2011年7月30日 11時32分 更新:7月30日 12時22分
東日本大震災の被災地の復旧・復興支援を目的に始まった東北地方の高速道路無料化に便乗するトラックの走行が問題になっている。無料対象区間内での乗り降りが制度適用の条件だが、高速料金を浮かせるため区間内のインターチェンジ(IC)でいったん降り、再度同じICから目的地に戻るトラックが後を絶たない。IC付近ではトラックが生活道路を走り、安全面の問題も浮上。国土交通省は制度の打ち切りも検討している。
国交省によると、6月20日に始まった無料化の対象は、被災者のほか、復興物資などを運ぶ中型以上のトラック、バスに限定されている。発着点のどちらかが無料化対象区間内であれば、つなげて走る対象区間外の走行分(料金体系の異なる首都高速など一部除く)の料金も徴収されない。
常磐自動車道・水戸ICでは、全国各地のナンバーをつけたトラックが列を作る。「室蘭」「足立」「和泉」「福岡」……。東日本高速道路(NEXCO東日本)水戸管理事務所によると、水戸ICを乗降するトラックの通行量は1日平均1900台だったが、無料化後は7800台と4倍増になった。多くは復興とは無関係な車両とみられ、ICを降りた後、Uターンのためすぐにまた高速に乗る。
岡山県笠岡市から東京都内に荷物を運ぶという運送会社の男性(58)は「一度水戸まで行って戻るのが会社の指示。時間はかかるが、通行料を考えるとしかたない」。相模原市から来た男性運転手(66)も「目的地は名古屋。やめろといわれても、無料化がなくならない限りやめられない」と話す。
こうしたトラックの迂回(うかい)路に使われるのは、住宅街の中の生活道路だ。水戸市大塚町の主婦(78)は「小学校が近く、子供がよく歩いている道。事故が起きなければいいが」と心配そうな表情を見せた。
国交省は22日に、全日本トラック協会に対し、制度の趣旨に合わないUターン走行をしないよう周知徹底を求める文書を出し、茨城県警などと検討会を開いて改善策を協議している。しかし違法行為とは言えないため、抜本的な対策は打ち出せていない。
中型車以上の無料化は当面8月末まで。国交省は11年度第3次補正予算で財源を確保し、今秋以降、無料化の対象を全車種に拡大する方針で、それまで中型車以上の無料化を延長することも検討していた。だが、大畠章宏国交相は29日の閣議後会見で「こういう事態が続くなら8月末で制度を終えることを検討せざるを得ない」と述べ、改善がみられない場合は制度の打ち切りを検討していることを明らかにした。【樋岡徹也、酒井雅浩】