日記: 勘解由小路光宙(1808-1862)と悪魔ちゃん(1993-)
rabbitbeatさんとこでの私(安岡孝一)のコメントを読んだ方から、ここんとこの「光宙」ネタは山藤章一郎の『現場の磁力―近ごろの子どもの名前「光宙」が読めますか』(『週刊ポスト』2011年9月30日号, pp.125-128)が元になっている、との情報をいただいた。早速『週刊ポスト』を読みにいってみたのだが、あまりにヒドイ記事で閉口した。たとえば、悪魔ちゃん命名事件について書かれた以下の部分。
我が子の名を「悪魔」にしたいと出生届を出してきた親に、都下昭島市市民課はどう対応したか。答えは明快でした。「ルールはありません。ふだん使われる、認められた漢字ならOKです。ただ出生届には読みがなの記載が必要です。ふさわしくない文字や読みは、あまりお勧めできませんがと、やんわり窓口対応します。悪、魔、殺、犯、罰、糞、尿…などを届けてきた人も全国にはいるようです。私どもは市民課の係長、課長を交えて協議いたします」…
〈悪魔〉くんは、同じ音で字を替えて決着した。
違う。『新しい常用漢字と人名用漢字』pp.190-192にも書いたとおり、昭島市は当初「悪魔」を受理してしまっている。その後に父親が同じ音の「阿久魔」に変えようとしたところ、昭島市側が難色を示したので、最終的には「亜駆」(あく)で決着したはずだ。というか、そもそも悪魔ちゃん命名事件は、ポケットモンスター発売以前の出来事で、ピカチュウとは何の関係もない。
正直なところ、この記事は全体的に整合性がなくて、各事件に関して「現場」の裏を取ってないのがミエミエだ。タイトルの「光宙」ちゃんが実在するのかどうかすら、全く調査していないというオソマツさだ。まあ、山藤章一郎は、現場の「磁力」が書きたいのであって、本当の「現場」など書く気がないということなのだろう。