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北海道の男性、たった一人で「東電原発差し止め訴訟」―東京地裁が肩透かしの棄却

田中龍作ジャーナル
北海道の男性、たった一人で「東電原発差し止め訴訟」―東京地裁が肩透かしの棄却
入廷する前川宗廣さん。敗訴を覚悟しながらも次の戦いに闘志をたぎらせていた。(29日、東京地裁前。写真:筆者撮影)
29日午後、東京地裁520号法廷。「原告の訴えを棄却する」、志田博文裁判長が蚊の鳴くような声で判決を言い渡した。たった一言、わずか2〜3秒だった。北海道のオッチャンがたった一人で、国家をも支配下に置く東電相手に起こした「原発運転差し止めの訴え」は認められなかったのである。

訴えていたのは、北海道北広島市で仏壇販売業を営む前川宗廣さん(62才)。訴状によると原告・前川さんは次のような理由で東電・福島原発(第一、第二とも)の運転停止を求めていた――

3月11日、東北地方を襲った大地震と大津波により東電福島第1原発で高濃度放射性物質の流出を伴う原子力事故が発生し、大気、海水、地下水を放射能汚染した。日本の食品や水道水をも汚染したのである。東京電力は最悪の事態を考えずに運転を始めた。運転を再開すれば再び重大事故が発生する恐れがある。

前川さんの訴えに対して東京地裁の下した判決がふるっている――

福島第一原発の1〜4号機は廃止することが決まっている。5号機、6号機、および第二原発は冷温停止状態にある。将来に渡って運転再開の見通しは立っていない。
(したがって)被告(東電)が運転を再開して原告(前川さん)の生命・身体等に被害が生じる危険が切迫しているものとは解されず、原告の主張は採用することができない。

ものの見事な肩透かしである。屁理屈としかいいようがない。ホトボリが冷めて東電が運転再開したら、どうするのだろうか。

見過ごせないのは、志田博文裁判長が被告(東電)の主張と同じ文言を使って判決文を書いていることである(コピー&ペーストはしていないだろうが)。支援に入った弁護士は「(後々面倒になる部分は)判断を示さなくて済むようにうまく逃げた」と分析する。

原子力安全保安院の西山英彦審議官(当時)に老朽化した東電原子炉の使用期限の延長を認めた理由を聞いたことがある。西山審議官の回答は、東電の申請書に書かれていることを口写しに再現したものだった。保安院はここまで東電に隷属しているのか、と驚いたのを覚えている。

判決文は裁判所までもが保安院同様、東電の下請に堕してしまったことを示すものだ。

控訴するのか。前川さんは「(支援の)弁護士と相談して決めたい」と話す。

前川さんは最近、東電株を100株購入した。株主代表訴訟を起こし、東電の責任を追及するためである。前川さんの視線は次の戦いに注がれていた。

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