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[29968] 【ネタ】 IS ~時の流れは何処へ~ (IS二次創作 シュタゲ風の設定あり)
Name: 空城◆1e903e03 ID:c5e8dfd4
Date: 2011/10/01 10:13
*初めに
この作品は、IS インフィニット・ストラトス の二次創作ですが、原作の設定を意図的に変えている部分があります。ご了承ください。












「この世にね、時間なんて言うものは存在しないんだよ。

ただ、そこには変化があるだけ。
因果と確率によって世界が変化していく様子を理解しやすくするために、人が時間という概念を生み出したに過ぎないんだ。

だから、タイムパラドックスなんていう議論は、本質的に無意味なんだよ。
未来や過去といった存在も所詮は人が生み出した概念でしかないんだから。
過去にも未来にも行けるわけがない。

でもね。

変化する前の存在に、変化した後の存在が干渉することはできるんだ。
変化した後の存在の干渉を、変化する前の存在が受けることはできるんだ。

化学の授業で、平衡状態について習ったことがあるだろ?
例えば、密閉された空間に水を置いておくと、最初、水はどんどん蒸発して水蒸気になっていくけど、やがて水蒸気が増えてくるとその一部は再び水に戻り、最後には蒸発する水の量と水に戻る水蒸気の量が等しくなり、見かけでは変化しなくなる。
これは、変化する前の存在である水に、変化した後の存在である水蒸気が干渉していると言えるだろう?
水だけならどんどん蒸発してやがてはなくなってしまうのに、水蒸気の働きによって途中でそれが止まるのだから。

まぁ、これはあくまでも比喩にすぎないけど、それでも変化する前の存在に変化した後の存在が干渉することは確かに可能なんだ。
そう、十分前の自分という変化する前の存在に、今の自分という変化した後の存在が干渉する、といったことでもね。

私の言うことを妄言だと断じるかい?
それも良いだろう。
何を信じるかは人それぞれだ。
私は単に一つの仮説を述べているにすぎないのだから。

けど、私に言わせれば、時間という概念はまやかしに過ぎない。

因果律が、過去から未来へと時間の流れにそってのみ作用するなど、誰が決めた?
そもそも、もしそうだと仮定したら、なぜ現代物理学では確率でしか物事を表せないなどという考えが主流になっている?
因果律が過去から未来という決まった方向にのみ働くのなら、過去を全て観測すれば未来は全て解るはずではないか?
現実的にはそんなことは不可能だとしても、理論としてはそうなるはずだろう?
だが、実際には、理論においても確率でしか表せていないじゃないか。

前提条件が間違っているのだよ。
因果律は未来から過去へも作用する。
観測不可能な未来からの作用があるからこそ、現在を確定させることができず、世界を確率でしか表すことができない。

繰り返し言うことになるが、時間というものは本来なら存在しない。
世界には、ただ変化があるだけで、時間というのはそれを観測するために人が作った概念にすぎない。
未来や過去といったものも、変化の後と変化の前に対して人が名付けただけ。
だから、因果律が未来から過去へ作用するのもある意味で当然なんだ。
極論すれば、世界から見た場合、未来も過去も同じような存在なんだから

変化する前の存在が変化した後の存在に影響を与えるように、変化した後の存在も変化する前の存在に影響を与える、与えることができるんだ。

時間を遡って過去に行くことはできない。でも、変化する前の存在に影響を与えることはできる。
過去に行って歴史を変えることはできない。でも、今から見て昔の現象に影響を与えることはできる。

もしそれで昔の現象に影響を与えて歴史を変えたとして、今はどうなるのか?って。
今が変われば、歴史を変えるということも起こらなくなるはずで、矛盾が起こると言いたいのか?

初めに言ったはずだよ。
時間というものが本質的には存在しない以上、タイムパラドックスの議論は無意味だと。

結論から言うとね、変えられた歴史が私たちの歴史となる。
例えば、昔の現象に影響を与えて、坂本龍馬の暗殺を防いだとしよう。
その場合は、坂本龍馬が暗殺されなかった歴史が今の歴史となる。
当然、坂本龍馬の暗殺を防ぐために、昔の現象に影響を与える、なんてことは起こらなくなる。だけどそれで良いんだ。
【もし坂本龍馬が暗殺されたら、未来において昔の現象に影響を与えて坂本竜馬の暗殺を防ごうとする動きが発生する】という未来から過去への因果がたしかに存在するのだから、そこに矛盾なんていうのは起こらない。

タイムパラドックスの議論って言うのはね、あくまでも、因果が過去から未来への時間軸にそってのみ働く、という前提の話なんだ。
未来から過去への因果を認めてしまえば、そこに矛盾は起こらなくなるんだよ。
過去が未来を決めるだけでなく、未来も過去を決めるのだから。

私が何を言っているか解らない?
ま、仕方がないね。私は説明するのが下手だから。

でも、君たちは自分の意思で、私の研究成果を知りたくて、ここに集まった。
ならば、私の言うことを理解しておいた方が良いよ。
私の研究成果は、この考えが元になっているのだから」






さぁ、世界を滅ぼそう。

さぁ、秩序を混沌と入れ替えよう。

さぁ、今の私を消し去ろう。



亡霊が囁く。

それは消え去った世界の悲鳴。











はっ、と意識が覚醒する。

目を開ければ、薄暗い天井が見えた。
カーテンの隙間からまっすぐに延びる光が、既にお昼であることを示していた。

「夢、か」

もう何度見たかも分らぬ夢。
世界を滅ぼしたいと願い、その末に時間と言う概念を破壊してしまった、哀れな女の人生。

何で私がこんな夢を見るのか?
推測はできるが、本当の所は分らない。いや、分りたくない、と言うべきか。
だから、私は『運悪く異世界の亡霊に取りつかれてしまったんだ』と考えるようにしている。
彼女の人生を夢として見せつけられる以外、実害はないのだから、それでいいのだ。

むしろ、この夢を通して天才と呼ばれていた彼女の記憶を見続けたおかげで、天才の知識を子供のころから手に入れられたと考えれば、プラスな面の方が大きいかもしれない。
これの御蔭で、小学校から今まで、一度も勉強で困ったことがないし、テストも殆ど満点だ。
やっぱり、何事もポジティブに考えないとね。

そんなことを考えながら、ベッドから起き上がり、パソコンの前に座った。
電源を入れ、寝る前に書きあげたレポートを確認の為に開く。
レポートの表題は『外部端末を利用した思考及び認識の拡張』。

宿題として出された中学校一年生の夏休みの自由研究である。
…というのは、勿論嘘だ。
ま、自分にとっては夏休みの自由研究みたいなものだが。

内容は、ぶっちゃけてしまえば、夢の中で彼女が作ったとある機械の基礎理論のパクリだ。
彼女が生み出した斬新な理論を、私なりに分り易く纏めてみたのがこのレポートである。

これを専門家に見せることで、あの夢が本当にあったことなのか、それとも私が生み出した妄想なのか、それを確認しようと思ったのである。
もし、専門家がこれを認めれば、あの夢は現実にあったことなのだ、と考えざるを得ないし、もし、専門家がこれ中学生の妄言として処理してしまえば、やっぱり夢は夢に過ぎないのだと安心することができる。

問題は、これを何処の誰にどうやって読んでもらうか、と言うことだが、今の日本にはその為にちょうど良いところがあった。
完成してからまだ数年しか経っていないIS学園である。

ISことインフィニット・ストラトスは、この世界にいろんな意味で衝撃をもたらしたパワードスーツだ。あらゆる兵器を上回る性能や女性しか扱えないという異常性で世界に大きな混乱を撒き散らしたといってもいい。

そしてこのISの注目すべき特徴の一つが、操縦者の意志を読みとって動くということである。
それまでの脳科学では、脳波を読みとってその精神状態を推測する程度のことしかできなかったのに、このISは操縦者の思考が読みとれるのである。脳科学者に取ってみれば、これ以上ない格好の研究対象だ。

そんな訳で、IS学園には世界レベルの優秀な脳科学者が多数在籍しているのだ。
『外部端末を利用した思考及び認識の拡張』というレポートの真偽を判断してもらうにはまさにうってつけの場所と言えるだろう。

そして幸運なことに私にはIS学園への伝手があった。というか、伝手があったからこそ、こうやってレポートを書いたのだが。
私の姉がIS学園に生徒として通っているのである。しかも本人の自己申告を信じるなら、先生方からも好かれている優等生として。何でもクラス代表をやっているとか。

ま、そんな立場の姉だから、先生にレポートを渡すことも可能だろう。たぶん。
渡せなかったら、別の方法を考えれば良いだけだしね。




レポートを印刷して、さて、姉に渡すか、と考えたところで、お腹が「ぐ~~」と鳴った。
パソコンの時計を見れば、時間は二時を過ぎていた。

「そりゃ、お腹も減るか」

そう呟きつつ、パソコンの電源を切り、レポートを持ってリビングに向かう。

トントントンと階段を下りて、ガチャっとリビングの扉を開けると、そこでは想像通り姉が紅茶を飲みながらテレビを見ていた。

「今日は随分と遅かったわね」

姉がこちらを見るなりそう呟く。

「レポートの最終確認をしていたら、寝るのが遅くなっちゃって。
私のお昼ご飯は残っている?」

「トースターの中に朝食のパンが、コンロの横に昼食の冷やし中華がおいてあるわよ。
レポートってのは、アレ?
脳科学の先生に渡せって、貴方が言ってた?」

台所に行くと、そこには姉の言葉通り、パンと冷やし中華があった。
女の子としては大食いの私でも、流石にこれを一食では食いきれないぞ…

「パンと冷やし中華って、そんなに食べられないよ…どうすんの、これ。
レポートはそれだよ。
先生に渡せそう?」

「私が怒られるような内容じゃないでしょうね?
そのレポート」

テーブルの上に私が置いたレポートを手にとって、パラパラと捲った後、姉はそう尋ねた。
どうやら、ちら見しただけで、内容を理解することは諦めたらしい。

「どうだろうねぇ」

私はそう返事をした。
そもそも真偽を確認する為に見てもらう訳で、相手の反応がどうなるかなんて言うのは分らないのだ。

「どうだろうね、って貴方、渡すのは私なのよ!」

私、怒っています、という様子で姉が言う。

「先生から怒られたら、全部私の責任にしちゃっていいよ。
妹がどうしてもって言うから仕方なく、みたいな感じで」

「渡さないっていう選択肢もあるのよ?」

レポートをポイ捨てするような仕草をした後、そんなことを言ってくる姉。
仕方なく私は説得材料其の一を使うことにした。

「受験の時、小学生の妹に家庭教師をやってもらった、ていう恥ずかしい過去を写真付きでばら撒かれたいんなら、それもいいんじゃない?」

効果は抜群だ。
私の言葉に姉は大いにうろたえた。

「くっ、あんたの教え方が分り易いのがいけないのよ!」

でもって、姉の口からはそんな言葉が出てきた。
というか、怒るのはそこなのか…。

「いや、怒ることじゃないでしょ、それ。
ともかく、レポートの件はお願いね」

「分ったわよ。はぁ~。
新学期が始まったら、先生に渡すわ。
どうなっても知らないわよ」

「それだけなら大丈夫でしょう。
思考を読み解く装置自体はすでにISで実用化されている訳だし、もしそのレポートの内容が真実だったとしても大した騒ぎにはならないはずだよ」

ISが公開されてから既に数年。流石に、思考を読み解く方法に関して、その機能や理論が不明のままということはないだろう、そういう判断だった。

「…ま、あんたがそう言うなら、そうなんでしょうね。
全く、なんで私の妹はこんなのになってしまったのかしら?」

「流石に、その言い方は酷くない?」

悲しげな表情を見せながら、そう言う。
とはいえ、殆どが演技だが。女性は自らを演じる存在なのだ。

「姉を脅すような妹は、こんなのって言葉で十分よ」

そういって、姉は大きなため息をついた。
まったく、失礼な姉である。私は説得しただけだと言うのに。




後からは思えば、このときの私はまだ幼かったのだ。
どうしようもないほどに、幼かったのだ。
そして、亡霊をめぐる争いは、表舞台に上がる。




シュタゲやってたら、なぜかISの二次創作を書きたくなった。
これはそんな作品です。
たぶん、途中で更新停滞します。



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