田原: 国産主義ということでは、話は飛びますが、たとえば六ヶ所村の核燃料廃棄物の再処理工場がありますね。あそこでは使用済み核燃料をガラス状に固めるんですが、その技術はすでにフランスで実用化されているんですね。ところが日本はフランスからは輸入しないと。なんでやらないのかと聞いたら、最初に考えた人が「国産でやりたい」と言ったらしい。そんなのは途中で変えればいいのに、日本の政府は一旦決まったことを変えることは絶対できない。
もっと馬鹿馬鹿しいのは、福井県に高速増殖炉の「もんじゅ」がありますよね。先日あそこに原発担当大臣の細野豪志という人が行って、僕が話を聞いたのだけれど、「あれはダメだよ」と言うんですよ。なぜかというと、「あれは60年代に開発した技術なのに、直す必要が出てきたら直すということしか考えていない。あんなものは80年代に新しい技術で作るべきだったのに、そういう発想がまったくない」と言っていた。直すと言ったら直すだけ、国産でと言ったら国産だけ、今でもそうですよね。
浅川: 人類の叡智や技術の進歩を無視することほど馬鹿げたことはないですね。それには、研究委託予算であるとか許認可業務であるというような問題があるわけで、もちろん天下り人事の問題もありますね。除染の話に戻りますと、たとえば今回の事故で除染が遅れて、大学の先生が「すぐ線量を計測しなければいけない」と言っていたのに、それも遅れました。
田原: なんで遅れたのですかね。
浅川: めんどうくさい、と。大学の先生から聞いたのですが、文科省は本当に「めんどうくさい、こんな汗水たらす仕事はしたくない」と言ったらしいです。仕方がないので大学の先生が自ら手弁当で動いて、3月からずっといろいろな農地を回って除染に努めておられるような立派な先生もいらっしゃいます。
田原: これも少し話が飛ぶのだけど、放射線を扱う医師や原子力工学をやっている連中はみんな線量計を着けているけど、福島の飯館村でもみんな線量計を着けさせたらどうかと思うんです。ある大学病院の人も「2万、3万作って線量計を配ったらどうか」と言ったんだけど、そうしたら経産省の連中が「それをやったら放射線量が高いとバレてしまう」と言ってやらなかった。
線量が高いのは事実なんだから、その事実は変えられない。政府にはそういう連中が多くて事実を明らかにしないから、逆に不信感が募る。佐藤さんや鈴木さんが今影響を受けているのは、政府がそういう不信感を作ってしまったからでしょう。政府が何を言おうと誰も信用しないんです。これはどうすればいいですかね。
浅川: 今できる限りのことはやってらっしゃると思うのですが、鈴木さんに関して言えば、自分たちのブランド野菜という形で品種から入っていらっしゃるわけですね。鈴木さんのところでしか買えないというものをお持ちですから、それは最初から差別化されている強みだと思います。先ほどの「御前人参」などもそうですが、元々やってこられたことが強みになっているというのは良いことだと思います。
事実を公開するということでは、農家の心理から言うと、計測してみて自分のところから高線量が検出されたら近所に迷惑をかけてしまうという懸念がありますね。消費者だけではなくて、近隣の農家に迷惑がかかる。早場米のときがそうでしたね。自分のところで測ってもし出てしまったら、隣近所だけではなく市町村や郡のような広い範囲で迷惑がかかるから、できるだけ測らないほうが迷惑にならないという心理があったように思います。