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生食用牛肉:新基準来月施行 ユッケが高級食になる可能性

生食用牛肉の新基準(加熱処理の流れ)
生食用牛肉の新基準(加熱処理の流れ)

 4月末発覚した焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件を受け、厚生労働省が策定した生食用牛肉の新基準が10月1日、施行される。業者に肉表面の加熱や専用加工設備の確保を義務付ける厳しい内容で、業界からは「コストがかかり過ぎ、零細店舗は生肉の提供がほぼできなくなる」との声も。対応を決めかねる大手チェーンもあり、以前のように手軽にユッケを食べられるようになるかは微妙だ。【佐々木洋】

 首都圏などで約50店舗を展開する「叙々苑」(東京都港区)は、えびす食中毒事件後にユッケの販売を自粛した。10月以降は「基準の詳細を保健所などに確認してから決めたい」という。

 新基準は生肉を提供する加工業者に対し、表面から深さ1センチ以上の部分を60度で2分以上加熱殺菌するよう義務付けた。同社の広報担当者は「加熱した所は切り落とすため、提供できる生肉が減ってしまう。加熱処理などの手間も掛かり、仕入れコストが3~4倍に上がる可能性もある。それでも提供できるか検討したい」と話す。

 全国に約630店舗を構える「牛角」や別の大手焼き肉チェーンもほぼ同じ理由で対応を検討中という。牛角の運営会社「レインズインターナショナル」(東京都港区)は「卸業者や加工の委託先工場と、売価がどの程度に抑えられるか検証する」という。

 一方、約1800店の焼き肉店が加盟する「全国焼肉協会」(東京都北区)によると、えびすの事件以前はほぼすべての会員店舗で人気メニューのユッケなど生肉を提供していたが、事件後に大半が自粛している。同協会は「数種類の生肉メニューのために専用の設備を設置するのはコストが大き過ぎ、零細店舗ではほぼ100%生肉を出せなくなる。仮に提供できても通常は1皿800~1500円程度のユッケを2~3倍に値上げしないと採算が合わないのではないか」とみる。その上で「生肉を調理する時間帯を他の食品と分けることで衛生基準を満たせないか、国に確認したい」と話す。

 今回の基準で規制対象になるのはユッケや牛刺し、牛たたき、タルタルステーキなど。レバ刺しなど牛の生レバー(肝臓)は内部にも食中毒の原因となる細菌が存在することがあるため、厚労省が年内に規制の検討を始める。当面の措置として同省は7月、飲食店などで牛の生レバーを提供しないよう自治体に要請している。

 ◇生食用牛肉の新基準

 食品衛生法に基づく規格基準。業者に対し、生肉専用の加工・調理設備の設置▽枝肉から切り落としたブロック肉の表面加熱処理▽腸管出血性大腸菌とサルモネラ属菌の検査(最低年1回)などを義務付けた。従来の基準は罰則がなかったが、新基準は違反業者に商品回収や営業停止などの罰則を科すことができる。

毎日新聞 2011年9月27日 11時47分(最終更新 9月27日 12時00分)

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