講演から感じる「ガラパゴス携帯」批判への疑問
そしてもう一つ、今回のCEATECで非常に記憶に残ったのは、2日目に行われた講演である。NTTドコモの辻村清行副社長は、日本の携帯電話契約者の約90%がモバイルインターネットを利用し、約80%が3Gに移行していると、その先進性について説明。そして今後の携帯電話の進化は、「インターネットのケータイ化」によって起こるとし、インフラの高速化、リアルとサイバーの連携、グローバル化がそのカギになると話した。
一方、KDDI代表取締役執行役員副社長の伊藤泰彦氏は、日本の携帯電話産業はその先進性と得意分野を生かして高機能端末を作り続けることが競争力につながると説いた。その一方で、最初から相当の完成度を求めるのではなく、欧米のようにβ版としてサービスを提供することを受け入れ、ユーザーからのフィードバックを得て、新しいサービスを作り上げることを許容するべきとの意見を述べている。
これら一連の展示と講演から感じたのは、「ガラパゴス携帯」という批判に対する疑問だ。
日本の携帯電話は、インフラ、性能共に非常に高度に進化しており、それを使いこなすユーザーが多数存在し、文化をも生み出すなど非常に先進的である。だが一方で、そうした状況は海外の携帯電話事情と大きくかけ離れており、キャリア、インフラ、端末などすべてにわたって日本の企業が存在感を全く発揮できていない。これを、外部から隔離された状況で生物が特異な進化を遂げたガラパゴス諸島に例えて「ガラパゴス携帯」と表し、海外で競争力が弱まっている日本のIT産業の象徴とされることが多い。
だが、今から海外に合わせる形で海外市場攻略に取り組んだとしても、既に大きな勢力を有するノキアや、安さを武器とする中国メーカーなどに飲まれてしまう可能性の方がはるかに高いと言えるのではないだろうか。かつて中国市場で積極攻勢をかけたものの、端末数を増やすことを重視したことでメーカーとしての一貫した個性を発揮できず、低迷して撤退を余儀なくされたNECの例がそれを物語っている。
一方、今年に入って中国市場に進出したシャープは、AQUOSケータイの先進性を強くアピールした戦略をとっているが、それには元々日本で販売されていたシャープ製端末がそのまま中国に流れ、人気を博していたという事情が大きく影響したといわれている。こうしたことからも、海外で戦うには、むしろ日本が持つ強みを生かした展開が重要だということが理解できるのではないだろうか。