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世界の健康ニュース解説

スモークサーモンが大量のリステリア菌に汚染

  1. 無添加食品の危険性
  2. 2005年4月8日、米国の食品医薬品局(FDA)より全世界に向けて、リステリア菌に汚染されたスモークサーモンの詳細が発表されました。
    米国マイアミのシースペシャルティー社が製造しているものです。

    リステリア菌は広く、自然界や哺乳類などに分布して、牛乳、食肉、酪農製品には珍しくないバクテリアですから、FDAがこのような発表形式をとることは異例です。健康な成人の発病はほとんどないといわれますが、子供、老人、妊婦など、抵抗力が弱い人の場合は重篤な結果を招くことがあり、米国では毎年1600件の感染に対して、415人位の死者が出ています(CDC)。この数字は米国における食品中毒死亡者の10%位に当たるといわれます。

    死亡者で最も多いのが出産時期(周産期)の妊婦です。リステリア菌は人獣共通感染症ですが、食品経由の感染が多いといわれます。
    無添加食品の流行や、真空パックなど保存食品の増加で1980年代ごろから食品汚染が増え始め、最近は急増しているといわれます。
    今回の措置はシースペシャルティー社が全国的に販売網を持つ会社にもかかわらず、全製品の25%以上が汚染され、且つ、昨年(2004年)3月にも汚染が摘発されていた、いわば札付きであったからです。シースペシャルティー社は製造停止を命令され、3月末には会社と役員4名が民事告訴されました。この事件は殺菌、防腐など添加物を使用しない食品や、非加熱食品の危険性を露呈した事件ともいえます。
    無添加食品、真空パック、瓶詰め食品、非加熱食品(生牛乳など)は、内外を問わず信頼できるメーカー品を選ぶことが重要です。

  3. シースペシャルティー社(Sea Specialties, Inc)のスモークサーモン
  4. 4月8日に出されたれFDAのリリースに拠れば、フロリダ州農産物等消費者サービス局(the Florida Department of Agriculture and Consumer Services)は、米国フロリダ州マイアミのシースペシャルティー社が生産した「ママのノヴァ・スモークサーモン」(Mama's Smoked Nova Salmon)ブランドの8オンスパックがリステリア菌に汚染されていることを発見しました。包装には「Sea Specialties Brand Hand Packed Thin Sliced Smoked Atlantic Salmon」との表示もあるそうです。

    ノヴァとはカナダのノヴァスコシアの意味ですが、業界では添加物を使わない燻製法という意味でも使用されます。ノヴァスコシア州は過去にリステリア菌感染者が集団発生した危険地でもありました。

  5. リステリア菌(Listeria monocytogenes)(リステリア・モノサイトゲネス)
  6. リステリアはグラム陽性菌(Gram-positive)です。形状は円筒形の桿菌です。(球状が球菌)。グラム陽性菌にはブドウ球菌属,レンサ球菌属,クロストリジウム属等がありますが、人の生活環境に常在する常在菌の類ともいえます。ビブリオ菌などグラム陰性菌に較べれば一般的に弱毒ですが、この類の菌は医薬品に対して耐性を持つものが多いのが特徴で、MRSAと呼ばれるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌などが著名です。

  7. リステリア感染症:リステリオシス(Listeriosis)
  8. リステリア菌に感染した敗血症などをリステリオシス(Listeriosis:リステリア感染症)と呼びます。リステリア感染症には下記のものがあります。出産前後の妊婦が特に注意すべきバクテリアですが、エイズ、がん、糖尿病、ステロイド治療中の患者など免疫機能が低下している人の感染率が高いのが特徴です。

    リステリオシス(Listeriosis:リステリア感染症)
    カッコ内が感染致死率
    敗血症(septicemia)(50%)
    リステリア髄膜炎(listeric meningitis)(70%)、
    周産期感染(perinatal infections)(80%)
    新生児感染(neonatal infections)(80%

  9. リステリア菌の分布と感染源
  10. 人獣共通感染症のリステリア菌は、哺乳類、家禽、魚類、河川など、自然界に広く分布しています。哺乳類では37種類、鳥類には17種類くらいに感染ないしは保菌が見られるようです。人間も1-10%が保菌しているという学説があります。弱者が感染すると、発熱を伴うインフルエンザ様の症状から、リステリア感染症と呼ばれる髄膜炎、敗血症を発症し、妊婦には流産の危険があります。潜伏期間は平均3週間くらいと言われますが、2-3日での発病や3ヶ月など大きなばらつきがあるそうです。 欧米では1985年以降、ゴルゴンゾーラ、ナチュラルなどのチーズ類、ホットドッグ、肉の瓶詰め、キャベツのコールスロー、スモークサーモンなどから集団発生して、20-60人が死亡した例があります。日本ではゴルゴンゾーラ、輸入ソーセージなどに汚染例があったといわれます。

  11. リステリア菌の生存と増殖環境
  12. リステリア菌は10%くらいの塩分濃度や、摂氏0度でも生存できます。最適増殖温度は37℃くらいの熱帯の気候ですが、5℃でも増殖するそうです。食品では牛乳、チーズ、食肉の汚染が最も多いといわれ、冷蔵庫や塩漬けでも生活できるわけですから、特に保存食品に増殖する危険がある厄介なバクテリアです。リステリア菌は50℃以上の加熱で死滅し、感染者にはセフェム系を除く抗生物質やペニシリン系医薬品が有効とのことです。バクテリア(原核細胞)が増殖できなくなる、細菌細胞壁合成阻害剤の抗生物質のアンピシリン(Ampicillin)が特に有効と言われます。この抗生物質は人間などの真核細胞には作用しないのが特徴です。