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2011年 9月 5日(月)放送
ジャンル経済 国際 社会問題

超円高に立ち向かえ

 ~海外進出の新戦略~

(NO.3089)

内容紹介

 
 

1ドル76円台。「超円高時代」を迎え大きな打撃を受ける日本のモノ作りが、海外進出を加速させている。懸念され続けてきた国内の空洞化。しかし今、これまで海外進出を躊躇してきた中小企業が、この海外進出を成功させることで、逆に日本の雇用を守ろうと新たな将来像を描き始めている。韓国企業などとの取り引きを入り口に、世界に販路を拡大、そこで収益を増やすことで国内工場での生産や技術開発を進めて雇用を守ろうというのだ。中小企業が新たな生き残り策を作ろうと苦闘を続ける現場を取材して、日本が超円高を乗り越えるカギはどこにあるのか考える。

出演者

  • 真壁 昭夫さん(信州大学経済学部教授)

出演者の発言 番組中の出演者のコメントを掲載!

【スタジオ】

●今回の円高で、中小企業は今?

>>かなり厳しいですね。
今回の局面っていうのは、円高というのが史上最高レベルですから、これ自体厳しいですよね。
それと今までずっとコストを削ってきましたから、これにも限界がある。
そうすると、国内で生きられる、中小企業の場合には、多くの場合で隙間、ニッチといわれてる部分ですね、ここで生きられる企業はいいですけども、もしそうでないとすると、やはり海外に出ていくという選択肢というのは、これ、避けて通れないですからね。
そういう意味では非常に厳しいところまで追い込まれているというふうには言えるでしょうね。

>>もうひとつ、新興国、特に中国とか台湾とか、それから韓国ですね。
こういう企業が、日本の企業をずいぶん追いかけて、分野によってはひょっとしたら同じぐらいまでいってるかもしれない。
そうすると、技術の比較優位性というのは、以前ほど高くないですから、そうすると、海外に出てもかなり厳しい状況になるということは考えられますね。

>>中小企業っていうのは一般的にいうと、大企業の下請け、ないしは孫請けというケースが多かったですね。
そうすると、国内に大きな工場がある場合には、受注が来る可能性は高いですから、それほど大きな変化がなければ、自然と受注が受けられる。
ところが海外ですと、工場自体が海外に行ってしまいますから、部品の納入メーカーも日本の企業だけではないですよね。
そうすると優位性がない、差別化されない、つまり同じようなものですと、コモディティ化といわれてますけど、そういうものですと、価格競争に巻き込まれますね。
価格競争ですと、日本の国内で作っていると、競争力がなくなりますよね。

●海外進出か否か、悩んでいる企業はどのように判断すればいいか?

>>まず、現状認識というか、今、自分たちのいるところを冷静に判断することが必要だと思います。
まず2つあると思うんですけれども、1つは自社で生産している製品に比較優位性、つまりほかの国でできない技術が含まれている。
あるいはほかの国で作ることができないものかどうか、これが1つですね。
もう一つは、需要が拡大しているかどうか。
市場が大きくなるということは、それだけパイが広がるわけですから、そこに参入したときに生き残れる、あるいは勝てる、あるいは事業を拡大できる可能性が高いわけですから、そこをやっぱり自分なりに、冷静に判断する、これがまず最初、必要なことでしょうね。

>>チャンスがあるということはその裏側にリスクがあって、リスクとチャンスを自分なりに判断をして、これにかけるべきだと、これが大丈夫なんだ、要するにリスクに見合ったそのリターンが本当に取れるのかどうか、そこが最大のポイントだと思います。

●自らの判断で海外進出し、雇用や技術を守ることができた中小企業も出てきている。

>>これは非常に顕著なモデルのケースだと思うんですね。
まず、海外に出ていって、そして販路を広げて、しかも海外のパートナーとウィン・ウィン、つまり両者にとってプラスですよね。
それで上がった収益で、国内の雇用を維持し、しかも最大のポイントは、新しい製品、次の商品を考えてる。
ここは経営者として非常に優位性のある、これが実行できるというのは、なかなか立派な経営者だと思いますね。

>>新商品の開発とか技術の開発っていうのは、かなり理屈でない部分があるんですよね。
要するに、いろんな感覚だとかそういうものがありますから、やはり需要者が何を求めているのか、それは肌で感じ、あるいはそれを自分で触ってみることが必要だと思いますから、それをしてるっていうことは、非常に重要なことだと思いますね。

●韓国に進出することで、FTAの恩恵や価格競争力を得ていることについて。

>>そこが実は残念なところでね、韓国ができて、日本にいる企業が、日本国内でそういう環境が得られないというのは残念ですよね。
日本の場合には、三重苦だとかあるいは六重苦だとかということがよくいわれます。
円高やそれから法人税の負担、それから電力の安定供給だとか、こういうところに不安があるといわれてるんですけれども、少なくともそういうものを新政権なり、政治なりが一つずつ一つずつ要するに解きほぐしていって、実力を十分に発揮できるような環境作りをすることが必要だと思うんですね。
企業を強くするのは経営者の仕事だと思うんですけど、その環境を作るというのは、やはり政治の仕事であったりしますよね。
そこがやはり意識を持ってほしいというところですね。

●海外から、生産拠点を移して欲しいという誘いもあると聞く。

>>かなり多く来ているというふうに聞いていますね。
ですから、日本の例えば政治が、それを指をくわえて見てるのではなくて、できることから少しずつ少しずつ、とにかく実行に移していくということが必要だと思いますし、今の日本ですとね、それができると思うんですよね。
特に企業が、まだ技術に優位性を持っている。
つまり海外から誘致の誘いを受けるということは、それだけ優位性があるわけですよね。
したがってそれがある間に、政府なり、政治がそういう環境を整えてやることによって、中小企業が本当の実力を出すことができれば、日本の経済というのは私はまたアップトレンド、上昇過程に入っていける可能性は、わたくしは高いと思ってるんですけどね。