喫煙者がタバコに含まれる放射性核種ポロニウム210を吸入してα線内部被ばくすることにより、肺癌の発症率が高まる…。タバコ会社はこの問題について40年以上前から詳細な調査を行っていたにもかかわらず、事実の周知を意図的に怠ってきた、とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者 Hrayr S. Karagueuzian氏らが報告しています。
この報告は、訴訟和解によって1998年に公開されたタバコ業界の内部文書の分析に基づくもの。それらの文書を検証した結果、研究チームは「タバコ業界が、1959年にはすでにタバコに含まれる放射性物質の存在に気づいていた」と指摘。さらに「喫煙者の肺における癌性腫瘍の可能性について認識していただけでなく、タバコの煙から放射されるイオン化したα粒子について、肺での長期的放射線吸収線量を推定するために、定量的な放射線生物学的計算も行っていた」としています。
Karagueuzian氏らの報告の要旨は次のようなものです。
タバコに含まれる放射性物質について、1959年に最初の注意喚起が行われた。
1964年、それが、発癌性のあるα線を出す放射性同位元素ポロニウム210であると特定された。
ポロニウム210は、大気中に自然に存在するラドンガスを通してタバコの葉に吸収される。また、タバコ生産者が使用する多量のリン酸肥料を通しても吸収される。そして最終的に、ポロニウム210は、喫煙者の肺に吸入される。
タバコ業界内の科学者たちは、喫煙者に対する放射性同位元素の影響を評価するための研究を数十年間行ってきた。その中には、1日2箱のタバコを吸う喫煙者を対象に、放射線被ばくによる肺への負荷を20年間にわたって調査した事例もある。
UCLAの研究チームは、産業界と学術界のデータを使用して独自に計算を行ったが、その結果はタバコ業界で行われてきた調査と非常に良く一致した。
α粒子の放射線生物学的パラメータ(線量、分布、滞留時間など)に関する文書から収集したデータを使って、非公開となっている放射線吸収線量についてのタバコ業界側の概算値を再現した。その結果、常習的な喫煙者の20〜25年間での被ばく量は40〜50RADとなった。
この被ばく量を、ラドンガスの長期被ばくによる肺癌発症リスクに関する米国環境保護庁(EPA)の概算値に基づいて評価すると、25年間での死亡率は1000分の120〜138となる。
ポロニウム210をタバコから除去するには、1959年に発見された酸洗浄技術が有効である。この技術を使うと、タバコの葉の表面を覆う毛状突起(トリコーム)と結びついて不水溶性の複合体を形成している放射性物質を非常に効率よく除去できる。しかし、タバコ会社は、この方法を採用することを拒否してきた。
この件に関して、タバコ業界はしばしば、コスト面や、酸洗浄を行わないことによる環境へのプラスの影響を根拠に挙げてきた。しかし、酸洗浄技術を使用しないことに、もっと違う理由がある可能性を示唆する文書が見つかっている。
タバコ業界が懸念したのは、酸性媒体がニコチンをイオン化することで、喫煙者の脳へニコチンが吸収されにくくなり、ニコチン中毒を促進させる即効性の快感が与えられなくなることだった。
また、ポロニウム210の半減期は135日だが、親核種の鉛210の半減期が22年あるため、1年余りの洗浄処理では除去できないことも、タバコ業界はよく分かっていた。
不水溶性のα粒子はタバコの煙に含まれるやにと結合し、凝集して、肺の気管支分岐部に蓄積。肺全体に拡散するかわりに「ホットスポット」を形成する。
以上、当ブログのメインテーマである再生可能エネルギーとは直接関係しませんが、放射線内部被ばくの問題を考える上でも興味深い記事だったため、とりあげてみました。
(発表資料)http://bit.ly/q4yphB
この報告は、訴訟和解によって1998年に公開されたタバコ業界の内部文書の分析に基づくもの。それらの文書を検証した結果、研究チームは「タバコ業界が、1959年にはすでにタバコに含まれる放射性物質の存在に気づいていた」と指摘。さらに「喫煙者の肺における癌性腫瘍の可能性について認識していただけでなく、タバコの煙から放射されるイオン化したα粒子について、肺での長期的放射線吸収線量を推定するために、定量的な放射線生物学的計算も行っていた」としています。
Karagueuzian氏らの報告の要旨は次のようなものです。
以上、当ブログのメインテーマである再生可能エネルギーとは直接関係しませんが、放射線内部被ばくの問題を考える上でも興味深い記事だったため、とりあげてみました。
(発表資料)http://bit.ly/q4yphB
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