五山送り火使用断念、被災マツ処分暗礁
8月の五山送り火で京都市が使用を断念した岩手県陸前高田市の被災マツの薪(まき)500本の処分が宙に浮いている。市が処分方法を探っているが、文部科学省に「管轄外」と見放され、引き取りを打診した研究機関からも拒否された。市施設での焼却も国の基準がないため見送り、1カ月以上も倉庫に置かれたままになっている。
薪は市が送り火で使う目的でNPO法人を通じ現地から取り寄せたが、1キロ当たり1130ベクレルの放射性セシウムが検出されたため使用を中止し、西京区内の市の倉庫に保管している。
市は8月中旬から処分方法を検討しているが、放射能の安全対策を担う文科省に相談すると「うちの担当ではない」と突き放され、東京都の民間研究機関にも引き取りを断られた。市施設での焼却や埋め立てにも環境省の基準がないため、担当者は「周辺住民の理解が必要で、安全基準がないと説得は難しい」と見送っている。
市は京都大原子炉実験所(大阪府熊取町)に相談しているが、副所長の高橋千太郎教授(放射線管理)は「科学的には燃やしても安全だが、送り火で使用を断念した薪を基準がないまま処分すれば、住民の安心は得られない。国や自治体の動きを見て議論すべき」と慎重な姿勢だ。
8月下旬には西京区選出の府市議5人が市に早期処分を要求。同区選出の田中明秀市議(自民党)は「住民から風評被害を心配する声も寄せられている」と話し、倉庫が市境の近くにある亀岡市からも安全性への問い合わせがあった。
市文化市民局は「薪はビニール袋とシートをかけて保管しており、放射線量は自然界と同じ数値であることを確認している。早急に安心安全な方法で処分したい」と説明するが、処分方法は見つからず頭を抱えている。
■五山送り火の被災マツ使用問題
大文字保存会(左京区)が被災マツを燃やそうとしたところ、放射能汚染を心配する声に配慮し、放射能を検出しなかったが中止した。「風評被害を助長する」と全国から批判が殺到。市は現地から別の薪を取り寄せ五山で燃やす計画を立てたが、放射性セシウムを検出したため断念し、二転三転した対応に批判が高まった。
【 2011年10月01日 09時17分 】
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