「住民の理解が得られない限り再稼働は認めない」--。中部電力浜岡原発(御前崎市)から10キロ圏内に市域の一部がかかる菊川市議会は29日、原発の安全確保を求める意見書を全会一致で可決し、市民の不安を代弁した。一方で、小笠原宏昌議長は「『永久停止』の言葉には慎重にならざるを得ない」と述べ、「永久停止」を盛り込んだ牧之原市議会の26日の決議とは一線を画し、同じ10キロ圏内でも温度差を感じさせる審議となった。【舟津進】
菊川市議会の9月定例会本会議で可決された「中部電力浜岡原発の安全対策に関する意見書」は、(1)福島第1原発事故の知見に基づく新しい安全基準で浜岡原発を検証し、住民の理解を得られない限り再稼働は認めない(2)浜岡原発にある使用済み核燃料の安全な冷却とシビアアクシデント(過酷事故)に対する体制整備(3)使用済み核燃料の最終処分までのスケジュールを示す(4)原子力防災対策重点地域(EPZ)の対象範囲と御前崎市にある県のオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)の位置を見直す--などの内容。
全議員17人が共同提出した。近く衆参両院議長や首相、担当大臣と県知事に提出する。
意見書の審議に先立って市民団体「浜岡原発について考える市民の会」(渡辺富士江代表)が提出した「浜岡原発を再稼働しない決議を求める請願」は不採択となった。
「(原発事故で市民が)避難する事態が起きる前に決議してほしい」との内容で、採決は8対8の可否同数となり、議長判断で不採択を決めた。小笠原議長は不採択の理由について記者団に、「(請願は永久停止につながる内容で)踏み込んだ表現をするには時間をかける必要がある。再稼働について周辺4市が話し合う余地を残したい」と語った。
太田順一市長は再稼働を認める前提となる「住民の理解」について、「議会の場で協議して方向性を出してほしい。住民アンケートは考えていない」と述べた。
菊川、牧之原両市は浜岡原発安全等対策協議会(会長=石原茂雄御前崎市長)を構成している地元4市のうちの2市。政府の要請で浜岡原発を停止している中電は、津波対策を実施し、地元の同意を得て運転を再開するとしている。
毎日新聞 2011年9月30日 地方版