本郷館:1世紀の歴史に幕…東大そばの下宿、著名人も居住

2011年7月28日 10時43分 更新:7月28日 12時14分

取り壊しに向けて準備が進められる本郷館=岡礼子撮影
取り壊しに向けて準備が進められる本郷館=岡礼子撮影

 東京都文京区本郷の東京大学近くにある築106年の木造3階建て下宿「本郷館」が、今月いっぱいで取り壊されることになった。1世紀を超え、家主側は「老朽化して危険」と判断。解体業者が「8月1日から解体する」と告知し、準備を進めている。だが、著名な作家らが住んだこともあり、元住人らが署名を集めるなど保存運動を展開。関係者からは「貴重で文化財の価値もある」と惜しむ声が上がっている。【岡礼子】

 本郷館は1905年、「本郷旅館」として建てられ、19年から今年6月に最後の住人が退去するまでは下宿屋だった。現存する日本最古の木造3階建て下宿とされる。部屋は4畳から10畳までの計76室。延べ床面積は約1450平方メートルと大規模で、炊事場とトイレが共同、風呂はない。

 過去には、作家の林芙美子氏や霞が関ビルの構造設計などで知られる武藤清氏、小児科医の内藤寿七郎氏ら著名人も住んでいた。

 本郷館は、5年前に家主側が取り壊しを提示。住人が反対したため立ち退き訴訟に発展した。裁判では建物の危険性が認められ、住人側は敗訴。だが、その後も保存のための活動を続け、今年4月に「本郷館を考える会」を発足させた。元住人以外にも、区民や建築家ら約70人が名前を連ね、保存を求める署名運動を開始。国内外から約3000人の署名が集まった。

 「考える会」は6月中旬、文京区長と家主側に署名の報告と保存を求める文書を提出。また、日本建築家協会の支部も「社会史的価値が高く、保存を願う」との要望を区に出した。しかし、家主からの返答はなく、同区も「区の文化財に指定できると考えたが、所有者の同意を得られなかった」という。

 会は、同館を題材にした絵や写真を本郷の街角に飾る企画「わたしの本郷館」を23日から8月6日までの予定で始めた。

 建築家で、考える会代表の伊郷吉信さん(57)は「文化財としての価値もある。なんとか保存したいが、所有者は解体を決めており難しいようだ。今は本郷館の思い出を展示して近くに住む人たちに知ってもらうのが精いっぱい」と話している。

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