東京電力福島第1原発4号機で起きた原子炉建屋の爆発について、沸騰した使用済み核燃料プール内で、水の放射線分解が進んで、水素が大量発生したことが一因との分析を、東京大や日本原子力研究開発機構のチームがまとめた。放射線は、水を水素などに分解する。19日から北九州市で始まる日本原子力学会で発表する。
4号機のプールには、事故を起こした1~4号機の中で最も多い1535本の燃料棒が入っていた。東日本大震災発生当時、定期検査で運転停止していたが、津波で電源を喪失。冷却機能が失われ、地震発生から4日後の3月15日に爆発した。
水素爆発を起こした1、3号機では原子炉内にあった燃料棒が損傷し水素が発生したとされるが、4号機の燃料棒に目立った損傷はなかった。東電は排気筒を共有する3号機から水素が流入して、4号機の水素爆発にいたったと推定している。
しかし、チームは3号機と4号機の爆発に約20時間の差があることに注目し、他の要因があると推測。フラスコ内の水を室温、97度、沸騰状態の3段階にして、放射線を照射。発生した水素の濃度を調べたところ、97度で室温の1.5倍、沸騰状態で100倍となることが分かった。
水素は空気中の濃度が4%を超えると爆発の危険性が出てくる。建物上部にたまった水蒸気は壁で冷やされて水に戻るが、水素は気体のままで空気中に占める割合が高まったとみられる。
チームの勝村庸介・東大教授(放射線化学)は「3号機からの流入に加え、放射線分解が重なったのではないか。今後、実際の原子炉建屋やプールの規模で起こるのかを検証したい」と話す。
東電は「理屈上はありうるが、爆発させるほど水素が大量発生するかどうかは不明」としている。【比嘉洋、大野友嘉子】
毎日新聞 2011年9月13日 20時35分(最終更新 9月13日 20時46分)