九州電力社の「闘うコンプライアンス」にみる「したたかさ」
2011年09月28日02時22分
あらかじめ申し上げておきますが、私は九電さんを批判するものでもなく、またその対応を称賛するものでもなく、企業のコンプライアンス経営の在り方を研究するものとしての関心について、以下にとおり記すものであることを、お断りしておきます(って、最近このフレーズで始まるエントリーが多いような・・・・)
九電のやらせメール事件に絡み、いったん辞任の意向を表明しておられた九電の社長さんが、辞任の意向を撤回して、どうやら続投される見込み、とのニュースが報じられております(読売新聞ニュースはこちら)。他の取締役の方々からも「辞める必要なし」との意見が出ているそうで、つまり今月末にどのような第三者委員会の調査結果が出たとしても(おそらく、すでに内容はある程度判明しているとは思いますが)、そのまま辞任されない雰囲気です。
私は以前のエントリーでも書きましたが、どんなに九電さんが強気であっても、「派閥争い」等の社内力学による「ほころび」をマスコミや第三者委員会に突かれ、そのうちいろんな事実が判明してくるのではないか、そこから社長さんは辞任しなければならないような状況に追い込まれるのではないか、と予想しておりました。しかし、その予想はどうやらはずれてしまったようです。私が予想していたのとは裏腹に、この電力事業会社は相当にしたたか(私の故郷である福岡の大牟田弁でいうところの「やおなか」)な企業ではないか、と。
そもそも九電さんに事態収拾へ向けて経営責任を迫ることができるのは行政当局だと思われますが、その行政当局の関与が次第に明らかになるなかで、行政当局を最後までかばって、「今回の件で悪いのは当社の社風であり、すべての責任は当社にある」と言い張っておられるのでありまして、この対応によって行政からの辞任要求はおそらく出しにくくなっているのではないでしょうか。さらに、本来ならばマスコミの調査能力からみれば、次から次へと「二次不祥事」が出てきそうなものですが、タイムリーに、強固な第三者委員会を招き、その調査協力を全社挙げての最優先課題としました。つまり、第三者委員会による社内調査を尊重する体制をとることで、マスコミによる調査から社内を守ることに専念できたように思います。この企業は、相当に第三者委員会の長所と弱点を研究していたものと思われます。第三者委員会を発足させたにもかかわらず、その調査委員会の調査結果に反論する、弱点を突かれると、その弱点をあえて補強する、という手法も、非常にしたたかさをうかがわせるものであります。
そしてなんといっても驚くべきことは、その「一枚岩の強さ」ではないでしょうか。これだけ世間で騒がれても、内部通報や内部告発というものが出てこない(最初に通報があったのも、たしか関連会社の社員の方であり、社内の人間ではなかったようです)。また、リタイアされた九電OBの方々からも、九電の体質を批判するような声が聞こえてきません。たしか関係書類を廃棄した方々は社内処分を受けたはずであり、普通であれば「俺は九電のためを思ってやったのに、なんだ」といったことで、そこから社内事情が漏れてくるはずでありますが、どうやらそういった「こぼれ話」も聞こえてきません。「いま、この九電の危機を、社内の全員で乗り越えよう」といった気風が、ひょっとすると社員全員に共有されているのではないでしょうか。「どんなに世間から批判されようとも、マスコミや世論の批判は一時的なものだから、なんとか今の逆風を乗り越えよう」といった気概を社員が一丸となって共有しているようにも思えます。そうだとしますと、この組織はとんでもなく内部統制がしっかりしている企業(良い悪いは別として)ではないかと感じるところであります。
先日、セミナーの企画を担当される方からお聞きしましたが、電力会社のなかで、東京でも大阪でも、コンプライアンスに関連するセミナーが開催されると、九電の関係者の方々だけはかならず出席される、たいしたものです、とおっしゃっていました。これは以前からの傾向だそうです。そういえば、先日私が東京で講演した際にも、複数名の九電の方々が参加されていました。おそらくコンプライアンスに関する社内での意識は相当に高いものと思いますし、またコンプライアンス経営の重要性は十分に認識されておられるのではないかと。東電さんと違い、賠償責任を尽くす立場にない以上は、「我々への逆風は一時的なもの。かならずやり過ごすことができる」といったところではないかと。他の電力会社でも、やらせメールに近いことが発覚し、この事態を横目で見ながら「ここで当社の社長が辞任してしまっては、他の電力会社にも混乱を生じさせる」といった理由で辞任撤回の意向を表明するあたりにも、非常にしたたかさを感じます。
さて、もうすぐ第三者委員会による最終報告書が出るわけですが(一部報じられているところでは、社長の責任についても明記される予定とのこと)、第三者委員会は、このしたたかな九電王国にいったい何を残すことができるのか、何を変えることができるのか、報告書の中身とともに、九電さんの報告書への対応についても、非常に関心が高まるところであります。
九電のやらせメール事件に絡み、いったん辞任の意向を表明しておられた九電の社長さんが、辞任の意向を撤回して、どうやら続投される見込み、とのニュースが報じられております(読売新聞ニュースはこちら)。他の取締役の方々からも「辞める必要なし」との意見が出ているそうで、つまり今月末にどのような第三者委員会の調査結果が出たとしても(おそらく、すでに内容はある程度判明しているとは思いますが)、そのまま辞任されない雰囲気です。
私は以前のエントリーでも書きましたが、どんなに九電さんが強気であっても、「派閥争い」等の社内力学による「ほころび」をマスコミや第三者委員会に突かれ、そのうちいろんな事実が判明してくるのではないか、そこから社長さんは辞任しなければならないような状況に追い込まれるのではないか、と予想しておりました。しかし、その予想はどうやらはずれてしまったようです。私が予想していたのとは裏腹に、この電力事業会社は相当にしたたか(私の故郷である福岡の大牟田弁でいうところの「やおなか」)な企業ではないか、と。
そもそも九電さんに事態収拾へ向けて経営責任を迫ることができるのは行政当局だと思われますが、その行政当局の関与が次第に明らかになるなかで、行政当局を最後までかばって、「今回の件で悪いのは当社の社風であり、すべての責任は当社にある」と言い張っておられるのでありまして、この対応によって行政からの辞任要求はおそらく出しにくくなっているのではないでしょうか。さらに、本来ならばマスコミの調査能力からみれば、次から次へと「二次不祥事」が出てきそうなものですが、タイムリーに、強固な第三者委員会を招き、その調査協力を全社挙げての最優先課題としました。つまり、第三者委員会による社内調査を尊重する体制をとることで、マスコミによる調査から社内を守ることに専念できたように思います。この企業は、相当に第三者委員会の長所と弱点を研究していたものと思われます。第三者委員会を発足させたにもかかわらず、その調査委員会の調査結果に反論する、弱点を突かれると、その弱点をあえて補強する、という手法も、非常にしたたかさをうかがわせるものであります。
そしてなんといっても驚くべきことは、その「一枚岩の強さ」ではないでしょうか。これだけ世間で騒がれても、内部通報や内部告発というものが出てこない(最初に通報があったのも、たしか関連会社の社員の方であり、社内の人間ではなかったようです)。また、リタイアされた九電OBの方々からも、九電の体質を批判するような声が聞こえてきません。たしか関係書類を廃棄した方々は社内処分を受けたはずであり、普通であれば「俺は九電のためを思ってやったのに、なんだ」といったことで、そこから社内事情が漏れてくるはずでありますが、どうやらそういった「こぼれ話」も聞こえてきません。「いま、この九電の危機を、社内の全員で乗り越えよう」といった気風が、ひょっとすると社員全員に共有されているのではないでしょうか。「どんなに世間から批判されようとも、マスコミや世論の批判は一時的なものだから、なんとか今の逆風を乗り越えよう」といった気概を社員が一丸となって共有しているようにも思えます。そうだとしますと、この組織はとんでもなく内部統制がしっかりしている企業(良い悪いは別として)ではないかと感じるところであります。
先日、セミナーの企画を担当される方からお聞きしましたが、電力会社のなかで、東京でも大阪でも、コンプライアンスに関連するセミナーが開催されると、九電の関係者の方々だけはかならず出席される、たいしたものです、とおっしゃっていました。これは以前からの傾向だそうです。そういえば、先日私が東京で講演した際にも、複数名の九電の方々が参加されていました。おそらくコンプライアンスに関する社内での意識は相当に高いものと思いますし、またコンプライアンス経営の重要性は十分に認識されておられるのではないかと。東電さんと違い、賠償責任を尽くす立場にない以上は、「我々への逆風は一時的なもの。かならずやり過ごすことができる」といったところではないかと。他の電力会社でも、やらせメールに近いことが発覚し、この事態を横目で見ながら「ここで当社の社長が辞任してしまっては、他の電力会社にも混乱を生じさせる」といった理由で辞任撤回の意向を表明するあたりにも、非常にしたたかさを感じます。
さて、もうすぐ第三者委員会による最終報告書が出るわけですが(一部報じられているところでは、社長の責任についても明記される予定とのこと)、第三者委員会は、このしたたかな九電王国にいったい何を残すことができるのか、何を変えることができるのか、報告書の中身とともに、九電さんの報告書への対応についても、非常に関心が高まるところであります。
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