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ESSAYS

8 メキシコ旅行記 其の参

 メリダを後にしてから車で何時間もかけてひたすら真っ直ぐな道をどんどん車で走っていきました。最後の目的地ユカタン半島の先端近くの遺跡チチェンイツァーへの長い旅路です。 
 その途中でふと見た光景に心を奪われました。なんのことはない、ただのある家の軒先なのですが、なんだかすごくのんびりとしていて、人々の表情や壁の色、服の柄、小物の色まで何もかもがまるで作った絵のような美しさ。車の中から撮ったのでベストショットではないですが、とても心に残る風景におもわずカメラを向けました。
 このあともず〜っと真っ直ぐな道をただひたすらドライブしました。車中にはカナダ人が数人にて、いろいろ話をしましたが、私の隣にいた男性はフランス語のほうが得意らしく、なかなか会話になりませんでした。 
 これが有名なチチェンイツァーのピラミッド。この建造物自体が巨大な暦になっていて、春分と秋分には階段部分の傾斜の影が壁面に落ち、あたかも神聖とされる大蛇がピラミッドを昇るかのようにみえるとか。
 エジプトのアブシンベル神殿にも太陽光が神殿最奥部のラムセス2世の像を照らすという同様の設計をされていたのを思い出します。
 この遺跡は有名なだけあってすっかり整地されていて、かえって壮大さが感じられない印象を受けました。ウシュマルの魔法使いのピラミッドなどの方がうっそうとした森に突然現れる感じがあって、個人的にはそっちの方が好きです。
 しかし造形的な美しさはやはり突出していて、世界中の観光客を集めるだけのことはあります。
  このピラミッドは傾斜がきつく、みんな這うようにして登っていました。登る人々がまるで蟻の行列のように見え、ひときわ人間の存在の小ささを際立たせています。まるで働き蟻が神への貢物を持って登っているよう。
 この階段はやはり上るために作られている気がします。降りる時には傾斜がきつすぎてとても不便です。つまり、これは人間が神に近づくための階段なのでしょう。
 このピラミッドの最上部に登ると、その傾斜のきつさゆえに切り立った断崖絶壁に立ったように見え、かなり怖いです。高いところがちょっと苦手な私はその風景を写真に収めることができませんでした。
 この最上部で旅行中のロシア人と出会い、ちょっと話をしましたが、彼の持っているカメラがとても変わっていました。彼は私のデジカメにえらく興味を持ったようです。
  これは天文台。マヤの優れた天体観測技術は現代のコンピュータによって算出された暦とほとんど誤差の無いまでの精緻な暦を作ることを可能にしました。
 これほどの高い文明がありながら、文字を持たなかったというのが実に興味深いところです。
 この天文台のドーム部分は現在の天文台とまったく同じように見えます。しかし、望遠鏡も無かった昔、人々は肉眼で夜空の星を観測していたことを考えると、当時の人々の視力の良さが想像されます。
 この日はすごく暑くて、しかもこの遺跡が非常に広大なためにこのあたりまで歩いてきた頃にはすっかりバテてしまっていました。ものすごい湿気と日差しの強さにはいささか参りました。途中で食べたアイスとコーラに救われましたが、やたら蝿がいて気持ち悪かったなあ。
  この石像は神殿の最上段に置かれていて、この像のおなかの部分には生きたいけにえから取り出された心臓がささげられたとか。
 インディージョーンズの映画で生きた人間から心臓をつかみ出す場面がありましたが、ここでは黒曜石のナイフで胸を切り裂いて心臓をひきちぎったようです。聞いただけで鳥肌の立つような残虐な行為で、ピラミッドの完成度が示す高い文明とは実に不似合いです。
 写真にはありませんが、この遺跡の敷地内にはいけにえを生きたまま放り込んだという絶対に這い上がれない沼などもありました。
 これらの行為をただ野蛮だと見るか、神に対する畏怖の感情など微塵も持ち合わせていない現代人こそが野蛮なのか?そんなことを考えさせられます。
 チチェン・イツッァーを後にし、メキシコ最大のリゾート地、カンクンへ向かう途中でレストランに立ち寄りました。そこでちょっとしたショータイム。頭にお酒の瓶を乗せて、それを落さぬように踊ったりしてくれました。ちょっと恥かしそうに踊る若い女の子がかわいかったです。
 このとき一緒になった日本人のおじさん一行はすっかり会社の慰安旅行のようなムードで、料理を食べながら「醤油が欲しいな」とか「日本のビールの方がうまい」とか言って笑っちゃいました。
 食事をしている間にものすごいスコールが降ってきて、あっという間に外は洪水のような水溜りになってしまいました。風もすごくて外で樽がごろんごろん転がるほどでした。
  で、最終目的地のカンクンへ。細長い島のようになったところにヒルトン、シェラトン、メリディアン、など高級ホテルが軒を連ねています。
 ここの海はとにかくものすごくきれいです。世界中のいろいろなビーチに行きましたが、ここが今までに見た海の中で一番きれいでした。次はエジプトのシャルム・エル・シェイクでしょうか?このビーチは砂が真っ白で、水はプールの水のように透明。
 普通こうした波打ち際はあまり水の透明度が高くないのですが、この海はどこまで行っても底が見えるし、ゴーグルを着ければ遥か先まで見とおせるのです。
 ここは高級リゾートだけあって浜辺もすごくきれいに清掃されていてゴミひとつありません。
 ラテンのおねえちゃんは水着が小さいです。思わず写真に撮ってしまいました(笑)。
 海に飽きると街に出て買い物。しかしここは高級リゾートなのでやたらと物価は高いのです。軽くランチでも、と立ち寄ったメキシカンレストランで請求書をもらったら5000円くらいあって驚きました。
 笑ったのは、お土産屋にポケモンをパクッた「Dokemon」というのがあったこと。そう言えばテレビではポケモンはもちろん、懐かしのマッハGO!GO!GO!とかたくさんの日本のアニメが放送されていました。
 もっと笑ったのはなぜかNHKの「プロジェクトX」が放送されていて、メキシコまで来て神戸製鋼ラグビーチームの話を最初から最後まで見てしまいました。
 最後を惜しむようにメキシコ料理の食べ納め。お決まりのマリアッチの演奏、ソンブレロ、テキーラに加え、今回はライフルまで持たされました。写真右の細長い花瓶のようなのはコーラの入ったグラス。飲んでも飲んでも無くならないほどたっぷり入っていました。
 お土産に大量のメキシカングラス、マヤ暦のレリーフ、メキシコ料理の材料などを買い込みました。
 今回のメキシコ旅行は久々の大きな旅で、新鮮な感動も味わえました。ちょっとリゾートへ、という気軽な旅もいいですが、たまにはこういうテーマを持った旅もいいもの。特にテオティワカンは絶対に行ってみたい遺跡だったので大変満足でした。
 次はアンコールワットか、ペルーか、それともギリシアかはたまた全く別の国か?懐具合と相談しながら楽しみに考えています。まあ、これも休みが取れれば、の話ですけど。

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