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抗日映画:中台で評価二分 先住民描写巡り、中「野蛮」台「誇り」

 【台北・大谷麻由美】日本の台湾統治(1895~1945年)時代の最大の先住民反乱「霧社事件」(1930年)を描いた台湾映画「セデック・バレ」の評価を巡り、中台間で熱い議論が起きている。映画は、日本の高圧的統治に先住民のセデック族やタイヤル族が、民族の誇りをかけて戦った抗日実話を基に作製され台湾では好評。一方、中国のネット上では先住民の戦い方に、「野蛮」などと酷評する意見が多い。台湾側は「(中国人は)文化レベルが低いから理解できない」などと応酬している。

 「セデック・バレ」は、台湾で記録的ヒット作となった日台の絆を描いた恋愛映画「海角七号」の魏徳聖監督が台湾史上最大の7億台湾ドル(約18億円)で制作した。前後編約4時間半の大作だ。台湾では今月9日から前編が上映されている。

 映画では山中を自由自在に駆け回る先住民と日本側との戦闘場面がダイナミックに描かれている。中国の抗日映画にありがちな極悪非道な日本人は出てこない。魏監督は「台湾の歴史を理解してもらうために撮った」と政治的な意図を否定し、台湾人には、台湾の歴史を再認識する良い機会となっている。

 一方、海外での試写の評判や映画広告を見た中国人がネット上で、先住民の「首狩りの文化」を「野蛮」とし、先住民が日本人を襲う場面について「虐殺だ」などと批判が上がっている。中国での上映で収益を上げたい魏監督にとっては厳しい状況だ。

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 ■ことば

 ◇霧社事件

 1930年10月27日、台湾南投県霧社で、先住民セデック族やタイヤル族の男たち約300人が武装蜂起。集落の頭目・モーナルダオ氏の指揮の下、日本の警察派出所を襲った後、運動会開催中の小学校に乱入し、日本人の子供や母親ら130人余りを殺害した。台湾総督府は砲撃や戦闘機による爆撃で対応し、先住民側の犠牲者は戦死と自殺、行方不明合わせて約800人に上った。

毎日新聞 2011年9月26日 東京夕刊

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