ガラパゴスであることに自信を持つべき
日本が持つ強みは、CEATECの展示からも見えてくるように、他国の一歩先を行く先進的な技術にあるといえよう。そして、こうした先進技術を下支えしているのは、キャリアの垂直統合によるサービスの一体感と利便性、そして高度な技術やインフラ、サービスを受け入れ、熱心に携帯電話を利用するユーザーの存在という、日本ならではの要素であるはずだ。
例えば、先に紹介した行動支援や映像関連の技術などは、インターネットやGPS、ワンセグといった高い機能を備えた携帯電話を日常的に駆使しているユーザーが多く存在しなければ、技術開発にゴーサインが出ることは考えにくい。
無論、KDDIの伊藤氏の指摘にもあるように、他国の企業からもたらされる要素をかたくなに否定するのではなく、受け入れ、学んでいく姿勢も必要だ。
例えばiPhoneのタッチパネルを使ったインターフェースは非常に先進的で充実しており、それを研究して取り入れる姿勢は重要である。だがサービスの利便性という意味でとらえれば、設定不要で、すぐネットやメールが利用でき、PCを使わない人にまでネット利用を普及させている、日本のモバイル・インターネットサービスに軍配が上がる。そうしたメリットをあえて捨てる理由はないだろうし、インターネットのケータイ化が進む今後を考えれば、日本のモバイルインターネットが持つノウハウを従来より生かすことができるはずだ。
「ガラパゴス」は決して他の国に劣っているわけではなく、むしろ他国がついて来ることができないほど進化した、優れた特徴であるはずだ。であるにもかかわらず、我々はそのことを「海外でうまくいっていない」「オープンでない」という理由であまりに卑下してはいないだろうか?
以前ワイヤレスジャパンの講演において、ソフトバンクモバイルの松本哲三副社長がキャリア中心である日本のエコシステムについて「欧州のキャリアは日本をうらやんでおり、その動向に注目している」と話しているように、海外では逆にそれらを評価する向きもある。我々は「ガラパゴス携帯」であることにむしろ自信を持つべきであり、外国企業の動向に対し安易に「右にならえ」とするのではなく、ガラパゴスの良さを認識し、そこから生まれる「ガラパゴスペンギン」達を売り込んでいくことこそが、日本の携帯電話産業を強くしていくことにつながるのではないだろうか。