「情報への作法 」
本も厚いですが、内容も厚くて深いです。
発売日の翌日、やっと広島市内の書店で本書を見つけた時、最後の一冊でした。
こんなに分厚い(約2.5センチ)文庫本がそんなに売れてるの? と疑問に思ったのですが、読み始めて納得しました。
25章ものルポルタージュですが、1章ごとに読み進めていくうち、ページをめくる手が止まらなくなるからです。
今、当たり前に携帯電話に付いているGPS機能。その成り立ちを追った「第1章 動く地図」は、まるで、読む「プロジェクトX」のようでした。
阪神淡路大震災直後の「AM神戸」の密着ルポ「第2章 被災者報道」は、秒単位の再現に、読むほどに、まるで現場にいるような錯覚に陥り、3・11の東日本大震災の計り知れない恐怖を思わずにいられませんでした。
「第8章 橋本大二郎の技術」
「第19章 DNA捜査の落とし穴」
「第24章 ロス疑惑を許せなかった日系人」
これらは、マスコミを通じて名を知る人物が登場しますが、新聞記事やテレビのニュースでは知るよしもなかった“裏側の事実”が書かれていて、考えさせられました。
でも、私が一番好きなのは「第23章 たかが部活のために」。
わが娘が所属する地元の中学ソフトボール部のコーチとして悪戦苦闘(?)しつつ、県大会出場、三位の座につくまでの顛末を記したルポですが、娘を愛する、一人の父親でありながら、ノンフィクション作家という職業の本領を発揮ししつつ、練習法、勝つための対策を部員とともにモノにしていく筆者の様子がたまらなくおかしくもあり、それでいて、さわやか。最後にジンときます。
25章分のルポには、さまざまなノンフィクションの手法が駆使されており、その点に注目して読むだけでも1冊で25回も多彩に“味わえる”一冊になっています。
本書は、1997年に出版された『情報の技術』の復刊文庫版ですが、今、読んでも古さは感じません。
むしろ、本書をどう読み、どう感じるかが試されている気がします。
| 情報への作法 (講談社プラスアルファ文庫) 価格:¥ 1,000(税込) 発売日:2011-09-21 |
ノンフィクションなのに、ビジネスに生かせるヒントも!
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