【第141回】 2011年9月28日
ＮＴＴとしては、インターネットの台頭で、相対的に価値が下がりつつあるインフラ事業の競争で疲弊するのではなく、インフラの上に載る各種サービスの開発で高い収益性を確立したい。
あるＮＴＴ関連会社の社長は、厳しく指摘する。「ＮＴＴの将来はＮＧＮにかかっている。だから、“サービス創造グループ”と言い出したわけだが、じつは一般向けサービスの開発ほどＮＴＴが苦手とするものはない。中身の技術はすごいのに、ＮＧＮが盛り上がっていないのは、“ＮＧＮならでは”のわかりやすいサービスが出てきていないからだ」。
そこで、ＮＴＴの持ち株会社の上層部は、研究所に対して「有望なサービスを出せ」と迫ることになる。だが、もともと研究者たちは、自分で技術を抱え込みたがる性向があり、中・短期的な成果を求められるようになっているなかでも、以前と同じく海外の論文誌に寄稿することや、一定数の特許を取ることが課せられている。
その一方で、ある事業会社ではこんな出来事があった。研究所のスタッフが事業会社の担当者に「10回の試験で3回よい結果が出た。世界にも例がない」と熱心に話すのを聞いて、事業会社の担当者は「では、残り7回でもよい結果が出るまでにどれぐらい時間がかかるのか？」と返すと、研究所のスタッフは少し考えて「1年半」と答えた。それでは商用化は無理だし、事業会社としては別の協力会社に依頼したほうが早い。
満点主義からの脱却
自前主義からの脱却
ＮＴＴの研究所は、電話の時代の研究開発体制を引きずりながら、インターネットの時代に突入したので、いまだに多くの矛盾を抱えている。しかも、アクセスサービスシステム研究所の中島和秀主幹研究員によると、「通信の世界に限れば、“光ファイバーの次”はまだ出てきていない」という。
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