  
人間は、骨折や傷を受けた場合、しばらくすると自力で修復する再生能力を持っています。この再生能力を活かし、細胞や組織の移植または人工臓器などを利用することにより、機能障害に陥った組織や臓器の機能を再生・修復する可能性のある医療のことを再生医療と呼んでいます。その再生医療に用いられる細胞が幹細胞です。
では、この幹細胞とは何ものなのか。幹細胞を一言で表すと、「細胞を生む細胞」だということができます。1つの幹細胞は、他の細胞を生み出そうとするときに、2つの細胞に分裂します。このとき、片方は幹細胞のまま維持され、もう片方は他の細胞に変化します。つまり、幹細胞は分裂して「自分自身」と「他の細胞に変化する細胞」を同時に作っているのです。
幹細胞とはいろいろな細胞や組織に変化する元になる特殊な細胞です。幹細胞を体内に入れることによって、傷んでいる部位に幹細胞が集まり、その部位に必要な細胞や組織に分化していくことによって、修復を助ける働きを持つと考えられています。脂肪組織、とりわけ皮下組織の中には、間葉系幹細胞がたくさん含まれています。この脂肪由来間葉系幹細胞を体外で培養して得られた細胞を再び自分の体内に戻す方法が「幹細胞療法」となります。
現在、再生医療を目的に研究が進められている幹細胞には、大きく分けて3つの種類があります。ヒトの受精卵の胚から作るES細胞、ヒトの皮膚などの細胞に、ある種の遺伝子を組み込むiPS細胞。そして、骨髄や皮下脂肪から採取できる間葉系幹細胞です。このうちES細胞、iPS細胞は人工的に作られた幹細胞で、どんな細胞にでも分化できる可能性はありますが、腫瘍を作りやすいのではないかという意見もあります。
一方、脂肪や骨髄由来の間葉系幹細胞は、本人の細胞を採取、自家培養したのち本人に投与するものであり、免疫拒絶の心配もありません。また、骨や血管、筋肉などの組織に分化できることが以前から知られていましたが、最近の研究によって神経組織にも分化できることが分かってくるなど、多くの可能性を秘めた細胞ということができます。
「幹細胞療法」はまだ新しい技術で、未開拓の部分が多く残されていますが、現在有効な治療方法のない難病治療の手段となる可能性に期待されています。すでに一部の病院では、厚生労働省の指針に則って、正規の医療として治療が行われています。その上で安全性と効果をより明らかにするために、臨床試験も世界中で進められています。 |