京畿道高陽市のある鋳物工場は先日、鉄を溶かす加熱炉を軽油式から電気式に交換した。環境汚染を減らし、工場の作業環境改善にもプラスになるということで、政府も交換を後押しした。交換前に使った軽油は年間およそ2000キロリットルほどだったが、この工場で使用する1年分の電力を軽油で生産するには、約4700キロリットルが必要だという。軽油やガスを燃料とする火力発電所のタービンを回して電力を生産する際、エネルギーのほぼ半分は熱として消滅するからだ。
このようにエネルギーの非効率的な使用が可能となる理由は、電気料金が生産原価を下回っているからだ。韓国の電気料金は生産原価の90%、つまり原価割れとなっている。上記の鋳物工場は加熱炉の交換に4億ウォン(約2600万円)以上の費用が掛かったが、軽油式だと燃料代が売り上げの15%を占めていたため、電気料金の安さを考慮すれば、ほぼ5年で元が取れるという。
このようにいびつな電力需給構造は、産業現場だけでなく家庭や商業施設など、韓国のあらゆる分野で目にする。200以上の客室を持つ仁川・永宗島のあるコンドミニアムは、全ての客室にIHクッキングヒーターを入れた。関係者は「古いコンドミニアムを買収してリフォームする際、ガスコンロを全てIHに交換した。ガスを使うよりも電気にする方が、経費が安くなるからだ」と述べた。
大規模な総合病院の治療機器や学校の教育機器、工場の機械、埠頭(ふとう)で使用されるコンテナ用クレーン、ビニールハウスや畜舎などの暖房機器も同様で、いずれも電気式に交換されるケースが相次いでいる。安い電気料金は国のエネルギー需給構造をいびつなものとし、結局は「国レベルでの電力の無駄遣い」という結果を招いている。
■GDPを1ドル増やすのにOECD平均の1.75倍の電力を使用
海外と比較しても、韓国の電力消費量の多さは際立っている。国内総生産(GDP)を1ドル(約77円)増やすのに必要な電力を見ると、韓国は0.58キロワット時の電力を使う。これは経済協力開発機構(OECD)平均(0.33キロワット時)の1.76倍で、米国(0.3527キロワット時)や英国(0.21キロワット時)に比べ多い。
これは韓国の産業構造が、製造業、とりわけ化学、鉄鋼、製紙など電力を大量に使う業種が多いのが原因とされてきた。しかし韓国と同じような産業構造を持つ日本やドイツと比較すると、産業構造だけが原因でないことが分かる。日本はGDPを1ドル増やすのに韓国の半分以下に当たる0.20キロワット時の電力を使う。ドイツは同0.28キロワット時で、韓国に比べはるかに少ない。韓国での1人当たりの年間電力消費量は9510キロワット時で、韓国よりも経済水準の高いフランス(7894キロワット時)や英国(5742キロワット時)に比べ多い。2008年には、GDPの規模が韓国の4倍を上回る日本(8110キロワット時)をも上回った。