ギリシャの財政危機やユーロ圏の信用不安の拡大防止へ、欧州連合（ＥＵ）は欧州金融安定基金（ＥＦＳＦ）の機能拡充策で詰めの調整を続けた。意見集約は難航しているもようで、オバマ米大統領は26日、欧州の情勢が「世界を脅かしている」などと欧州の対応の遅れを批判した。欧米メディアは焦点となっているＥＦＳＦの資金規模を現在の５倍の２兆ユーロ（約200兆円）に拡大する案を報じたが、ドイツなどから早くも反論が出ている。

　【ワシントン＝大石格】オバマ米大統領は26日、カリフォルニア州で出席した住民との対話集会で「欧州の金融危機が世界を脅かしている」と言明した。原因として「欧州の政府が銀行が直面する問題に迅速に対応できていない」と指摘。欧州各国に財政赤字削減などの取り組みを促した。

　「世界はつながっている」とも語り、(1)欧州の金融危機(2)中東・北アフリカの「アラブの春」に伴うエネルギー価格の上昇――などが米経済に及ぼす悪影響は避けがたいとの認識を示した。米経済再建へ全力で取り組んでいることも強調した。

２兆ユーロの報道

　複数の欧米メディアは26日、ユーロ圏諸国がＥＦＳＦの融資能力を現状の4400億ユーロから２兆ユーロ規模に拡大する可能性があると伝えた。先週末の20カ国・地域（Ｇ20）財務相・中央銀行総裁会議で、ユーロ圏への行動が要請されたのに対応するものという。

　ただ、ロイター通信によると、ドイツのショイブレ財務相は「拡大する計画はない」と断言。独議会は29日にＥＦＳＦの機能拡充に関する採決を控えており、歯止めのない支援負担を懸念する声を意識したとみられる。

　ノボトニー・オーストリア中央銀行総裁は「現在より大きくなる。（ただし）１兆ユーロ規模にはならない可能性がある」と語った。