2011年9月27日
大阪府立春日丘高校定時制の科学部員たち。最年長の小沢さん(右端)がスイッチを押し、二重カプセルが落下=同府茨木市、伊藤菜々子撮影 |
東大で実験中のカプセル内の様子。砂利を小惑星の表面に見立てている。つり下がっているのが「はやぶさ2」の試料回収装置を模したもの。落下中に砂利層に突き刺さる=橘助教提供 |
2014年に打ち上げが決まっている小惑星探査機「はやぶさ2」の試料採取のミッションに、大阪府立春日丘高校(茨木市)の定時制の生徒たちが作った微小重力装置が一役買うことになった。「なんちゅうことない装置だけど、なるほどこれだ!」と科学者の目を引いた高校生のアイデアが宇宙へつながっていく。
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はやぶさは60億キロの宇宙の旅をし、去年小惑星イトカワから微粒子を持ち帰ったが、石や砂を飛び散らせる弾丸が発射されず、期待した大きさの粒子が回収できなかった。はやぶさ2では、より確実に砂が回収できる装置の開発が進む。開発には、小惑星と同じ微小重力の環境が必要だ。
春日丘高校定時制の科学部員が作ったのは、地球の重力の1千分の1という微小重力環境をつくる実験装置。二重にしたカプセルを1.8メートルの高さから落とすと、内側のカプセル内は空気抵抗が抑えられ、微小重力になる。落下時間は0.5秒だ。
通常、微小重力を実現するには落下施設を使ったり航空機実験をしたりと、費用も時間もかかる。だが、この装置は量販店で買ったクリアケースを使い、手軽に微小重力環境が作れる。
この実験装置は、5月に千葉市で開かれた日本地球惑星科学連合2011年大会の高校生プログラムで生徒たちが披露し、優秀賞を受賞した。審査員の1人、東京大学大学院地球惑星科学専攻の橘省吾助教(38)はすぐ生徒に声をかけた。「よければ、このコンセプトをはやぶさ2の技術開発に使わせて欲しい」。橘助教は試料回収チームの科学面のとりまとめ役だ。