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[29975] 【ネタ】E少年リリカル・クーガー(リリなの×超人ロック)
Name: 二十二◆05012ed8 ID:9e157bae
Date: 2011/09/30 23:52
こんにちは。二十二と申します。
この度はお世話になります。

短い間ですが、どうぞよろしくお願いいたします。



[29975] プロローグ
Name: 二十二◆05012ed8 ID:9e157bae
Date: 2011/09/30 23:53
 
 彼は先刻、といってももうおよそ半日近い以前から、そこに横たわったきり動かない。それはちょうど、うちすてられた屍にも見える。
 しかし、彼は生きていた。
 そのあかしに、伸ばされた四肢が、かなりな間遠ではあるが、ときどきぴくりと痙攣するように動く。
 だが、その他に彼の生きていることをあかしだてる動きはまったくない。ひきしまった筋肉をまとった胸板はわずかな動きさえみせず、長い睫毛をたくわえた瞼はいっこうに開く気配をみせぬ。

 その場所には、彼の他に生きている者はいなかった。
 頭を欠いているもの、四肢のねじ切れたもの、男とも女ともつかぬ肉の断片になってしまったもの――そうした生まれもつかぬ無残なありさまとなって、つめたく酷薄な金属の床にうちすてられていた。そこは、また、血煙がうすぐらく立ち込め、なんとはなしに、彼らの無念の声、生者をうらやむ怨嗟の声が渦巻いているかのような不気味な様子であった。

 そうした死者の声に抗うかのように、彼の身体がよわよわしく震えた。恐るべき死者の声、はいよる常闇の死から逃れようと、その腕がゆるゆると伸ばされた。
 しかし、そこで彼の力は尽きてしまった。彼はまた全身を震わせ、がっくりとなり、そのまま動かなくなってしまったのだ。
 彼は、傷つき弱りはてたすがたを無防備にさらして、見るも無残な屍と血煙にまみれたまま、緩慢で恐るべき死を迎えようとしているのだった。
 もはや彼の運命は定まったかのように見えた。

 だが、その刹那――

 彼の目前で光がはじけた。
 みるみるうちにその場所をまっしろに染め上げ、そして、その光がおさまったときには、そこにはもう、彼の姿を見つけることはできなかった。
 そこには、ただ、ものいわぬ屍とその声を代弁するかのような禍々しい血煙とが残されているだけであった。



[29975] だが続かない
Name: 二十二◆05012ed8 ID:9e157bae
Date: 2011/10/01 07:33
 奇妙な格好をした、女がいた。

 燃えるような赤い髪からは、なんと、犬のような耳がちょこんとのぞいている。周囲の音を拾ってぴくぴく動くさまは、まるで本物の動物のようである。
 丈の短かなデニムパンツからは犬のような尾っぽが飛び出していて、こちらもやはり、本物の動物のするような意思ある動きをみせた。

 それは、驚くべき異形であった。つま先から髪の毛にいたるまで、女の容姿はごくごくふつうの人間のそれである。というより、「ごくごくふつう」と評してしまうにはあまりにもったいない、整った容姿をしていた。
 だが、そうであればあるほど、かえってその異相――ちょこんと髪からとびだした犬耳と犬のような巨大な尾っぽ――は目を引いた。
 誰かこの女を目にしたなら、我が目を疑ったか、驚きの声をあげてしまったにちがいない。それは、作り物というにはあまりに精巧で、生々しすぎたのだ。
 だが、幸いというべきか、あたりにはこの奇妙な女のほかには誰もおらぬ。公園には誰一人として――この容姿に見惚れるものも、この異形を騒ぎ立てるものも、まるであらかじめ人払いでもされていたかのように、人影ひとつ見当たらぬ。

 背のたかい木のつくる影のなかでただ一人、その女――アルフはうずくまっていた。
 膝を抱えたかっこうで、力なくうずくまって、その手に握りこんだ青い石を見つめている。いや、睨みつけている。

(こんな、こんな石ころのためにフェイトはあんな思いをしてるってのかい!)

 こみあげる怒りにまかせて、手中の宝石を握りしめる。その恐るべき怪力に、宝石はぎしぎしと悲鳴をあげ、いまにも砕けてしまうかにみえた。
 が、不意にその力がゆるんだ。

(見てられないよ……。あいつは、あの鬼婆はフェイトのことなんか都合のいい使い捨ての道具くらいにしか思ってないんだ。だのに、フェイトはあいつのことをすっかり信じきって、あいつの力になろうと必死になってる。そうすればあの鬼婆の愛を得られると思って、無理に無理をかさねてがんばってる。……そんなことあるワケないのに。なにかと難癖つけられて、折檻されるのがオチだってのに)

 アルフは、心優しい主君があのにくたらしい女に折檻される様を脳裏に描き、うなだれた。

(本当は、無理矢理にでもあの鬼婆のもとから引き離してしまうのが一番だ。そうでもしなくちゃ、結局フェイトは不幸になってしまうのだから。でもアタシには無理だ。無理に「親」から引き離せば、かえってフェイトの心に傷をつくってしまう。そんなことはアタシにはできない。フェイトを傷つけるようなことは、アタシには決してできない。――誰か、誰でもいい、ファイトを助けておくれ、しんじつフェイトを救ってやっておくれよ!)

 アルフは、心の中でひときわ高く悲鳴をあげた。

 その時である。
 手中に握りこんだ宝石が、まばゆい光をはなった。

「う、うわ、なんだいこりゃ!」
 
 光は、たちまちあたり一面をまっしろに染め上げる。
 目を焼くようなまばゆい光。
 やがてそれが収まったとき、はたしてそこには一人の青年が倒れていた。

「これ、これは一体!? い、いやそれよりもこいつ、ひどい大怪我をしてる! ――おいアンタ、大丈夫かい!? 大丈夫なワケないよね、しっかりしなッ」

 アルフはあわてて駆け寄った。
 それは、死体と見まごうばかりの、ひどい有様だった。腕はちぎれ、腹には風穴がうがたれ、己のながした血で全身ぬれそぼっている。
 それでも生きていると確信できたのは、彼が弱々しく、今にも死んでしまいそうな調子で、言葉らしき吐息をもらしたからだ。

「……」
「えっ、なんだい、なんだって?」

 青年の身体が、一瞬かすかに燐光をまとったかにみえた。
 かと思うと、つぎの瞬間には、おどろくべき変化が起こった。
 青年の身体がみるみるうちに縮んでいく。手足が縮み、胴まわりがどんどんやせ細っていく。と同時に、青年の腹にぽっかりあいた穴――明らかな致命傷だったそれが、みるみるうちにふさがっていく。
 それはまるで、重大な欠損を補うために必要な材料を、身体の他の部位からかき集めて、むりやり修復しているようであった。いったいどのような化学変化が起こっているのか、すさまじい熱量を帯びた青年の身体からは、しゅうしゅうと湯気が立ち上る。

 アルフが茫然と見入っているあいだにも、どんどん青年の身体は縮み、代わりに傷がふさがっていく。
 果たして、もうそこに青年の姿はなかった。代わりに現れたのは、齢十に届くかどうかというくらいの幼い少年。
 少年は、力なく横たわったまま、それでもなんとか上半身を起こし、息も絶え絶えといった調子で、どうにか口を開いた。

「助けてくれ、て、ありが、とう」
「アンタ、アンタは一体何者だい……」
「僕は、クーガー。銀河連邦軍情報部所属、クーガー・マクバード」

 なんとかそれだけ言い終えると、少年は糸の切れた人形のようにふっつりと地面に倒れこんだのだった。

「おいっ、アンタっ」

 慌てて声をかけるが、応えはない。死んだように眠っているばかりである。
 だが、今度のそれは、いたって健康的な眠りであった。
 静かに胸は上下しているし、頬には血の色がきざしている。なにより、腹の大穴もなければ、手足の欠損もない。

「いったい何者なんだよ……。どうしたもんかね、このけったいな子は」

 いったいどうしたものかと考えあぐねていたときだった。

『どうしたのアルフ、強い魔力反応があったみたいだけど、大丈夫だった!?』

 愛しい主君の声が、アルフの頭に響いた。
 それは、術者同士が思念でもって直接交信する≪念話≫と呼ばれる魔法技術だった。

「フェイトかい。――ああ、大丈夫だよ。ただ、変な子を拾ったって言うか、なんて言うか。そもそも"子"なのかどうかも分からないし……」
『え? いったい何があったの?』
「いや、それが……」

 なんと説明したものか。
 すっかり返答に窮したアルフは、困った様子でしきりに耳を動かしていたが、ついには頭をかきむしって癇癪をおこした。

「ええい、何があったのかこっちが知りたいくらいだよ!」


          ◇  ◇  ◇


「ジュエルシードがとつぜん暴走をおこして、この子を召喚してしまった、ってとこかな」

 金髪の少女――フェイトは、デバイスに観測されたデータを解析しながら、そう結論付けた。

「うん。やっぱりそうみたい。普通じゃあ考えられないような膨大な魔力反応がでてるし、それに、次元震まで起きちゃってる……」

 アルフはベッドの側に立って、いくらか回復したとみえて健康的な、それでもいまだ弱々しい寝息を立てるクーガーを油断なく見張っていたが、フェイトの報告を聞くなり顔をしかめた。

「次元震だって!? それじゃあ……」
「最悪、≪管理局≫に見つかっちゃったかもしれないね」

 フェイトが険しい表情で示唆したのは、最悪の可能性だった。
 アルフの胸が悲壮に呑まれる。
 この心優しい主人様は、あの憎むべき鬼婆のせいで、次元犯罪者と選ぶところのないような行いをさせられている。
 もしこの事態を嗅ぎつけた≪管理局≫がフェイトを見つけたら、どう遇するのだろうか。
 考えるまでもない。次元犯罪者としてひっとらえるに決まっている。いかなる事情があって、どのように言葉を弄せど、ここ≪管理外世界≫で違法に魔法を行使する次元犯罪者であることに変わりないのだ。

「ねぇフェイト、もう止めようよ、こんなこと。これ以上は無理だよ。≪管理局≫に出てこられたら、これ以上のジュエルシード探しは難しくなる。それにもっと悪くしたら、捕まっちゃうかもしれないんだよ! だから、お願いだから、もう止めておくれよ」

 アルフは懇願した。
 だが、フェイトは、頑として首を縦に振らなかった。

「……ううん。それはできないよ。だって、母さんがジュエルシードを必要としているから。なにより、ジュエルシードを集めてくるって信じてわたしのことを待ってくれてる。わたしは――フェイト・テスタロッサは、母さんの娘としてその期待に応えなくちゃならないから」
「フェイト……」

 フェイトの強情さ、決意の固さをあらためて見せつけられたアルフは、もうそれ以上は何も言うことができず、心の中で悲鳴をあげた。

(ああ、どんどん事態は最悪の状況にむけて転がり落ちていく。それでも、アタシにはそれを止めることなんで出来ない。出来るはずないじゃないか。そういうふうにはできていないんだから)


 いよいよ行き詰まった、とアルフは心中嘆いた。
 そのような折である。

「あの、ちょっといいかな」

 などと件の少年が声をかけたのは。

「フェイト、下がって!」

 アルフは、とっさにフェイトを背中にかばって身構えた。

「あー、その、警戒する気持ちは分かるけど、そこまでしなくてもいいんじゃないかな」

 ベッドで身を起こした巻き毛の少年――クーガーは、苦りきった顔をした。

「気がついたんだね、よかった!」
「ダメだよフェイト! こんな得体の知れない相手に油断しちゃあ」

 身を乗り出してのぞきこもうとするフェイトを、アフルがきびしく咎めた。
 だが、それを、フェイトはやんわり諭す。

「だめだよ、そんなこと言っちゃあ。この人が召喚されてしまったのは、わたし達のせいなんだよ。ジュエルシードが暴走したせいで、こんなことになったんだから」
「でも、それは、別にアタシたちのせいってわけじゃあないよ。何がと言えば、勝手に暴走したジュエルシードこそが悪いんだ。むしろ、アタシたちは、下手すりゃ次元世界ごと吹き飛ばしてたかもしれない暴走を収めた功労者じゃないか。……こう言っちゃなんだけどさ、これは誰が悪いわけでもない、ただただ運が悪かった。不幸な事故だったのさ」

 宥めるようにアルフは言った。
 実際のところを言えば、それは真っ赤な嘘である。主の身を案じる強烈な思いが、どういうワケか願いをかなえる魔法器具ジュエルシードになんらかの作用をしてもたらされた結果であるというに、アルフはとっくに気づいていたのだ。
 無論、それは、フェイトの預かり知るところではない。素直なフェイトは、アルフの証言とデバイスの観測データを基に「ジュエルシードの暴走による召喚」と断じてしまっていた。暴走には違いないが、その引き金をひいたのがアルフであることもまた、間違いない事実なのであった。

(でも、そんなこと認めるわけにはいかない。過ぎるくらいに優しいフェイトのことだ。偶然とはいえアタシ――フェイトの使い魔たるアタシがこの子を召喚してしまったのだと知れば、この子に対して強烈な負い目を感じてしまうだろう。そうしたら、面倒を見るんだって言いかねない。考えるだに恐ろしい! ≪管理局≫に目をつけられたかもしれないこの局面で、よりにもよって、こんな厄介事を抱え込むだなんて、まっぴらご免だよ!)

 その危惧は、まさしく正鵠を射ていた。
 アルフがそう確信したのは、続くフェイトの健気な台詞によってである。

「それでもわたし達のせいだよ。わたし達がジェルシードに手を出さなければ、そもそもこんなことにならなかったんだし」
「それこそフェイトのせいなんかじゃない! あいつの――プリシアのせいじゃないか! あいつが、ジュエルシードを奪おうだなんて言い出したからッ!」

 アルフは激した。
 今こうしていらぬ苦労を強いられているのも、他ならぬプリシアのせいなのだ。
 だが、それこそがフェイトのアキレス腱であることに、言葉を放ったその瞬間に思い至った。

「だったら、なおさらわたしが償わなくちゃ。だって、わたしは母さんの娘なんだもの――」

 愛する母の責任は、娘たる自分が取るのだ。
 そのような献身的な決意を固めてしまったことは、傍目にも明らかだった。
 アルフはいまだ憤怒冷めやらぬながらも、どこか冷静な頭の一部分で、己の言動を悔いていた。

(下手打ったねぇ、こりゃ。うまいこと言って、この子を放り出すつもりだったのに……)

 二人の間に、重苦しい沈黙がたちこめた。
 もとより口数の少ない主従ではあるが、その仲はけっして悪いものではない。それどころか、極めて良好な関係をふたりは結んでいた。
 それというのは、従順な≪使い魔≫たるアルフは、めったにない意見の対立が起こった際には主にゆずることが常であったし、フェイトはフェイトで、使い魔の言を聞き入れるだけの素直さを持ち合わせていたから、ほんとうの意味で意見が割れるということはなかったのだ。

 だが、プレシアに関しては話が別である。
 フェイトはそもそもの心根が純粋であり、また唯一の肉親ということもあって盲目的に母よ母よと慕っていたが、アルフにとっては、そのような健気な主に冷たくあたる――という言葉ではとうてい足りぬような残酷な扱いを返す、憎むべき鬼婆であった。
 プレシアがフェイトに冷たくあたる度にアルフは憎しみを深め、できれば二人を引き離してしまいたいとつねづね思っている程であったが、フェイトの手前、そうした言葉は決して口に登らせない。
 だが、己の半身とも言うべき≪使い魔≫の真意に気づかぬフェイトではない。フェイトとて、プレシアの自分を見る目の冷たいことやアルフの想いは身にしみて分かっていたが、その一方で、期待に応え続ければ「かつて」のように優しい母に戻ってくれると頑なに信じていた。
 己の願いとアルフの想い。二つの想いの板挟みにあって、フェイト自身もまた、心苦しい思いをしていたのである。
 そのようなわけで、仲睦まじい主従に唯一隔たりをもたらすもの。それがプレシア・テスタロッサなのであった。
 
 そうしたギクシャクとした、重々しい雰囲気を知ってた知らずか――

「得体の知れないって……確かに名乗ったはずなんだけどなぁ」

 クーガー少年は、ゆっくりと口を開いたのだった。





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アルフを「奇妙な女」呼ばわり。
あんな格好した人がいたら、ふつう驚きますよね。地方都市なら尚更。

そんなこんなで、『リリなの』と『超人ロック』のクロスオーバーでした。
超人ロックって、歴史もあるし面白くって有名だけど、SSってあんまり見ませんよね。
「クローン」であることや「道具扱い」されることに強いコンプレックス持ってるクーガーくんとか出したら、面白い話が作れるんじゃないかなー。
なんて思って書き散らしたので、投稿してみました。

さて、非常に残念ですが、私の腕ではこれ以上続けることができませんでしたので、これにてオシマイです。
もし、少しでも「面白そうじゃん」とか「そのネタがあったか!」と思ってくださった方がいらしたら、嬉しいです。
それで、もしも、超人ロックの二次創作をどなたか書いてくださったら、今生ないくらい嬉しいですw



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