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投げ売りされる輸入水、“過剰在庫”で悲鳴

東洋経済オンライン 9月27日(火)16時14分配信

 震災後の特需に沸くミネラルウォーターだが、一部で余剰在庫に頭を悩ます業者も出てきている。

 食品など通信販売大手ケンコーコムでは3、4月と注文が殺到し、4月中旬には1週間で通常の10倍以上の2万5000箱(1箱24本)売れていたが、5月の連休中の1週間には4000箱まで急減した。

 一方で、同社は3月下旬の時点で輸入品を中心に夏までに100万箱を仕入れる計画を決めており、今や在庫の山を抱えている状態だ。結果、米国産の「クリスタルガイザー」を1箱(=48本)1290円、1本当たり27円と、震災前から約2割値下げ。採算割れの水準だが、倉庫料が膨らむ中、在庫整理が先決と判断した。後藤玄利社長は「天然水の相場がここまで崩れるとは想定外。誤算だった」と悔やむ。

 こうした中、クリスタルガイザーの輸入代理を手掛ける大塚食品はケンコーコムの値下げに対し、「ブランドを毀損するおそれがあり、頭を痛めている」と打ち明ける。ケンコーコムに限らず、ネット通販を中心に震災後、輸入品の仕入れを急増させた業者も多く「今後、大量の在庫を抱えて苦戦する業者が増える」(業界関係者)と見られる。

 対して、ミネラルウォーターのシェア7割を占める国産品の需要は、依然堅調だ。サントリーの「天然水」やコカ・コーラの「いろはす」の販売数量は、現在も前年比二ケタ増を維持。24時間フル生産体制が続いている。「消費者には備蓄した水を消費しながら購入するサイクルができており、今冬も前年を上回るだろう」(日本コカ・コーラ)。

 明暗が生じている背景の一つには、「消費者の国産品への強い信頼感」(岩田芳久・日本ミネラルウォーター協会専務理事)がある。通販という販売網も、「商品を手に取って決めたい主婦を中心に抵抗感があるのは事実。輸入ものであればなおさらだ」(日本スーパーマーケット協会の内藤俊之部長)。

 加えて、飲料が本業のメーカーは、夏以降の需要の安定を見越し、輸入品の仕入れを慎重に行ってきた。実際、キリンビバレッジが扱う仏「ボルヴィック」の販売数量は、輸入品ながら前年比一ケタ増と堅調が続く。

 水特需が続く中、“格差”はどこまで広がるのか。

(本誌:張 子渓、島田知穂 =週刊東洋経済2011年9月17日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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最終更新:9月27日(火)16時14分

東洋経済オンライン

 

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