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「日本初」の流れくむ喫茶店、8月で幕 東京・阿佐谷

2011年8月18日0時41分

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 「日本最初の喫茶店」の流れをくむ、JR中央線阿佐ケ谷駅近くの喫茶店が8月末、44年続いた歴史に幕を下ろす。営業している中央線高架下の商業施設の建て替え計画のためだ。改築後の新しい商業施設での再開も検討するが、昔懐かしい雰囲気の喫茶店がなくなることを惜しむ人は多い。

 31日に閉店するのは、「阿佐ケ谷ゴールド街」(東京都杉並区阿佐谷南2丁目)2階の「可否茶館(こーひーさかん)」。JR中央線中野〜荻窪駅の高架化に伴ってゴールド街が誕生した1967(昭和42)年5月にオープンした。

 開店当時からある深煎りのフレンチコーヒーが450円。オレンジ色の落ち着いた照明の店内に、比較的ゆったりとテーブルといすが並ぶ。壁には竹久夢二の絵画が10枚ほど飾られ、常連客には文化人も多い。

 「日本最初の喫茶店」とのゆかりは、開店当初の共同経営者の1人が、1888(明治21)年に台東区上野で本格的なコーヒー店「可否茶館」(読み方は「かひさかん」など諸説ある)を創業した鄭永慶さんの孫だったからだ。

 コーヒーの歴史や文化にくわしく、この店をテーマに著書「日本最初の喫茶店」を出した星田宏司さん(68)は「鹿鳴館に代表される明治政府の欧化主義に反発し、一般庶民がコーヒーを飲める店をめざした。国内外の新聞や雑誌をそろえ、知識普及の場でもあった」と言う。

 鄭永慶さんは店をわずか4年でつぶしてしまい、密航先の米国シアトルで亡くなったが、「庶民の文化交流の場を」という志を70年以上隔てて復活させたのが、阿佐ケ谷の店だ。

 経営は現在、もう1人の共同経営者の長男、小菅秀生さん(66)に引き継がれている。80年代前半には同じゴールド街のいまの場所へ店を移し、2倍の広さの約100平方メートルになった。だが3年ほど前、JR東日本の関連会社からゴールド街の建て替えを理由に立ち退きを迫られた。「地域に親しまれた店を残したかった」が、今年4月に撤退を決意した。

 建て替え後の新しい商業施設への入居を希望しているが、賃貸料がいまの数倍に上がる見通しなど、条件は厳しい。また、一部の店舗が立ち退きに応じず訴訟になっており、建て替え時期のめどは立っていない。

 従業員が独自に存続を求める署名を集め始め、これまでに常連客約80人が応じた。小菅さんは「みなさんの熱意をひしひしと感じ、身を引き裂かれるようだ。最後の日にはお客さま一人ひとりに感謝の思いを伝えたい」と話す。(武井宏之)

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