1972年の沖縄返還の際に日米政府が交わした「密約」をめぐる情報公開訴訟の控訴審で、東京高裁(青柳馨裁判長)は29日、文書の開示を国に命じた昨年4月の一審・東京地裁判決を取り消し、改めて原告側の訴えを退ける逆転判決を言い渡した。
国側は控訴審で「文書は見つからなかった」とする外務省や財務省の調査結果を新たに証拠として提出し、これらをどう評価するかが控訴審の焦点だった。
青柳裁判長は、返還交渉の結果として国側がかつては文書を持っていたと認めたが、いずれかの時点で破棄した可能性があると指摘。「両省による調査の信用性は高く、国が文書を保有し続けているとは認められない」と述べた。
問題とされたのは、沖縄返還にあたり、日本が(1)協定で決めた3億2千万ドルよりも多い財政負担をする(2)米軍用地の原状回復費400万ドルを肩代わりする(3)米政府の宣伝放送施設の移転費1600万ドルを肩代わりする――とした一連の密約文書。一審判決は密約成立の背景として「日本政府は『米国から沖縄を金で買い戻す』という印象を持たれたくないと考えていた」と指摘していた。