東京電力福島第1原発事故の損害賠償財源確保に向け、東電の資産査定などを行う政府の「経営・財務調査委員会」(委員長、下河辺和彦弁護士)は28日、第9回会合を開き、東電のリストラ策などを盛り込んだ調査報告書の内容を固めた。東電のグループ従業員約5万3000人(今年3月末)の約14%に当たる7400人を14年3月末までに削減すべきだと明記。企業年金の減額なども求めるが、これらのリストラを行った上で電気料金を10%程度値上げしても、原発が全基停止すれば資本不足に陥る懸念があるとした。
リストラ策は東電と事前調整しており、東電は10月下旬をめどにまとめる「特別事業計画」に盛り込む方針。人員削減のほぼ半分は東電単体で行い、従業員約3万7000人の約10%に当たる約3600人を求めた。また不動産やグループ会社など整理・売却すべき資産のリストを作成し、資産売却などで6000億円規模の資金捻出を求める。
東電は当初、人員削減を新卒採用中止などで対応する考えだったが、希望退職などの導入で加速させる。ただ、発電事業に影響しないようにするため、資産売却は東電のリストラ案からの大幅上積みが難しいと判断した。
一方、電気料金は必要な原価を転嫁できる「総括原価方式」だが、必要以上のコストを原価に計上しているとして改善を求める。企業年金については現役、退職者とも支給額を減らすよう要請する。
原発の稼働率に応じた今後10年の収支状況も複数パターンで試算した。原発が全基停止した場合、火力に切り替える燃料費が年1兆円規模でかさむため、4兆円規模と見込まれる福島第1原発事故の賠償や廃炉費用と相まって経営を圧迫。電気料金を10%程度上げても、資本不足に陥る懸念があるとした。
調査委は10月3日にも野田佳彦首相に報告書を提出。東電は報告書をもとに、原子力損害賠償支援機構から資金支援を受けるのに必要な特別事業計画を策定する。【宮島寛、野原大輔】
毎日新聞 2011年9月28日 21時22分(最終更新 9月28日 21時45分)