2011年9月28日 15時3分
名古屋高裁金沢支部に再審請求が出されている86年の福井女子中学生殺害事件で、一貫して全面否認している前川彰司さん(46)の「自供調書」が存在することが、再審弁護団への取材で分かった。シンナー中毒で自我を失った状態にあったと仮定して、前川さんに犯行を再現させた異例の内容。本人の署名・押印はなく、裁判の証拠にはならなかった。前川さんは取材に「空想で話せと言われた」と証言しており、弁護団は「誘導や強引な取り調べを示すものだ」と福井県警の捜査を批判している。
この調書は、精神鑑定のための留置が認められる前日の87年4月17日付で、当時の福井署巡査部長が作成。冒頭「当時はシンナーを吸って現実と空想の間をさまよった状態で異常だった。現実と空想の中を行き来していた中で起こしたのではないかと不安がよぎる」と記載されている。
前川さんが面識がなかったと主張している被害者との関係については「紹介されれば、会う約束を取り付けたと思う」と想像。自宅を訪ねたが、「警察呼ぶで」などと言われたことに激高し、相手が持ち出した包丁を奪って刺殺、ぞうきんで指紋をふき取るなど証拠隠滅の様子まで詳細に再現していた。ただし、全てが「--されれば」という仮定に立ち、被害者を知った契機▽被害者とのやり取り▽殺害や証拠隠滅の状況といった「事実」についても「--していたと思う」と空想した内容だった。【宮本翔平、橘建吾、酒井祥宏】