東京電力福島第1原発事故による放射性物質の除染について、環境省が「年間の追加被ばく量が5ミリシーベルト(毎時0.99マイクロシーベルト)以上の地点を優先して除染費用を国が支援する」との線引きを決めたことに対し、同省が28日福島市内で開いた市町村の担当者向け説明会では反発の声が相次いだ。国は5ミリシーベルト未満の除染を基本的に市町村の自己負担としており、既に除染計画を策定した自治体からは「国は現状を知らなすぎる」と厳しい声が上がった。
国は市町村に対し、年間1~20ミリシーベルトの地域について除染計画を策定するよう求めている。環境省はこのうち5~20ミリシーベルトの地域について、家屋洗浄、表土除去、道路の路面洗浄などの「面的な除染」を国が支援するとしている。しかし県内の大半を占める1~5ミリシーベルト未満の地域については、国の支援は側溝や雨どいなどの洗浄に限り、その他は市町村の負担としている。
除染に関する国の市町村への支援枠は約1800億円。同省はこの日の説明会で「限られた予算の中で優先順位を決めた」と理解を求めた。しかし、2年間で市全域を毎時1マイクロシーベルトまで低減させる除染計画を27日に公表したばかりの福島市危機管理室の担当者は「現場の意識とかけ離れている」と怒りをにじませた。「環境省が示した基準以下の地域でも、局地的に線量が高い所がある。面的に除染をしないと低減目標に届かない」
国が基本的に面的な除染は必要ないとした年間5ミリシーベルト未満の地域についても、福島市は面的な除染を行う予定だ。担当者は「財政支援が行われるよう、国に確認したい」と話した。
除染の線引きに批判が集中したことについて、福島県を訪れていた松下忠洋副経済産業相は報道陣に「作業を始めればうまくいかない場合も出てくる。その時は相談しながら対応したい」と述べた。【種市房子、町田徳丈、結城かほる】
毎日新聞 2011年9月28日 22時07分