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満蒙の土:1部・開拓民の記憶/10 分村 原住民の農地を買収 /長野

毎日新聞 9月23日(金)13時28分配信

 ◇キャベツやネギ、ニンジンを首都・新京に送った。みんな希望にあふれ、夢を持ってやっていたんだに−−豊丘村・久保田諫さん
 豊丘村(旧河野(かわの)村)出身の久保田諫(いさむ)さん(81)=同村在住=は1944年5月、14歳で家族と別れ、単身で旧満州(現中国東北部)の石碑嶺(せきひれい)河野村開拓団に加わった。希望の開拓地は翌年の敗戦を境に一変。日本軍は敗走し、残された女性や子供が中心の団員約70人は集団自決の道を選ぶ。生存者の一人、久保田さんに悲劇の実相を聞いた。
    ◇
 7人兄弟の次男だったので、家に残るわけにはいかず、学校の先生に勧められて兵隊の試験を受けたが、苦手な学科があり失敗。軍需工場にでも行こうかと思っていた矢先、石碑嶺河野村開拓団の市沢薫一・副団長に「満州の土になるつもりで行ってくれないか」と誘われたんだ。一晩悩んで行くことを決めた時、父親は「行け、行け。『口減らし』(家計の負担を減らすために家族の人数を減らすこと)にもなるし」と全然反対はしなかった。
 <河野村を分割して満州に移民する分村移民団27戸計約100人が石碑嶺河野村に移住した。農地は日本の国策会社・南満州鉄道などが出資した満州拓殖公社が、現地の農民から半ば強制的に安価で買い上げ、移民団に分譲した。用地買収作業は日本の関東軍が担った>
 開拓団というから荒野を耕すのかと思ったら、既に耕作地があったんだ。実態は、原住民のものを日本が安く買収して、住んでいた家からも原住民を追い出した。でも、その家に開拓団の家族が住んだんだが、敗戦まではトラブルはなかった。
 俺は開拓団の中で一番若い団員だったが、大人に「負けんように」って一生懸命やったよ。日本でも農作業をやっていたし、馬の扱いにも慣れていたから。団員には学校に通ったりして東京に長く住んでいた人も居たけど、俺の方がよっぽど手際が良くできていたつもりだ。
 作物はキャベツやネギ、ニンジンなどを作っては満州国の首都・新京(現長春市)へ送っていたんだ。メロンも作っていたが、あれはうまかったな。甘くて。その頃はみんな希望にあふれていて「農閑期はシベリアに旅行に行こう」とか「立派な家を建てよう」とか、夢を持ってやっていたんだに。
 <分村移民した国内の河野村は、国の補助金を優先的に得られる『皇国農村』の指定を受けた>
 村の農道は狭く、人や馬が歩ける程度で、農作業の効率化が課題になっていたんだ。分村で開拓団を出す代わりに国から皇国農村の指定を受けて、補助金でリヤカーが通れるような農道を整備した。
 胡桃沢盛(くるみざわもり)村長(当時)も悩んだ末の決定だと思うが、村の農業を、農道整備と人口の減少で効率化しようということだったんだろうな。農道ができると、近隣の村に非常にうらやましがられたんだよ。
 <しかし、戦況は悪化。当初、召集されないはずだった満州の男性開拓団員の軍への召集も始まる。1945年8月15日朝、開拓団で最後に残った適齢(18歳以上45歳未満)の男性5人が出兵し、戦地に向かった。数時間後の同日正午、国内で昭和天皇の終戦の詔書(玉音放送)が発布され、日本の降伏が国民に伝えられる>
 15日の朝には副団長や、学校の校長先生ら5人が召集された。村に残る男は高齢の筒井愛吉団長(67)と、耳が不自由な中川好一さん(25)、少年の俺だけになってしまった。
 他は女や子供が70人を少し超えるくらい。出兵して数時間がたったころ「日本が無条件降伏で負けた」って、近所の別の開拓団から知らされた。敗戦と同時に、村から約12キロ離れた新京では中国人たちによる暴動が始まったんだ。【満蒙(まんもう)開拓団企画取材班】=つづく

9月23日朝刊

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最終更新:9月28日(水)14時31分

毎日新聞

 

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