■障害者保護の制度不足
障害者を保護する法的、制度的な仕組みが不足していることも問題視されている。対策委のキム・ヨンモク常任代表は「インファ学校事件の裁判で、性的暴力の被害者が聴覚障害者だったにもかかわらず、抵抗できない状態だったとは認められなかった。体が不自由な人に比べれば、抵抗する力があると判断された形だ。声を出せないことが、危機的状況でどれだけ大きなハンディキャップになるかが認められないのが韓国の法律の現実だ」と語った。キム代表は障害者に対する性的暴力を加重処罰する方向で法律を見直し、量刑基準を示す必要があると訴えた。
現行の社会福祉事業法で、行政機関の管理監督権が及ばないことも、障害者に対する人権侵害の主因として挙げられている。対策委のパク・チャンドン執行委員長は「映画『るつぼ』を見て、過去の性的暴力事件の真実を知ることも重要だ。しかし、それでは過去形にすぎない。子どもたちも保護者も事件を公にすることでつらい思いをする。なぜこのような問題が繰り返されるのかを考える必要がある。現行の社会福祉事業法には、福祉法人を監視、けん制する仕組みがない」と指摘した。パク委員長は「社会福祉事業法と私立学校法を改正しなければ、映画『るつぼ』のような事態が後を絶たないだろう」と訴えた。
■障害者に対する無関心
しかし、障害のある生徒の苦しみは、健常者による偏見と無関心が原因だと専門家は指摘する。
昨年、障害を持つ娘が性的被害を受けたと通報してきた母親は「障害者とその保護者は、ひどい被害を受けても、対抗できずになすすべがないのが実情だ。悔しくて憤りの余り、じだんだを踏んで嘆く障害者の親がどれだけ多いか分からないはずだ」と訴えた。
被害を受けた娘は、深刻な精神的不安や異常な行動を示し、指をかむために、傷ついた指ばかりだという。それでも娘は「恨みを晴らしてほしい」と訴えているという。母親は「最近『共生』とはいうが言葉だけだ。障害者だと言えば、不利益を受けるケースがはるかに多い。外出時に、娘が障害者だと気付かれないようにするのが大変だ」と話した。