民主党税制調査会(藤井裕久会長)が26日開いた総会は増税反対一色に染まり、東日本大震災からの復興財源を賄う臨時増税を巡る意見集約は27日以降に持ち越された。民主党は「税と社会保障の一体改革」の消費増税でも議論が難航し、増税時期などをあいまいにして決着した経緯がある。増税論議が難航して本格復興に向けた11年度第3次補正予算案の編成作業が遅れれば、震災の復旧・復興に影響を及ぼす可能性もある。
「選挙区で企業や町工場、有権者の声を聞いている。税調幹部や財務省は誰の声を聞いているのか」「企業の生産拠点の海外流出を食い止めないといけない。デフレ下の増税は絶対反対だ」--。26日夕に始まった党税調の総会は、事前の役員会でまとめた「所得税・個人住民税と法人税、たばこ税を増税する」という案への反論が噴出、会合は予定していた1時間を大幅に超えて3時間強に及んだ。藤井会長は臨時増税を実施することで会長一任を取り付ける考えだったが、断念せざるを得なかった。
民主党が野田政権で党税調を復活させたのは、党の権限を強化するとともに、増税などの痛みを伴う政策決定で党に責任感を持たせる狙いもあった。しかし、この日の総会は「税と社会保障の一体改革」の消費税増税論議の再現となり、反対論が続出。重鎮の藤井会長は所得税増税を1年間先送りするなど譲歩し、「責任与党」として増税の決断を促したが、「経済情勢の好転が条件だ」との反論にかき消された。
民主党は政策調査会で、増税圧縮に向け、税外収入や歳出削減による財源調達を政府案の5兆円からさらに上積みできないか検討しており、増税に慎重な議員は日本郵政株売却などによる財源調達に期待する。しかし、五十嵐文彦副財務相は26日の会見で「5兆円から(の上積み)は無い」との見方を示した。「上積みもできず、増税も許さず」では、3次補正の増税論議が頓挫するのは必至で、政策決定での「党高政低」にかじを切った党執行部が、財源論議をどう決着させるのか注目される。【小倉祥徳、赤間清広】
毎日新聞 2011年9月27日 東京朝刊