2011年9月27日
日本人の平均的な閉経年齢は50歳前後といわれる。閉経を挟む前後5年、計10年間を「更年期」といい、更年期に表れる症状が、日常生活に支障を及ぼすのを「更年期障害」と呼ぶ。
更年期には、女性ホルモンを出す卵巣の働きが徐々に衰え、エストロゲンや黄体ホルモンの分泌量が減っていく。また、この年代は、仕事や家庭の環境の変化が重なることが多い。これらの要因が合わさって、発汗やほてり、肩こりや腰痛、うつなど、様々な症状が表れる。
症状が多岐にわたる場合、治療では、状況の整理から始まることが多い。東京歯科大学市川総合病院の高松潔(たかまつきよし)・産婦人科部長は「まず、今一番つらい症状は何かを尋ねて、それを狙って治療を進めていく」と話す。
治療は、微量の女性ホルモンを薬で補うホルモン補充療法と、漢方療法が中心だ。症状によっては睡眠導入剤や抗うつ剤などを併用することもある。
補充療法は、のぼせやほてりなどの症状に効くとされる。エストロゲンと黄体ホルモンを毎日一緒に飲む方法と、それぞれ期間を決めて飲み、ホルモンの状態を閉経前と同じ周期にする方法がある。パッチ薬やジェルタイプの薬もある。ただ、日本で補充療法を行う人は数%程度で、欧米に比べてまだ少ない。
補充療法には副作用もある。
治療中は性器からの不正出血を伴うことがある。またエストロゲンは、単独で使うと子宮体がんのリスクが2.3倍高まるとする報告がある。このため、補充療法では原則として、黄体ホルモンを合わせて使う。
一方、両ホルモン剤を併用した場合に、乳がんのリスクが増えるのか、減るのかは、今もよくわかっていない。米国の大規模研究では、5年以上、両ホルモンを使った女性で、乳がんのリスクがわずかに増えていた。ただ、厚生労働省の研究では、リスクが減ったという結果も出ている。いずれにしても、治療中は定期的にがん検診を受けることが求められている。
弘前大産科婦人科の水沼英樹(みずぬまひでき)教授は「乳がんのリスクには様々な見解があり定まっていない。更年期症状に悩んでいるなら、医師と話し合い、長所と短所を納得した上で治療を始めて欲しい」と話す。(鈴木彩子)
月1回の診察日はいつもそう言いながら、診察室に入る。
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