コラム  
中島大輔
スポーツナビ

日本はなぜ「現在のWBC」に出場できないのか!? (2/2)
選手会顧問弁護士が語るWBCの実態

2011年9月29日(木)

■韓国選手会も同じ意見「日韓が出ないとなると…」

新井会長(左から2人目)を中心に改善を求めるプロ野球選手会
新井会長(左から2人目)を中心に改善を求めるプロ野球選手会【写真は共同】

 過去2回、日本は連覇を果たした。「交渉のタイミングは今しかない」と石渡氏は主張する。
「日本からのお金が来ないとなると、大会運営は相当厳しくなります。実は、韓国の選手会も日本と同じ意見を表明しています。日韓両方が出ないとなると、どうなるでしょうか」

 WBCIは参加への返答期限を9月30日としたが、それも一方的な要求だ。
「日本人は脅せば、ぐらぐらすると思っているのでしょう。しかし、お話ししたような状況では、出場したくても、残念ながら出場できません。もし出場しないことになると、ファンはガッカリするかもしれないですね。でも、こういうことが背景にあるとちゃんと説明すれば、分かっていただけると思います」

 すでに各メディアで報道されているが、第3回大会への参加返答は、オーナー会議の行われる10月7日以降にずれ込む可能性もあると見られる。他のスポーツの国際大会と比べても、一般常識的にも考えても、代表スポンサー権とグッズ収益権を求める日本の主張は筋が通っている。

■日本のプロ野球の「価値」を未来のために

 石渡氏はプロ野球選手会の姿勢についてこう説明する。
「選手たちはある意味、プロ野球の未来を考えて主張しています。日本代表は日本の野球の価値がダイレクトに現れたものです。ここから生まれる資金はサッカー協会で行われているように、日本の野球全体のために使われなければなりません。
 プロ野球がより発展するためというのはもちろん、育成などアマチュアとの関係でも使われるべき資金でしょう。日本の野球ではなく、MLBのために使われるなんてことを妥協して受け入れてしまえば、その先何十年という後悔を生んでしまいます。選手はそれを理解して今回の方針を決めたのです」

 これは個人的な見解だが、WBCIが日本の条件を飲まず、第3回大会出場を見合わせることになっても、それは仕方がないと思う。譲歩して、当然の権利を受け渡したまま出場するよりは、はるかにマシだ。
 プロ野球選手会とNPBには、妥協せず、徹底的に戦ってほしい。

<了>

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中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球、サッカーを取材し、『日経産業新聞』『週刊プレイボーイ』などに寄稿。野球専門誌『Baseball Times』の西武担当記者としても活動中。11年6月、初の著書『人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず』(双葉新書)を上梓。

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