■ K様、T様よりの質問
1.家族とのケンカの後から、声が出なくなりました。これは病気でしょうか?どうすればいいですか?
2.普段は声が出るのに、仕事に行くと、声がでなくなります。ストレスで声が出なくなることがありますか?
(答え)
お二人の質問にまとめてお答えします。
心理的ストレスによって声が出なくなることがあります。これは、失声症(英語ではaphonia)と呼ばれています。お二人の場合には、この失声症が考えられます。
心理的ストレスがかかった場合、通常私たちは、何らかの方法によって、ストレスをかわします。ストレスがかわせないほど強い場合、そのストレスによって、無意識に身体の症状が出ることがあります。例えば、けいれん、視力低下、歩行障害、麻痺などです。無意識ですので、わざとではありません(わざとの場合には詐病といいます)。従来はヒステリーと呼ばれていましたが、最近では、転換性障害(米国診断医学会)、解離性運動障害(国際疾病分類)と呼ばれています。ストレスによる失声症もこれらの1つです。
失声症は自然に改善することも多いようです。もしも続く場合には、まず耳鼻咽喉科を受診し、耳鼻咽喉科的には異常がないことを確認する必要があります。その上で、心療内科や精神科を尋ねてみてください。
心療内科や精神科での治療は、カウンセリングと抗不安薬の投与が中心になります。うつ状態やパニックが合併している場合は、抗うつ薬が用いられることもあります。こじれている場合には、行動療法(発声練習)や催眠療法が行われる場合もあります。
参考文献1.臨床精神医学講座6巻.身体表現性障害・心身症.中山書店.
参考文献2.伊藤光宏、他:発声練習をきかっけに改善に向かった心因性失声症・歩行障害の1例.精神科治療学,
7, 665-668, 1992.
(担当者 伊藤光宏)
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■ T様よりの質問
1.20代の女性ですが、呼吸困難が何度も出現しましたが、内科では異常なしと言われました。また、吐き気、めまい、無気力、からだのだるさ、イライラ感、死への恐怖感なども、出ることがあります。私の病気は何でしょうか??
(答え)
内科的な病気(心臓や甲状腺の病気など)がなくて、ご質問にあるような症状があるならば、パニック障害が最も考えられます。
パニック障害とは、パニック発作が繰り返しおきる病気です。
パニック発作とは、「強い恐怖感や不快感とともに、次の症状のうち4つ以上が突然に出現し、10分以内に症状が最もひどくなるような状態」のことです(米国精神医学会の診断基準による)。
・動悸(心臓がドキドキする)が出たり、心拍数が増える(脈が速くなる)
・汗をかく
・からだがふるえる
・息切れ感、または息苦しさ
・胸の痛み、または胸の不快感
・ 吐き気、またはたおなかの異常感
・めまい感、ふらつき感
・現実が現実でないような感じ、自分が自分でないような感じ
・自分がとんでもないことをするのではという不安、気が狂ってしまうのではという不安
・死ぬことへの恐怖感 ・異常感覚(感覚がない、うずきなど)
・冷たい感じ、熱い感じ
2.どんな治療が必要ですか?
(答え)
心療内科や精神科を受診し、薬物療法と精神療法(簡単なカウンセリング)を受けることをお勧めします。
薬としては、抗不安薬(いわゆる安定剤)と抗うつ薬が効果的です。
抗うつ薬の中では、脳内のセロトニンの働き方を強めるSSRI(パキシル、デプロメール)が有効と言われています。特にパキシルは、「パニック障害」に対して健康保険での適応が認められています。
薬だけではなく、考え方を整理し、対処の方法を見つけるためにも、簡単なカウンセリングを受けることをお勧めします。
心療内科や精神科は恐いところではありませんので、まずはお近くの心療内科や精神科を一度受診してみてください。
(担当者 伊藤光宏)
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■ T様よりの質問
身内がもらってる睡眠薬を飲んでみたら、翌朝眠くて起きられなかったのですが、睡眠薬にも色々あるのですか?
(答え)
他の人の睡眠薬を飲むのは、好ましいことではありません。睡眠薬には色々な種類がありますし、量によっても違いがあるからです。以下のことを参考にして、自分に合った睡眠薬を処方してもらうようにしましょう。
1.睡眠薬の種類にも色々ある
睡眠薬は、効く時間の長さによって、次のように分けられます。
@超短時間型:アモバン、マイスリー(平成12年12月発売)、ハルシオン
特に、アモバンとマイスリーは、効きめが短いだけでなく、深い睡眠を増やす作用があります。また、依存性も形成されにくいと言われています。
A短時間型:レンドルミン、リスミー、エバミール、デパス(抗不安薬)
B中間型:ロヒプノール(サイレース)、ベンザリン(ネルボン)
C長時間型:ドラール(平成12年発売)
寝つきが悪いタイプには@かAがいいでしょう。また今までの睡眠薬で翌朝に眠気が残った人は、@かAにしてもらうといいです。途中で目が覚めるタイプ、朝早く目が覚めるタイプには、BかCがいいでしょう。
2.睡眠薬の量にも色々ある
同じ睡眠薬でも、量が違うものがあります。たとえば、アモバンには、7.5mgと10mgがありますし、ハルシオンには、0.125mgと0.25mgがあります。マイスリー、リスミー、デパス、ロヒプノール(サイレース)も同様です。高齢の方では、より少ない量の服用をおすすめします。
3.睡眠薬以外の薬が睡眠に有効なことがある
気分が落ち込んでいて、朝早く目が覚めるタイプには、抗うつ薬がいいときがあります。
参考文献: 中込和幸、菅野道「薬物療法(効果ほか)」,
臨床精神医学講座13巻(睡眠障害), 中山書店.
(担当者 伊藤光宏)
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■ S様よりの質問
1.身体がだるくて、かかりつけの内科の先生に調べてもらいましたが、何でもないと言われました。やる気も出ないのですが、うつ病で身体のだるさが出ることがあるのでしょうか?
(答え)
うつ病では、気分の落ち込みや意欲の低下とともに、身体のだるさが出ることがあります。気分の変化よりも、身体の症状が目立つものは、“仮面うつ病”と呼ばれています。
2.うつ病の薬は、どういうふうに効いているのですか?
(答え)
これまでの研究から、「うつ病の患者様の脳では、ある種の物質(セロトニンやノルアドレナリン)が関係する神経において、神経の働き方が弱くなっている」と考えられています。
もっと詳しく言いますと、これらの神経と神経とをつなぐシナプスというところで、セロトニンやノルアドレナリンの量が少なくなっていることが考えられています(これは、“古典的モノアミン仮説”と呼ばれています)。
うつ病の薬は、少なくなっているセロトニンやノルアドレナリンの量を調節して、神経の働き方を元に戻すと考えられています。
ただし、うつ病のメカニズムについては、不明な点も、まだ多いようです。単純にセロトニンやノルアドレナリンの量が少なくなっているのではなく、それらの物質への感受性が変化しているという考え方が出されています。また、抗うつ薬が、タンパクや酵素の働きに影響を与えるという考え方もあります。今後の研究の成果が待たれるところです。
参考文献: 野村総一郎「気分障害とモノアミン」:医薬ジャーナル,
Vol36, p141-145, 2000
3.うつ病の新しい薬があると聞きましたが、どんなものがあるのでしょうか?
(答え)
うつ病の薬は、次のように分けられることが多いようです。
1.第一世代の薬:1960年代〜70年代に日本へ導入された薬です。トフラニール、アナフラニール、トリプタノールなどの薬です。
これらの薬は、セロトニンやノルアドレナリンの量を多くし、うつ病に対してとても効果のある薬です。
しかし、セロトニンやノルアドレナリン以外の物質にも影響を与えるため、便秘や眠気といった副作用があり、使いにくいという欠点を持っていました。
2.第二世代の薬:1980年代に日本へ導入された薬です。
第一世代の薬よりも副作用が少なかったり、服用する回数が少なくてもいい薬が出されました。
これには、アモキサン、ルジオミール、レスリン(デジレル)、テトラミドなどがあり、今でも広く使われています。
アモキサンは効果の出現が早いと言われています。レスリンは、抗うつ作用だけでなく、睡眠改善作用も持っています。またテトラミドは、抗うつ作用だけでなく、夜間のせん妄(意識の低下に伴って精神症状が出現するもの)を改善する作用があると言われています。
3.第三世代の薬(SSRI):脳内(神経と神経の間)において、セロトニンの量を多くする働きをもつ薬です。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれています。
これらの薬は、1980年代後半〜1990年代前半に世界で使われるようになり、昨年からようやく日本でも使えるようになりました。
これには、平成11年発売になったデプロメール(ルボックス)と、平成12年11月に発売になったパキシルがあります。
これらの薬は、第一世代や第二世代の薬と同じくらいの効き目を持ち、副作用が少なく、安全性が高いことから、欧米では広く使われています。テレビや雑誌などでも、取り上げられ、話題を呼んだ薬です。
4.第四世代の薬(SNRI):脳内(神経と神経の間)において、セロトニンとノルアドレナリンの両方の量を多くする働きをもつ薬です。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と呼ばれています。
これらの薬は、1990年代後半に世界で使われるようになり、平成12年10月から日本でも使えるようになりました。SSRI同様に、第一世代や第二世代の薬と同じくらいの効き目を持ち、副作用が少なく、安全性が高いと言われています。
5.その他の薬:ストレス性のうつ状態や胃の症状を伴ったうつ状態には、ドグマチール(アビリット)がよく使われます。
また、躁状態とうつ状態の両方がある場合には、リーマス、テグレトール、バルプロ酸などの気分調整剤が使われます。
難治性のうつ状態には、甲状腺ホルモンやリタリンなどが使われることがあります。
参考文献: 小山司「抗うつ役の開発の歴史」:医薬ジャーナル,
Vol36, p141-145, 2000
(担当者 伊藤光宏)
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