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きょうの社説 2011年10月1日
◎都道府県ウエイト 「聖地」で育む女子パワー
金沢市で開幕した第1回全国都道府県対抗女子ウエイトリフティング選手権は、石川、
富山両県を含む20府県から116選手が参加し、女子では初めて都道府県対抗で競い合う大会である。ウエイトリフティングの「聖地」である金沢市で、女子の競技力向上を図る新たな大会 が開催されたことは意義深い。来年夏のロンドン五輪の出場枠が決まる11月の世界選手権を前にした大会だけに、選手たちの好記録、熱戦が期待される。大いに選手たちに声援を送り、一層の飛躍を後押ししたい。 今大会は女子ウエイトリフティングの普及、強化を図るとともに、将来、国体での女子 種目導入を目指して開催された。地元の金沢学院勢をはじめとする全国の精鋭たちが出場し、団体の都道府県対抗と個人で初代女王の座が競われる。従来の大会とは違った選手らの団結心もバネになって、見応えのある競技が展開されるだろう。観戦する方も都道府県対抗ということで、出身地の選手に親近感を感じ、応援にも力が入るに違いない。 近年、スポーツ界の女子の進出、活躍は目覚ましく、今年は特に女子サッカーの「なで しこジャパン」がワールドカップを制し、女子スポーツに大きな関心が寄せられている。女子ウエイトリフティングも2000年のシドニー五輪から五輪種目として実施され、最近は若手選手の台頭でこれまで以上に注目を集めている。今大会は、女子ウエイトリフティングの醍醐(だいご)味(み)を広くアピールし、認知度をより高める格好の機会といえる。 会場となった金沢市は国のスポーツ拠点づくり推進事業として、高校選抜大会の継続開 催地となっており、2008年にはアジアウエイトリフティング選手権が開催された。北京五輪には石川勢から2選手が出場し、質の高い競技環境と選手の育成は、地域のスポーツ振興のモデルケースとなっている。今回の大会開催は「ウエイトリフティング王国」石川の厚みを増し、幅広い層が一流選手の競技を間近に見ることで刺激を受け、スポーツの裾野を広げるきっかけにもなるだろう。
◎海外留学支援 産学官が歩調を合わせて
文部科学省は、日本人学生の海外留学を積極的に後押しする大学に対し、財政支援をす
る制度を来年度予算で新設する方針という。国際的に活躍できる「グローバル人材」の育成を図る政策の一つであるが、近年、日本人留学生が減少している一因として、帰国後の就職活動に不安を抱く学生が多いことが指摘されており、企業側も採用活動の時期や仕組みを柔軟に見直すなど、産学官の歩調を合わせた取り組みが必要である。文部科学省によると、海外に留学する日本人学生は2004年の約8万2900人をピ ークに減少傾向をたどり、08年は約6万6800人となっている。海外勤務を希望しない若手社員の割合が3割から5割程度に増えている、という調査結果もある。経済のグローバル競争が激しさを増し、中国やインド、韓国などの留学生が著しく増加していることを考えると、心もとない状況である。 留学生の減少理由については、内向き志向ということだけではなく、早期化・長期化す る就職活動と留学を両立させる難しさや、留学資金の不足、語学力の不安などが挙げられる。裏返せば、政策的な後押しがあれば留学に踏み切る学生が少なくないとみられるのである。政府の支援策として、外国語講座開設など留学に向けた環境整備に力を入れる大学に補助金を出すのは一つの方法である。 日本と入学・卒業時期が異なる外国大学への留学生は、帰国後の就職活動にハンディが あり、企業側もこれまで留学経験者の採用に必ずしも積極的ではなかった。しかし、新興国との競争が激化し、海外での事業展開の必要性などから、留学経験者を評価し、採用に動く企業が増えている。 グローバル人材を育成することは成長戦略としても重要である。経済界は、学生の採用 活動の早期化・長期化を改める方向に動き出したが、国際的な企業活動を担う人材を確保していくためには、留学経験者の人物評価の在り方を考え直し、通年採用制の導入を含め採用の仕組みをさらに弾力化することが望まれる。
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