内部告発サイト「ウィキリークス」が9月上旬に全面公開した米国の外交公電約25万点の中に、熊本を含む九州の行政や企業に絡む情報も含まれていたことが29日、分かった。原発政策や米艦船の寄港問題などに関し、私見を含めた踏み込んだコメントもある。
米国の外交公電約25万点を全面公開した「ウィキリークス」のウェブページ
ウィキリークスの公開文書のうち、在福岡米国領事館(福岡市)が本国政府などに送った公電を分析した。
2006年2月の電文では、九州電力が玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)で計画していたプルサーマル発電に関し、「科学が地元を説得しなくても、金が説得するかもしれない」との表題で、協力金などを得ている立地自治体が受け入れる見通しなどを報告。
さらに、日本政府と電力業界が九電のプルサーマル計画に期待を寄せていたことや、原発に隣接する唐津市が市町村合併で力を持ったことで「中央集権の日本においても東京の当局や有力企業は、もはや自分たちがすべてを牛耳ることはできないと悟りつつある」と分析している。
また、06年2月、米海軍イージス艦の長崎市への寄港に関しては「知事や市長は寄港に反対だが、寄港の大局的目的や相互利益に理解を示し、支持する政界・経済エリートもいる」としている。
06年4月の公電では、熊本県が制定した大型店の立地ガイドラインに触れ、「単に郊外店に制限を課すだけでは都市部の再生にほとんど効果がない。むしろ中心市街地のあり方について発想の転換が必要だ」との見方を示している。
公電の内容について、在日米国大使館(東京)は「流出したとされる機密文書といわれるものを含む資料内容や真偽についてコメントしない」としている。
山梨県立大学の山本武信教授(メディア・国際関係論)は「流出文書は国家間の関係に影響を与えてきたが、今後、機密性の高い情報が明らかになれば、情報統制の動きなど、国内政治や地方自治体にも影響が広がる可能性がある」と指摘している。(井上直樹)
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