なんとも落ち着かない話だが、検察の倫理というのに「無実の者を罰しないようにする」というのが書かれるそうだ。
朝日.com:検察の倫理、明文化 不祥事受け「無実で罰さぬように」
検察職員から最高検が意見を募り、原案をまとめた。外部の有識者に示し、今月28日に全国の検察幹部を集めた会議にはかってから公表する予定だ。原案は、総論的な基本理念に加え、捜査・公判の実務にあたるうえでの10項目の心構えで構成される。
基本理念には、「常に有罪を目的とし、より重い処分を実現すること自体を成果とみなすかのような姿勢になってはならない」「己の名誉や評価のために行動することを潔しとせず、時としてこれが傷つくことも恐れない」などの表現を盛り込んだ。
その元は、検察在り方検討会議の成果だというのだが、一方では取調べ過程の可視化による冤罪防止に及び腰で、後で公判で明らかになっては困るような取調べ方法を今後も続ける(でないと治安が保てない)と堂々と言っている組織が、理念を明文化するという行動に出たということである。
建前として、やって害になることではないし、批判されるいわれはないと検察は思っているかもしれない。
しかし、半ば揚げ足取りかもしれないが、見出しとして報じられている無実の者を罰さないようにするというのを明文化するというのは、じゃあこれまでは違ったのかと言いたくなる。
もしそうなら、つまり被疑者被告人が無実かどうかにかかわらず有罪をとるために全力を挙げるという従来の姿勢をこの倫理明文化で転換するというのであれば、「ほお」と感心しないでもないが、そうは口が裂けても言わないだろう。
従来からそうだった、当然の倫理を改めて確認したに過ぎないということだろう。それはつまり、検察のあり方として、従来と何も変わらないし、変えるつもりもないということなのである。
組織のあり方に問題があったことを認めず、個人の不心得者が現れたことに問題を矮小化して批判をやり過ごそうとする限り、こうした隘路からは抜け出せない。
少なくとも取り調べ過程の可視化すら実行せず、調書裁判は裁判員裁判になってもなお変えないという以上、そして裁判所が自白調書さえ出てくれば法廷で被告人が何を言っても調書のほうが信じられるという頭を切り替えるつもりがない限り、検察ではなく警察のほうがより深刻なのだが、とりあえず身柄を採って20日間世間から孤立させて朝から晩までの取調べで根負けさせるという捜査手法がまかり通ることだろう。
そのような捜査手法に依存している限り、手ぬるいことをすれば筋金入りの悪人ほど取り逃がすことになりかねないので、勢い「落とし屋」バンザイということになる。
人質司法・調書裁判の体制に依存することから転換しなければ、袋小路からは抜け出せない。どう転換するかという展望なり方向性なりを示すことこそは、「検察在り方検討会議」のなすべき仕事であっただろう。
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