2011年9月30日 15時0分
九州電力の「やらせメール」問題を調査している同社第三者委員会(郷原信郎委員長)の最終報告書案の全容が30日、分かった。玄海原発(佐賀県玄海町)に関する討論会などでの一連のやらせは古川康・佐賀県知事の意向に沿って行われたとし、問題は「むしろ県側にある」と指摘。中でも、全国初となった同原発でのプルサーマル発電導入は、知事の意向による「作られたイベント世論」が知事の事前了解の重要な要素となったと問題視した。
第三者委は同日午後の会合で、表現など細部を詰め、再発防止策も盛り込んだ最終報告書を九電に提出する。世論操作に知事と九電が密接に関係していたことが指摘されたことで、知事の責任問題に発展するのは必至だ。
報告書案によると、玄海原発へのプルサーマル発電導入を巡り、05年12月に開かれた県主催の公開討論会の参加者は、応募した約1000人のうち九電関係者が655人。九電はあらかじめ質問する参加者を仕込み、その結果、賛成の立場から質問した8人中7人が仕込み質問者だった。 しかも九電は事前にシナリオや台本、推進派パネリストの発言骨子なども県側に提供。「討論会は企画、進行において県と九電が協力して行われた」とし、動員と仕込み質問について「知事も何らかの形で認識していたはず」と結論付けた。
知事は討論会後、「安全性そのものについて論点は出尽くした」と表明。06年3月にプルサーマル発電導入の事前了解を出しているが、報告書案は「知事の意向による『作られたイベント世論』が重要な要素となって事前了解が行われた」と指摘している。
また、一連のやらせ問題発覚の契機となった今年6月の玄海原発再稼働に関する国主催の説明番組でも、知事の九電幹部への発言が、九電によるやらせメール投稿につながったと認定。「知事は再稼働に向けてのシナリオを描き、九電と緊密な協力の下に再稼働に向けてステップを踏んでいこうとしたと思われる」と知事側の責任に踏み込み、知事と九電との関係を「不透明な関係」と問題提起している。【太田圭介】