示はない」と述べるにとどめた。
毎日新聞 2011年9月29日 地方版