この記事は、「コンピュータプログラムをハックして自分の思い通りに動かす」のと同じ要領で、「会社組織の意志決定メカニズムをハックし、自分の狙いどおりの意志決定をさせる」技術についての解説です。
ライフハックならぬ、会社ハックです。
この記事では、例題として「会社の意志決定メカニズムを操作して、自分が上げた成果を高く評価させ、昇給・昇進させる」というケースを取り上げましたが、就職、転職、法人営業にも応用できる政治技術です。
就職や転職とは、「相手の会社組織の意志決定メカニズムを操作して、自分を採用するという意志決定をさせる」という政治ゲームのことだし、法人営業とは、「お客さんの会社組織の意志決定メカニズムを操作して、自分の会社に案件を発注するという意志決定をさせる」という政治ゲームのことだからです。
これは、あくまでちゃんと成果を上げた人が、その成果を会社に高く評価させることで、自分を昇給・昇進させる政治技術であって、ろくな成果を出していない人が会社の意志決定メカニズムをいくらいじったところで、自分を昇給・昇進させることはできませんので、誤解のないよう、よろしくお願いします。
「会社組織を意志決定マシーンとみなして、それをハックする」というやり方は、理系の方にとっつきやすい政治技法だと思われるので、「理系のための社内政治の教科書」というタイトルにしようかとも考えましたが、社内政治だけでなく、外部の会社の意志決定メカニズムを操作するのにも使える技術なので、そのタイトル案は没になりました。
この記事では「自分の人事評価を政治的に操作する」ことによって自分を昇給・昇進させる方法を解説しているわけですが、この例題を選んだのは、「政治技術を駆使して積極的に高評価・好待遇・高職位・高年収をゲットしにいく」という攻めの目的で使うためだけでなく、「成果を出したのに、会社に認めてもらえないという悲劇を防ぐ」という守りの目的で使うためでもあります。
つまり、会社組織の意志決定メカニズムのハッキング技術は、オフェンスにもディフェンスにも使える技術です。
不当に低い人事評価は、人間関係能力が低い方や腐った会社で頻繁に起きますが、後述するように、これは会社組織というものの抱える本質的な構造問題に起因するものなので、人間関係能力が特に低くない普通の人や、とくに腐ってない会社にも発生しうるものです。
人間は、いったん会社から不当に低く評価されると、会社に対する怒りと憎しみ、そして不当に高く評価された同僚への不公平感と嫉妬で頭がいっぱいになり、正常な思考ができなくなることがあります。
そうなると、ひたすら「会社は腐ってる」と思いこむばかりで思考停止してしまい、政治的効果をろくに計算せずに闇雲に愚痴を垂れ流すなど、ますます状況を悪化させるような言動をしてしまって悪循環に陥り、そこから抜け出せなくなることがあります。
実際に自分がその当事者になるまでは「不当に評価されたぐらいで思考停止してしまうのは、心の弱い人間だけだろう」と思えるかもしれませんが、特に心が弱いわけではない普通の人間でも、不当な評価を受けると正常に思考できなくなってしまうのは、よくあることです。
なぜかというと、一時的にしろ、精神的なダメージを受けて弱った心は、楽で心地よい思考を選んでしまうからです。会社の意志決定メカニズムを操作するための具体的な情報収集・戦略立案・実行、という現実を変えていく行動よりも、「全ては会社が腐ってるからだ」と決めつけて思考停止して愚痴を言ってるだけの方がはるかに楽で心地よいので、弱った心は後者を選んでしまうのです。
しかし、不当な人事評価が発生するメカニズム(後述)や意志決定メカニズムを操作する技術についての知識を持っている人の場合、たとえ不当な人事評価をされても、それが発生したメカニズムが具体的に思い描けるのでそもそも精神的なダメージは小さく、しかも、そういう状況においても、意志決定メカニズムのどこをどうやって操作すればその不当な人事評価をひっくり返せるのかの戦略をたて、実行することができる確率が高くなります。
もちろん、もともと政治センスがいい人はこの技術がなくても上手くやるでしょう。また、優秀な人の場合、政治なんかやらなくても常に周囲から高く評価されるので、そもそも政治が必要ないです。
あるいは逆に、もともと政治センスが悪い人はこの技術をいくら勉強したところで焼け石に水でしょう。また、無能な人は、いくら政治スキルを高めても、無能さを取り繕うことは無理でしょう。まるっきり無能なのに政治力だけで生き延びるのは一般に思われているよりもはるかに困難だからです。
しかし、とりたてて政治センスが良くも悪くもなく、とりたてて優秀でも無能でもない人たち、すなわち、上位10%でも下位10%でもない、正規分布曲線の中央付近の高い山の中にいる残りの80%の人たちの場合、この技術を身につけているかどうかで、運命が分岐することも多いのではないかと思います。
これが、自分の人事評価を動かす方法を例題として採り上げた理由です。
もちろん、包丁や自動車が人殺しにも使える道具であるように、これも、悪用すれば「自分を不当に高く評価させる」ことにも使える技術でもありますが、筆者としては、会社や周囲の人間とWINWINになるように使うことを推奨させていただきます。
※匿名でメダルを付与することもできます(具体的なやり方は後述)。
※この記事で取り上げた「自分を昇給・昇進させる」という例は、社員数が数十名〜数百名の比較的若くまともな会社を想定した例です。腐りきったダメ企業や、社員数が数万人の古い体質の大企業などには、そのまま使うことはできないと思います。
明確な目的もなしに、「会社の意志決定メカニズムを把握して、自在に操れるようになろう」などという野望を抱いても、すぐに挫折することになります。
それは野望というより無謀です。
なぜでしょうか?
その理由は2つあります。
1つめの理由は、会社の意志決定メカニズムは非常に複雑で、その全体像を把握するには、コストがかかりすぎるからです。
会社組織の意志決定メカニズムは、何百万行もあるコンピュータプログラムのソースコードのようなもので、その全部を把握するのは、あまり現実的ではないことが多いのです。
2つめの理由は、会社の意志決定メカニズムはオープンソースではないということです。
会社の意志決定メカニズムのコードの大部分は、オープンで誰にでも簡単にアクセスできるようにはなっていません。
ハッキングに必要な情報を入手するコストがかなり大きいのです。
では、どうするか?
基本的には、コンピュータプログラムをハックするときと同じやり方をします。
コンピュータプログラムをハッキングするとき、いちいちそのソフトウェアの設計書やソースコードを「全て」「詳細に」読んだりすることはほとんどありません。
コンピュータプログラムのソースコードの量はたいていは膨大だし、ハッキングをするのに、その全てを把握する必要などないからです。
コンピュータプログラムをハッキングするときには、たいていは、そのコンピュータプログラムに「具体的にやらせたいこと」があって、そのために必要な部分のソースコードだけを解析したり、いじり回して、ハックするのです。
会社の意志決定メカニズムをハックする場合も同じで、まずは「具体的にやりたいこと」を定めて、その目的を遂行するのに必要な部分のコードを突き止め、そこを操作するようにします。
ここでは、とりあえず、ハッキングの目的を「自分を昇給&昇進させる」ということに絞ってみます。
ハッキングの目的が定まったら、次は、その目的を達成するのに必要な情報を入手する作業をします。
コンピュータプログラムをハッキングするときは、膨大なソースコードの海の中から、目的のためにいじるべき場所がどこなのか、それを突き止める作業をします。
会社の意志決定メカニズムのハッキングでもこれは同じです。
まず、会社が「自分を昇給&昇進させる」という意志決定を作り出しているコード部分を突き止めなければなりません。
組織の意志決定というのは、さまざまなプレーヤーのさまざまな利害や感情のネットワークが絡みあって作り出されます。
前述した理由で、そのネットワークの構造の全てを網羅的に洗い出すのは、手間がかかりすぎて、現実的ではありません。
具体的な手順としては、まず、「最終決定」が行われる場所を突き止め、そこから遡る形で、その決定に影響を与えるネットワーク構造を洗い出していきます。
今回は、「自分を昇給&昇進させる」という意志決定の最終決定を行っている場所を、まず突き止めます。
基本的には、これはそんなに難しくないと思います。
人事評価シーズンに会社のグループスケジューラを見ると、会社の偉い人たちのスケジュールに、「人事評価会議」みたいな名前で、大きな会議室で、けっこうな長時間に渡って入っていると思います。
だいたい、そこで最終決定されます。
グループスケジューラを見れば、その会議のメンバーも分かります。
人事評価シーズン以前にその情報を入手するには、会社の組織図を見たり、人事の人と仲良くなって、それとなく聞き出すなどします。
いずれのやり方にしろ、この情報を入手したら、テキストエディタを開き、そのメンバーの名前をテキストファイルにメモっていきます。
次の手順は、最終決定が行われる、まさにその瞬間を、具体的にイメージすることです。
たとえば、「まさにあなたの人事評価の最終決定が下されようとしている瞬間」をイメージしてみましょう。
そこでは、どのよう力学が働いているのでしょうか?
あなたの人事評価シートはプリントアウトされて、会議のメンバー全員に配られています。
今期の分だけでなく過去2期分の人事評価シートもいっしょにプリントアウトされ、ホチキスで留められています。
また、各部署からあがってきた今期の人事評価の暫定値は、人事部がエクセルで集計し、その集計した一覧表がプリントアウトされ、それも出席者に配られています。
このため、あなたの人事評価は、同じ部署の他のメンバーはもとより、他の部署の人々の人事評価と並べられ、見比べながら評価されることになります。
そこでは、誰と誰がどのような動機から、どのような発言をし、最終的に、あなたの人事評価がどのように決定されるのでしょうか?
実は、人事評価会議では、さまざまな利害と駆け引きがあり、そこに働いている利害関係と力学を洗い出して整理しないと、どのようなメカニズムで意志決定が行われるのかを把握することはできません。
単に政治技法の手順だけ暗記しても、政治ができるようにはなりません。
政治をやろうとして空回りして失敗する人に共通するのは、政治というものの具体的イメージが貧困だということです。
たとえば前章で、「人事評価会議で働いている政治力学的要因を洗い出す」という手順があることが分かりました。
しかし、「人事評価会議で働いている政治力学的要因」と言われて、具体的にどのような情報を集めればいいのか、イメージがわきますか?
具体的にどんな情報を集めればいいかのイメージがわかないのに、その情報を集められますか?
そんな状態で無理に計画を立てても、できあがるのは机上の空論です。
まずは、「政治力学的要因」というものの具体的イメージがつかめないと、政治などできやしないのです。
なので、次に、「人事評価会議で働いている政治力学的要因」の具体的イメージがわくような例を、少しクドいくらいに列挙してみることにします。
そこを手短にすませて、政治技法の手順だけ説明するのは簡単ですが、そうしてしまうと、実戦ではたいして役に立たないと思われます。
なんとなく「自分の人事評価は自分の直属の上司や自分の所属部署のトップが決めるのだろう」と安易に考えて仕事をしていると、人事評価会議で他部署の部長や役員から予想外の攻撃を食らって人事評価を下げられてしまうことがあります。
たとえばあなたが技術者だったとすると、営業部門や企画制作部門の部長や担当役員があなたの人事評価に介入してくるわけです。
これが発生するのは、主に機能組織の会社です。
ここで、「機能組織って何?」という方のために、念のため補足しておきます。
(大学生の方も読まれるでしょうから)
一般に、会社の組織編成には、機能組織型と事業部組織型があります。
機能組織は、技術、企画制作、営業、管理などのように、職能集団別に部署が作られているような会社組織です。
事業部組織は、たとえば教育ビジネス、Webサイト受託開発ビジネス、娯楽系自社サイトビジネス、業務パッケージビジネスなどのように、ビジネス単位で部署が作られているような会社組織です。
機能組織だと、部署同士が密に連携しないと仕事ができませんので、一つの部署の人員の仕事ぶりが、他の部署の仕事に大きく影響します。
このため、他部署の役員や部長は、自分の担当する部署に迷惑をかけた他部署の人員の人事評価を叩いて下げようとするし、逆に、自分の部署の仕事がやりやすいように配慮してくれた他部署の人員の人事評価を引き上げようとするのです。
さらに言うと、あなたの上司や、あなたの所属部署のトップは、事前にそれを予測しているので、最初から他部門の部長や役員にもスムーズに認めてもらえる範囲内であなたの人事評価シートを作って人事評価会議に提出します。
つまり、他部署からの評価の低い部下の評価は、はじめから低くつける傾向があります。
そもそも、他部門の意向を無視してあなたの人事評価を独断で不当に高くしたり不当に低くしたりすると、評価者自身の政治的立場を危うくしかねません。人事評価能力が低い無能な人間か、もしくは不公平な人事評価をするようなリーダーにふさわしくない人間だと、他の役員たちにレッテルを貼られるからです。このレッテルの貼り合いは、役員同士の権力闘争の一形態です。
したがって、事前に予想される他部署の評価よりも、評価を高くしたり低くしたりするときは、他部署のトップからつっこまれても説得力のある説明をしてはね返せるように、その評価の根拠とロジックを事前にしっかり用意しておきます。
このように、人事評価というのは、他部門からの暗黙的and/or明示的な圧力のもとに決まっている部分も大きいのです。
しかし、人事評価会議の中の様子は非公開だし、直属の上司や担当役員などの面子、建前、政治的打算などによって、人事評価会議の空気がかなり歪められて部下に伝えられていることがあるので、要注意です。
自分の人事評価に与える他部署の役員の影響力を理解するには、その前提となる、役員間の政治力学の具体的イメージをある程度もっておいた方がいいと思います。
私の知る限り、会社の役員同士で、感情的なわだかまりが皆無の会社というのは、見たことがありません。
「あいつが死んだら、スッキリするだろうなぁ。でも、今あいつが死ぬと会社が困るから、上場して、オレが会社の株を売り払った後に死んでほしいな」などというような冗談を笑いながら言うのですが、目が笑ってなくて怖かったりすることがあります。
それどころか、話を聞いていると、言葉の端々から、激しく憎悪していたり、心底嫌い抜いていたり、いつかチャンスがあったら徹底的に潰してやろうと思ってることがひしひしと伝わってきて、「これはよっぽどだなー」と思うことがあります。
そうなってしまう原因は会社によって千差万別ですが、ある種のパターンみたいなものはあります。
たとえば、役員Aは「社外との交渉において、相手に騙されないようにする」ということに対してだけ、高度な政治能力を発揮しますが、相手を積極的に騙したりするようなことはせず、むしろ、人柄の良さを武器に、社外との大きなアライアンスをまとめたり、大型案件の受注を成功させたりします。
そして社内に対しては、基本的には他の役員を仲間だと思って信頼し、いやらしい政治的立ち回りをして他の役員に責任転嫁をするようなことにエネルギーを使ったりはしません。
ところが、役員Bのスタンスは役員Aと異なり、その高度な政治能力を、社外と社内で無差別に使います。役員Bの価値観では、社内だろうが社外だろうが、常に政治的に賢く立ち回ることが正しいのであって、うかつに失敗の責任を押しつけられるのは、単に愚かで頭が悪いからであって、それは本人がバカなのが悪いという価値観なのです。
そして、社内でプロジェクトの失敗などがあったとき、役員Aはまさか役員Bが責任を自分になすりつけるとは思っていないので無防備なのに対して、役員Bはほぼ無意識のうちに責任を他人になすりつけますから、役員Aは信じていた仲間に裏切られたと感じるわけです。
しかし、役員Bは他人の手柄を横取りし、失敗を他人に押しつけるのをほとんど無意識のうちにやっており、自分がそんなことをやっているという自覚は全くありません。自分ははじめから清く正しい行動をしていただけで、うかつに失敗したときの責任を背負い込むようなことをした役員Aが愚かなだけだと考えるのです。従って、役員Bは、「役員Aに逆恨みされて困っている」と真顔で他の役員に相談をしたりすることがあり、相談された方は、どこまで本気で言っているのか、計りかねることがあったりします。
基本的に、一流の詐欺師というのは、自分がウソをついているうちに自分のウソを本当だと自分で信じてしまい、自分がウソをついているという自覚が消失し、自分を詐欺師だとも思わなくなることがよくあります。
そういう状態になっているからこそ、一流の詐欺師の目は澄んでいて、言葉には真実の響きがあり、多くの人の信頼を勝ち得ることができるわけです。騙している方も、騙されている方も、それを真実だと確信している状態が作り出されるわけです。
役員Bは、この意味で、一流の詐欺師なわけです。
しかし、役員Aは、実力で役員にまで上り詰めるほどの高度な政治能力をもった人間なので、一流の詐欺師の詐欺の構造が見えてしまうので、自分が巧妙に責任をなすりつけられたことが分かり、摩擦が起きるわけです。
このように、会社にはさまざまなタイプの役員がおり、それぞれの役員の能力タイプ・人柄・道徳観念・価値観の違いによって摩擦が起きるわけです。
もう一つの重要な点は、他人の手柄を横取りするのが上手く、失敗の責任を他人に押しつけるのが上手い役員Bのような人間は、会社に大きな利益をもたらす人間でもあるので、そういう人間が役員として厚遇されていることも多いということです。
なぜなら、そういう能力を社外に対して使うことで、ババを他社に押しつけ、自社の利益をしっかり確保することができるからです。
たとえば、他社とのアライアンスにおいては、利益のでないおいしくない部分を、「アウトソース」とか「役割分担」とか「WINWIN」という美辞麗句の元に他社に押しつけ、利益の出るおいしい部分を自社で確保します。失敗したときのリスクは全部他社に押しつけ、失敗したときも自社にはダメージがでないような契約を他社と結びます。
しかも、自社は単に清く正しいまっとうなビジネスをしているだけで、他社を騙すようなことはなにもしていない、という業界での立場も同時に獲得します。
その人の会社説明だけ聞いていると、実にすばらしい会社で、是非取引させて欲しいと、他社は思うわけです。
これは、役員Bのような一流の詐欺師だからこそできる芸当なのです。
したがって、他の役員のみならず、他の社員も含めた、会社全体が役員Bの活躍によって利益を得ている部分も大きいので、会社は役員Bのようなタイプを排除するどころか、積極的に仲間に引き入れ、高い報酬と大きな権限を与えるのです。
それは、役員Bに手柄を横取りされたり失敗の責任をなすりつけられたりした他の役員もよく分かっているので、「役員Bを憎みつつ役員Bに依存する」という構造ができあがるわけです。
もちろん、これは単に一つの類型にすぎず、一つの会社だけでも、実に様々なタイプの役員がいて、それだけで1冊の本が書けるほどです。
ここで上げたのはあくまで「意志決定メカニズムのハッキングのためには、どのような情報を取得すればいいのか」ということの具体的イメージがわきやすくするための最小限のサンプルにすぎず、実際にハッキングするときには、実際にはそれぞれの会社ごとに、自分の会社の役員たちの政治力学的な構造をある程度把握する必要があります。
ただ、会社の役員たちが「会社の利益を確保するゲーム」をやっているという点に関しては、多くの会社で共通していると思います。
感覚としては、「役員たちが協力して会社の利益を上げるというゲーム」をやっているようなものです。
役員はそんなに数が多くないので、メンバー同士の相互監視がしっかり効いています。
そして、みなで会社の利益を第一に考え、会社にとって有害な役員を排除するように行動します。
また、会社にとって有益な役員を厚遇します。
そういうゲームに専念しているのです。
なぜ、役員たちが感情的なわだかまりを捨てて、会社の利益を確保するゲームをすることに関してだけは一致団結するのかというと、その力学的構造を成立させるような、たくさんの要因に支えられているからです。
(1)役員の地位というのは一つのステータスであり、既得権益です。
一度役員の地位をゲットしたら、へまをやらない限り、そこに居座り続けることができます。
したがって、会社の利益を守るということは、その既得権益を守ることにもなります。
(2)自分の家族・親族や友人・知人に対する面子もあります。自分が役員をやっている会社が繁栄すれば、家族、親族、友人、知人にたいして、成功者の顔をすることができますが、自分の会社が傾いてしまえば、逆に憐れまれる対象になってしまい、面子は丸つぶれです。
(3)役員の中には、自分の会社の株やストックオプションをもっている人がいます。
株主なら、自分の会社の利益になるような行動をとれば、自分の利益を増やすことにもなります。
(4)会社の利益にどれだけ貢献したか、そしてこれからどれだけ貢献しそうかで、役員報酬が決まってきます。会社の利益にならないような行動をする役員は、役員報酬を減らされるどころか、役員を辞めさせられたりします。
(5)会社の利益よりも自分の感情を優先してしまうような人間は、基本的に自分の感情のコントロールができていない弱い人間だとみなされる空気が、経営層にはあります。
いついかなる時も、自分の感情に振り回されず、冷徹に計算高く会社の利益を確保しにいけるような人間でないと、会社の役員の器ではないと思われやすいのです。
(6)評判ゲームという側面もあります。会社の利益を第一に考えて行動しないような役員がいたとしたら、単にその役員はその会社から排除されるだけでなく、会社の利益のために働いてくれない役員だという評判が業界内に広まります。すると、その役員は同じ業界内で、まともな転職先が見つからなくなります。
つまり、会社の利益のために行動しないと、自分の会社役員としての自分のブランドが毀損されてしまうのです。
(7)必ずしも全ての役員が、役員同士で憎み合っているわけではありません。
憎み合っている役員同士ですら、仲間意識はあり、仲間のために頑張るという意識もあります。
(8)会社の役員は会社の利益のために行動しなければならないという倫理観と使命感を持っています。それが会社役員のモラルであり、それに違反することは不道徳なことだという感覚を持っているわけです。
このような要因から、役員たちは、感情的にすっきりしないものを抱えつつも、基本的には会社の利益を最優先して行動するのです。
このため、人事評価会議においても、役員たちは、自分の面子や自分の部署の都合よりも、基本的には会社全体の利益を優先して意志決定を行なおうとするのです。
だから、たとえ自分のお気に入りの部下であっても、他部署から見て会社の不利益になるようなをしていることが人事評価会議で指摘されて明らかになった場合、他部署の役員に対する感情的なわだかまりから他部署の役員に反発したり、自分の面子が潰されるのがイヤだからという理由で自分の部下を無理に守ったりはしないことの方が多いです。そういう場合、むしろ自分の部下の人事評価を下げることに素直に同意するどころか、積極的に下げようとすらするのです。
ここが理解できていないと、単に役員同士の感情的な対立を見て、単純にそれを利用して人事評価会議の意志決定メカニズムを操作しようとして失敗することにもなりかねないので、注意が必要だと思われます。
多くの場合、彼らは、単に感情だけでは動かないのです。
ただし、この原則が当てはまらない会社もあります。
それは、たとえば、会社がヒット商品や既得権益を持っているために、あまりシビアな企業努力をしなくても十分な利益が出ていて、かつ、会社の経営層が会社を大きくしようとか上場しようとかの強い上昇志向を持っていない場合です。
つまり、ヒット商品や既得権益の上にあぐらをかいて怠惰に安住しており、自分の会社で腐敗や非効率があっても、許容するような会社です。
その場合、社長や役員たちは、会社の利益を多少犠牲にしてでも、自分の感情や私利私欲に流されて人事を行うことがあります。
たとえば、有能だけど気に入らない人間の人事評価を低くしたり、無能だけど自分のお気に入りの部下の人事評価を高くしたりといったことです。
また、会社をもり立ててくれるけど感情的にむかつく役員を、他の無能な役員たちが結束して追い出したりすることもあります。
ヒット商品や既得権益を持っていない会社の場合、会社の利益の唯一の源泉が有能な役員と有能な社員なので、公正な人事評価をしないと、有能な役員や有能な社員が社外に流出し、利益の源泉を失って会社が倒産してしまいます。だから、腐敗が起きにくいのです。
これに対して、ヒット商品や既得権益を持っている会社だと、会社の利益の源泉がヒット商品や既得権益であるために、有能な役員や社員が多少社外に流出しても、ヒット商品や既得権益の力で利益が入ってくるため、不公正な人事をしても、会社が倒産することはないのです。
もちろん、単に、ヒット商品や既得権益が十分にある場合「腐敗することもできる」というだけで、そこで実際に腐敗するかどうかは、経営者しだいです。
そして、ヒット商品や既得権益による余裕があるにも関わらず腐敗していない会社というのは、ヒット商品や既得権益がないために公正でシビアな人事評価を「せざるをえない」会社よりも、優良な会社であることが多いです。
このため、自分の会社がどういう状態なのかによって、意志決定メカニズムのハッキング戦略を切り替える必要がでてきます。
もちろん、中には、ヒット商品や既得権益があるわけでもなく、会社にブランドやコネがあるわけでもなく、利益もろくに出てないし余裕があるわけでもないのに、気に入らない発言をした有能な社員を冷遇したり、社長と肉体関係にある社員が社内で大きな顔をしているような末期的なクソ会社もあったりするわけですが、さすがにそこまで酷い会社の場合、意志決定メカニズムをハックすることにエネルギーを使うより、普通に転職先を探すことに時間とエネルギーを使った方がよろしいのではないかと思います。
多くの社員が、人事評価会議における他部門の役員の影響力を見落としがちになってしまう原因の一つに、セクショナリズムがあります。
一般に、営業部門、企画制作部門、技術部門では、利害が対立する部分があるために、セクショナリズムが発生しやすいです。
たとえば、営業マンは、競合他社を押しのけて案件を受注しようとします。
しかしながら、たとえば技術部に出してもらった見積もりが高すぎたり、納期的に無理だと言われたりして、案件を他社に持っていかれてしまうことがよくあります。
この場合、営業マンは、なぜ、他社は自社よりも安い価格で、しかも納期に間に合うように開発できて、自分の会社にはできないのかと、自社の技術者に対して不信感を持つことがあります。
あるいは、受注には成功しても、納品してからサーバが何度もダウンして、営業マンが何度も顧客に謝りにいかなければならないこともよくあります。
もちろん、そんなことが続くと、その顧客からはますます案件を受注しにくくなります。
一方で、技術部にしてみると、かなり開発が進んでしまってから無理な仕様変更をしてきて、しかも納期は延ばせないなどという無理な要求をする顧客のせいで、長時間残業を強いられ、しかもろくにプロジェクトに利益がでないことがあります。
さらに、無理に無理を重ねているため、トラブルが何度も頻発し、さらに疲弊することになったりします。
そうなると、技術部にしてみれば、何で営業部はこんな質の悪い案件を受注するのか?もっと予算と納期に十分な余裕があり、ぎりぎりになって仕様変更を要求してくるようなことのない客から案件をとってこれないのか?と、営業部に対して不満を持つようになります。
同様の問題は、企画制作と営業、企画制作と技術部の間でも発生します。
企画制作部門が企画の細部を詰めていくには、実装や運用の実現性やコストについて、エンジニアに頻繁に相談する必要があるケースがあります。
にもかかわらず、ITエンジニアの中には、「毎晩深夜まで働くのだけど、いつも午後出社」というような極端に夜型の人がいて、企画制作部員は、エンジニアに相談しようにもなかなか時間が合わなくて、仕事がどんどん遅れてしまうことがあります。
逆に、企画制作がやたらと実装コストのかかる仕様が詰め込んできて、エンジニアが苦労して実装したのに、顧客はろくにその価値を認めなかったりして、結局、企画制作部門の独りよがりのせいで酷い無駄骨を折ることになったり。
こうして、それぞれの部署の人間は、他の部署の人間にさまざまな不満や不信感を抱き、それがしだいにセクショナリズムのようなものに発展していくのです。
そうすると、このセクショナリズム的な空気に流されてしまう社員が出てきます。
自分の部署の空気にどっぷりつかると、そこだけが自分にとっての「世間」になってしまい、その外の世界が自分に与える影響が見えなくなってしまうのです。
たとえば、営業マンが、案件を受注するためにエンジニアや企画制作に協力を求めても、「どうせろくでもない案件なんだろ」と軽視して、あまり積極的に協力しないようなケースがでてきたりするのです。
こうして、「自部門の利害ばかりにやたらと敏感で、他部門の利害にどんどん鈍感になっていく」(≒セクショナリズム)と、自部門の中での自分の評価はそれなりに高くなるものの、他部門の人員による自分の評価が下がり、他部門の人員は、協力的でないとして、その不満を自分の上司に訴えるわけです。
その不満はやがて、それぞれの部署の担当役員にまで届くことになり、次の人事評価会議において、他部署の役員から痛烈な報復を食らって、人事評価を下げられたりすることがあるわけです。
会社が「成果に対して報酬を支払う」というのは、半分はウソなので、鵜呑みにしない方がいいです。
実際には、会社は「今後成果を出しそうな社員をつなぎ止めておくため」に報酬を支払っている側面が強いです。
つまり、「過去の成果に金を払っている」というより、「未来の成果を金で買っている」側面の方が強いのです。
したがって、会社は「今期は成果を出したけど、今後は成果を出しそうにない社員」を切り捨てたいという動機を持っています。
この動機が、人事評価に影響します。
たとえば、ある特定の業界向けに開発したビジネスモデルの案件で活躍し、今期、大きな利益を出した社員がいたとします。
しかし、その業界でのそのビジネスモデルをパクってくる競合他社が雨後の竹の子のように生まれてきていて、今後はもうそのビジネスでは利益は出ないだろうと会社は見込んでいたとします。
そして、その業界の、そのビジネスモデルに必要なスキルセットというのは、他の案件ではあまり役に立たないものであったとします。
この場合、その社員を昇進させ、今後の稼ぎ頭のビジネスに配置転換したとすると、その社員は部下に的確な指示を出すことができず、成果を出せない可能性が高くなります。
このため、会社はその社員を昇進させるようなことはしたくありません。
また、その人の評価を低くして、その人がやる気をなくして転職してくれたら、会社にとってはむしろラッキーです。
つまり、その社員は、過去、会社に利益をもたらしてはくれたけど、会社としてはもう用済みなのです。
しかし、だからといって、その人の成果に対して報酬を与えないと、「成果を上げても会社は報酬をくれない。だったら、成果を上げても無駄だ」と他の社員までが思いこみ、社員全体の士気が下がってしまったら、会社としてはマイナスです。
そこで、落としどころとしては、そういう社員は、昇進もさせず、月給も上げないけど、今期のボーナスだけを高額にする、となったりします。一種の手切れ金です。
これは「他の社員に今後成果を出してもらう」ために、その社員の今期の成果に対して報酬を支払っているわけで、これも「未来の成果を金で買う」という行為の一形態なのです。
同様のことは、「大きな成果を上げたけど、鬱病になるなど、健康を害してしまった社員」にも当てはまります。
つまり、自分の健康を害してまで成果を上げても、「用済み社員」になってしまうので、「成果」と「自分の健康」の二者択一を迫られたら、たいていは成果を捨ててでも、「自分の健康」をとった方が経済合理的な選択となります。
「今期は成果を上げたけど、健康を害して今後成果を上げる見込みが低くなった社員」よりも、「今期の成果はイマイチだけど、健康なので今後は成果を上げることが期待できる社員」だったら、会社は後者を高く評価したがるのです。
もちろん、会社のために戦って健康を害した傷痍軍人的な社員を厚遇する、という側面もありますが、それは会社に余裕があるときに限られます。経営が苦しくなって余裕がなくなってきたら、会社は薄情にも「傷痍軍人」を追い出しにかかることがあります。金がなくなると、人情もなくなるのです。
この力学が働くため、たとえ今期、同じだけの成果を上げたとしても、人事評価は同じにはなりません。
したがって、「今期の成果」だけではなく、「自分が今後上げる成果の期待値」を引き上げることに注力することで、人事評価を引き上げることができるのです。とくに、ボーナスではなく、職位や基本給の部分を上げたい場合、「過去」よりも「未来」が重視される傾向があるので、そこは要注意です。
会社にもよりますが、「ボーナスは過去に対して、基本給は未来に対して支払われる」、という傾向があったりするわけです。
ついでに言うと、ストックオプションが出るような会社の場合、ストックオプションは、基本給以上に、過去よりも未来に対して支払われる傾向がありますので、ストックオプションをより多くもらいたい場合、なおさら「自分が今後上げる成果の期待値」を引き上げることに注力する必要があります。
人事評価会議における意志決定メカニズムをハックする場合、この力学がどのように作用している会社なのかは、おさえておくべきポイントです。
会社では、上の役職になればなるほど出席しなければならない会議が増え、面倒見なければならない案件が増えます。自分の部下では判断できなかった難しい判断がどんどんあがってきます。それを可能な限り速く判断してすぐに指示を与えたり、方針を打ち出さないと、現場は止まってしまいます。
それらに忙殺されるため、上の役職の人間が、部下の働きぶりを観察する時間はごく限られます。さらに、部下の数が多くなると、一人あたりに注げる注意力も少なくなります。
このため、自部署にしろ、他部署にしろ、社員の働きぶりについては、それぞれ、ごく断片的な情報しか持ち合わせていません。
さらに、上位の役職者の稼働のかなりの部分が「問題児」に奪われてしまうので、問題をあまり起こさない、「それ以外」の部下の仕事ぶりを観察する時間は、ますます足りなくなります。
「起きうる問題を事前に予測し、リスト化し、念入りに対策を打っておいたためになんの問題も起きずにスムーズにサービスインさせるような優等生」の手堅いプレーが目立たず、「事前の予測や準備が甘く、問題が起きまくった案件を、アクロバティックなリカバリプレーでなんとか持ちこたえてサービスインさせた人」のファインプレーの方が印象に残ってしまって、そちらの方が高く評価されてしまうというような奇妙な逆転現象が起きてしまうこともあります。
「もともと簡単でリスクの低い案件だったから問題が起きなかったケース」と「難しい問題と多くのリスクを抱えた案件だったけど念入りにリスクを予測し十分に準備したために問題が起きなかったケース」はどちらも「単に問題の起きなかった案件」としか見なされず、役員や部長がそれらの区別をつけられていないというのは、わりとよく見られる光景です。
それは単に上位の役職者の能力やモラルだけの問題ではなく、ただでさえ時間不足な上に、問題児案件に時間をとられすぎて、問題の起きなかった案件に目が届かなくなってしまうという構造的な問題なのです。
そして、役員や部長たちは、そのような極度の時間不足から、部下たちについてはごくわずかな断片情報しか持ち合わせていないにもかかわらず、人事評価会議で、自部署の社員だけでなく他部署の社員についてまで、一人一人の人事評価に積極的に口を出します。とうていその人をまともに評価するのに十分な情報はもっていないのに、あきれるほど自信たっぷりにその人の評価がどうであるべきかをガンガン主張するのです。
その理由の1つは、他の役員や部長が自分よりも多く情報を持っていたとしても、その価値判断が歪んでいて、自分がそのゆがみを修整しなければならないという使命感に駆られているというものです。
たとえば、営業部門の担当役員は、技術部門の役員がエンジニアについてどんなに多くの情報を持っていようとも、技術的視点だけからしか評価できておらず、その評価だけでは危ういと考えています。だから、営業的視点から、その評価にツッコミを入れて修正しなければならないと考えているわけです。
そして、技術部門の担当役員もそれを自覚していて、自分の部下といえども、自分だけで人事評価を決定するのは無理があり、他部署の役員たちがどう反応するか、顔色をうかがいながら、自分の部下の人事評価を決めているところがあります。
また、自部署の立場からがんがん発言しないと、自部署の都合を守れないという事情もあります。
企画制作部門が、企画制作部門に対して非協力的な他部署の人員を放置したら、今後もその非協力的な態度が続いてしまうおそれがあります。部署間のパワーゲームが入り込んでいるのです。
さらに、役員同士の間で、「現場をよく見ている役員」とみなされると、発言権が大きくなる空気あるので、自分がいかに現場をよく見ているかを、役員同士で誇示したがるという、役員たち自身はあまり認めたがらない理由もあります。
その結果、それぞれの人事評価会議のメンバーは、ごくわずかな断片的な情報を頼りにがんがん発言し、社員の人事評価を大きく左右するのです。
しかし、情報不足の中で人事評価を行うわけですから、結果的に間違った人事評価が行われることも多いです。
あとからそれが発覚することも、けっこうあります。
たとえば、広報部の美佐子さんの尽力によってできあがった成果だと思って美佐子さんの人事評価を引き上げたのだけど、その期の人事評価が終わって、賞与も支払ってしまった後に、実はそれを実質的に企画したのは企画部の祐子さんで、それを祐子さんと一緒に制作したのは太郎くんだったことが発覚するというようなことがあったりします。
そして、もちろん、それは氷山の一角に過ぎません。
水面下には、見落とされた社員の成果がたくさん沈んでいるのです。
さらにやっかいなのは、単に見落とされた成果だけでなく、さまざまな感情的な軋轢により、わざと水面に浮上しないようにスルーされた成果もあるということです。
ぶっちゃけ、自分の嫌いな人間の上げた成果を、上司に伝えたりはしないということです。
むしろ、意図的にその成果を隠蔽したり、たとえ上司がその成果に気がついたとしても、難癖をつけて、その成果をたいしたものではないかのようにしてしまったり、自分の嫌いな人間の些細なミスを、さも重大な問題であるかのように上司に伝える人というのも、けっこういます。
ごくわずかな断片的な情報に依存して人事評価を行っているため、このように、その断片的な情報を操作されると、人事評価に予想外に大きな影響が及ぶことがあります。
また、最初に直属の上司が記入した人事評価シートが、上司の上司に渡され、その上司の上司がそれをチェックしたり修正したりして最終的に人事評価会議に提出されるわけですが、上司の上司が忙殺されていると、直属の上司が書いた人事評価シートがかなり歪んだものであっても、それを是正することができず、他の人事評価会議メンバーも忙殺されて、その歪んだ人事評価シートの是正が最後まで行われず、そのまま通ってしまうことがあります。
このため、なんの政治的布石も打たないままだと、結果的に、直属の上司があなたの生殺与奪権を握る形になりかねないので、そこはちゃんと手を打ち、リスクヘッジしておいた方がよいケースもけっこうあります。
人事評価会議における意志決定メカニズムをハッキングする上で、ここもとても重要なポイントです。
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