全国の国民宿舎で一番人気の「鵜の岬」(茨城県日立市)で2008年以降、料理の食材費を実際よりも低く見せるため、食材の在庫量を過大に報告していたことが分かった。経費節減を迫られる一方で現場からは料理の質を下げることに抵抗があり、板挟みになった経理担当者が不正に会計処理していた。
宿舎を運営する県開発公社の内部調査で発覚した。公社は10月1日付で、経理を担当していた前管理課長(44)を停職1カ月、管理課員(41)を3カ月の減給10%の懲戒処分としたほか、監督責任を問い前支配人ら2人を訓告、事務局長ら3人を厳重注意とした。
公社によると、今月に外部監査人が調査したところ、台帳上は900キロあるはずの冷凍肉が実際には60キロほどだったり、2千キロあるはずの魚が100キロしかなかったりといった事例が次々と見つかった。架空計上分は8月末時点で7088万円にのぼった。
鵜の岬は全国122の公営国民宿舎の中で22年連続で宿泊利用率が1位。一方、公社は県からの収支改善要求を受け、食事の売上高に占める食材費の割合を07年度の43.1%から08年度は41.5%に引き下げる目標を立てていた。
前管理課長は仕入れ担当者に食材費引き下げを求めたが、現場の料理人らは「質を落としたくない」と反対。実際には食材を使い切ってしまっているのに、残っているように経理処理し、結果的に原材料費が下がるように見せかけていた。課長は「目標達成のプレッシャーを感じていた」と話しているという。
在庫食材は会計上は「資産」として処理するため、公社は7088万円を今年度決算で特別損失として処理。昨年度は黒字だった鵜の岬の決算は、赤字に転落する見込みという。
鵜の岬は昨年度から年2回、外部監査が行われ、台帳の数字はチェックされていたが、実際の在庫量は確認されていなかった。26日に会見した公社の北川明雄常務理事は、水増し分が09年度末時点で3416万円、10年度末で6670万円分にのぼっていたと説明し「年度末決算の時点で気付くべきだった。申し訳ありません」と謝罪した。チェック体制強化のため、年2回の外部監査を今後は4回に増やし、管理課以外の部署による在庫確認も行うという。(松井望美)