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外国籍生徒らの高校入試 「配慮」手薄な京の公立高 地域報道部・松田ゆい
親の国際結婚や仕事の都合で来日した外国籍の子らが、京都府の公立高の受験で高い壁に直面している。日本語の力不足を考慮して受験時間を延ばしたり、受験科目を変更するといった「配慮事項」が、京都は全国で最も遅れており、定時制や私立校へ進路を変更したり、中には進学そのものを断念してしまう子どももいる。 京都で暮らす外国人、特に近年増えている在日中国人の姿を伝えようと、7月に市民版で「朋友」と題した連載をした。取材中、公立高の受験の壁にぶつかる生徒と、何とかしてあげたいと奔走してきた教員に何人も出会った。 両親が京都市伏見区で中華料理店を開く関西大3年の張敏(ちょうみん)さん(21)もその一人だ。小学3年の時、「ありがとう」の言葉一つを教わって家族と来日し、学校の日本語教室の先生たちに支えられながら語学の力を付けてきた。「親に面倒をかけたくない」と公立高への進学を希望した。両親は働きづめ。午前3時に起き、夜まで食品加工や部品検査の仕事に出かける母親のことが心配だった。ただ、国語と社会の科目がどうしても伸びず、最終的に、海外帰国者が多く、授業料が比較的安いと思われた中京区の私立高に進んだ。 中国出身の子らが多く学んでいる南区の鳥羽高定時制で長く教えた朱雀高定時制の内田順子教諭は、「日常会話と学習言語は大きく異なる。数学や英語は優秀でも、高い日本語能力が求められる国語と社会の科目が苦手な生徒は少なくない」と指摘する。 外国籍の生徒への対応が手厚いとされる大阪府教委では、五つの公立高の学力検査の科目を作文と数学、英語のみに絞り、作文は外国語での記入も認めている。試験時間は通常の1・3倍あり、辞書も持ち込める。「生徒が日本で学ぶことになったのは本人の責任ではない。最低限就学の機会を提供しようというのが基本姿勢」と大阪府教委高等学校課の大久保宣明さん(47)は語る。 翻って京都では入試の際、中国帰国孤児生徒の特別選抜を除いて一般の外国籍の生徒らへの配慮はなかった。京都府教委によると、全く配慮がないのは2010年度で6府県のみだった。今年3月に、府外国籍府民共生施策懇談会から改善を求める報告書が提出され、ようやく来年度の入試から、問題文の読み仮名を付けることと10分間の時間延長を導入することになった。 教員らでつくる「渡日・帰国青少年(児童生徒)のための京都連絡会」は、「一歩を踏み出したのは喜ばしいが、ルビと時間延長だけで生徒が救済されるかどうか。大前進とは言えない」と語る。 「勉強ができないわけじゃない。日本語ができないだけ」。連載で、鳥羽高定時制の受験を断念して働き始めた姿を紹介した藏妍(くらえい)さん(16)=宇治田原町=の言葉が胸に残る。もちろん、進学後も言葉の壁はついて回る。ただ、一度公教育を離れてしまうと、日常会話以上の日本語や知識を、腰を据えて得ることは難しくなる。日本で暮らす彼らが社会の中で孤立しないよう、入学後の支援も含めて、学べる仕組みをもっと増やしてほしい。 [京都新聞 2011年9月28日掲載]
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