【シドニー】韓国サムスン電子の弁護士は30日、タブレット端末に関して米アップル社と係争中の特許侵害訴訟和解のための取引を申し出た。
申し出が受け入れられれば、サムスン電子は同社のタブレット端末「Galaxy Tab(ギャラクシータブ)10.1」を来週にもオーストラリアで販売できるようになる。サムスンの弁護士、デビッド・キャターンズ氏がシドニーの連邦裁判所で行われた審問後、ダウ・ジョーンズ通信社に語った。
アップルは今年4月以来、サムスンのスマートフォンとタブレット端末が「iPhone(アイフォーン)」と「iPad(アイパッド)」を模倣しているとして、世界中で訴訟を起こしている。アップルはドイツ、日本、フランス、韓国でもサムソンを提訴している。
オーストラリアでは、アップルは数カ月に及ぶ可能性のある最終審理を前に、一時的な販売差し止めを求めていた。差し止めが認められれば、サムソンはオーストラリア市場で販売できなくなる。6月のクレディスイスのリポートによると、オーストラリア市場でのアイパッド販売台数は50万台と推定される。
アップルの販売差し止め要求が拒否されれば、世界のタブレット端末およびスマートフォン市場におけるアップルの独占的地位が脅かされる可能性がある。アップルが時価総額で世界最大の企業になるまで成長をけん引してきたのは両製品だ。
裁判所では取引の詳細は説明されなかったため、アップルにとってどのような恩恵が期待できるのかは明らかではない。しかし、アップルの弁護士、スティーブン・バーリー氏は、取引から何らかの恩恵を受ける可能性があることを認め、「(サムソン側の)不都合は軽減し、こちら側は楽になる」取引だと述べた。
訴訟を担当するアナベル・ベネット連邦裁判事は、取引の申し出は紛争に対するサムスンの最終的な回答となるわけではないとしたが、キャターンズ弁護士は、少なくともサムスンは重要なクリスマス商戦が始まる前に新型タブレット端末を販売できることになると述べた。
審問の後に呼ばれたバーリー弁護士はアップルの立場について詳細を明らかにしなかった。アップルの広報担当者からはまだコメントは得られていない。
アップルは欧州最大の経済大国、ドイツの訴訟では既に勝利を収めている。ドイツの裁判所は今月、ギャラクシータブ10.1がアイパッドを模倣しているとして、ドイツ国内での販売を禁じる判決を確定した。それ以前にもオランダのハーグで似たような判決が下されている。ハーグの裁判所は、サムスンの一部スマートフォンについて、アップルの特許を侵害しているとして欧州全域での販売差し止めを命じた。
アップルは今年7月、4-6月期のアイパッドの世界販売台数は、前年同期の330万台に比べて3倍近い925万台だったことを明らかにした。一方、売上高ではハイテク業界世界最大のメーカー、サムスンの1-6月期タブレット端末出荷台数は200万台程度で、同時期に出荷した携帯電話1億4000万台に比べるとその比率は僅かだ。