バターが兵庫県内の店頭で品薄となっている。昨夏の猛暑で乳牛の体力が落ち、種付けが不調だったほか、福島第1原発事故による出荷制限も加わり、原料となる生乳の出荷量が減っているためだ。大手乳業メーカーは1日、家庭用バターの値上げに踏み切り、洋菓子店だけでなく一般消費者にも影響が出ている。(井垣和子)
「このままだと作れないケーキが出てくるかもしれない」。神戸、芦屋で洋菓子店を構える元町ケーキ(神戸市中央区)の大西達也社長(40)は、危機感を募らせる。
国産バターが手に入りにくくなり、別の国産品や輸入品を使って試作を始めているという。「前年に比べると価格も1〜2割上がっていて、安定的においしいケーキを作ることが難しくなっている」と頭を抱える。
製菓・製パン用品店の「プロフーズ神戸本店」(同市西区)では、今春ごろから仕入れ量が前年比3割ほど減っており、1人当たりの購入数量を限定している。兵庫県内にスーパー12店舗を展開するライフコーポレーション(大阪市)も「7月から大幅に仕入れが減っている」という。
雪印メグミルクや明治など大手メーカーは、家庭用バター200グラムの製品で5円引き上げる。
農林水産省によると、今春以降、生乳の生産量が減少傾向。そこに福島第1原発事故が起こり、原乳4万トンの廃棄処分や出荷制限が発生した。
生乳の生産者団体でつくる中央酪農会議(東京)によると、4〜7月期の「飲用牛乳」向けの生乳販売量は前年同期比0・3%減と横ばいだったが、バターを含む「特定乳製品」向けは同17・6%の大幅減。雪印メグミルク(東京)などによると、生乳は飲料用の牛乳やヨーグルトなど日持ちしない商品に優先的に使われ、在庫調整しやすいバターへの融通が後回しになるためという。
こうした事態を受け、農水省は3年ぶりに業務用バター2千トンの緊急輸入を決めた。近く市場に出回り「品薄は次第に改善する」という。
国産バターの供給量も年内には回復する見込み。涼しくなれば牛乳の需要は落ち着き、生乳の生産量も戻るとみられるためだ。同省は「今月以降はバター用にも回され、平年並みの水準に持ち直すだろう」としている。
(2011/10/01 14:40)
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