原子力発電所のテロ対策を検討した、1997年の政府の内部資料が明らかになった。侵入者が配管設備を破壊し、放射性物質を外部に放出させる事態も想定したが、結論としては「何重もの安全対策が講じられている」として原発の安全性を強調。これまで対策に生かされなかった。
資料は当時の科学技術庁と通商産業省が作成。橋本龍太郎首相のもと、97年9月に首相官邸で開かれた安全保障会議(首相や関係閣僚らで構成)の議員懇談会で配られた。「極秘」に指定されており、討議後に回収された。
不審者が原発の建屋に侵入した場合に、(1)核燃料物質の持ち出し(2)放射性物質の外部放出――といった行動をとる危険性に言及。放射性物質を外部に放出する手段として「配管設備の破壊」や「原子炉の恣意的(しいてき)な運転操作」を挙げた。
一方で「主要な配管が存在する格納容器は堅牢な構造で、不審者が入ることは困難」「侵入し、配管を切断した場合も、放射性物質が直ちに建屋外に放出されることはない」と説明。仮に不審者が中央制御室を占拠した場合でも「遠隔操作により原子炉の運転を停止できる」と結論づけた。